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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
35/179

Flag5―真冬の桜―(3)

「なあレディ」


「何かなツカサ君?」


「今先生が笑ってるのってもしかしてさっき言ってた“アレ”ってのが……って何で鼻血出してんの!?」


「や、やだなーどうかしたのツカサ君? こここここれは今朝飲んだ筈のトマトスープがたまたま上がって来てたまたま鼻に入っちゃっただけだよ? そもそもボクは視界に入った人達を使って無差別に妄想してる訳じゃな無くて気に入った人達だけを使ってるんだよ? でもまあ、最近アレも良いこれも良いってなっちゃってるってのは否め無いんだけどね……でもよくよく考えてみたら楽しめる事が増えたって事だよね? つまりどっちにしろ美味しい思いをする展開が増えると言う事になるからボクとしては大歓迎かも!」


「焦り過ぎて言ってる事がおかしいし最終的に話がずれてる!!」


 また質問の相手を間違えた……。とりあえず“アレ”についてはその内わかるだろうからもう普通に先生の話を聞こう。


「……それで良いか?」


「ええ、構わないわ」


 何やらネアン先生の問い掛けに答えているカーミリアさん。


「まあ、そーゆー事だからお前らもわかったか?」


「はーい」


「ほーい」


「僕も構いませんよ……メガネですから!」


 そして何故か楽し気なネアン先生に口々に返事をする生徒達。


 あれ……?


 説明が終わってる……だと?


「じゃあ一発目は……腹黒っぽい顔した転校生のツカサ=ホーリーツリー君だー! 皆冥土の土産に拍手!」


 そんなハイテンションなネアン先生に指名を受ける俺。あの教師ボロクソ言ってやがる。っていうか最後の物騒な一言何!?


 焦って助けを求める様に両隣を見るも、俺の両隣は前方に居る女子生徒のスカートを捲ろうとしてニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべている残念イケメンと、対照的に素晴らしい笑顔で可愛いのだが鼻血で全てを台無しにしてしまってる残念美人だった。……何で俺こんなところに座ったんだろう。


 どうしてこうなった。変態に囲まれていたら俺まで変態みたいじゃないか。遣る瀬無さが込み上げてくる。……うわー遠くで繁じいちゃんが手を振っているよーうふふふ。


「ツカサ! おい、ツカサ聞いてんのか!?」


「はっ!?」


 俺は何を? 何故か胸に懐かしいような感覚が残っているけど、思い出せない。目の前には俺の肩を掴んでいるネアン先生の顔。隣には流す鼻血の量が増えているレディと何故か忌々し気に俺を睨むコーチ。そして俺達に注がれる大量の視線。


「美味しいッ! これは美味しいッ!?」


「くそっ……もうちょっとでミッションコンプリートだったのに……」


 恐らくコーチは目の前の女子生徒が俺のせいで振り返ったから俺を睨んでいるのだろうが、知るか。


 しかしそれよりも……。


「先生肩が痛いです……と言うか顔が近いです……気持ち悪いので離れて下さい」


 項垂れるネアン先生。ごめんなさい先生。俺は野郎の顔を見詰める趣味は無いんです。


「せんせーい、レディちゃんがまた倒れましたー」


「寝かせとけ」


「せんせーい、コーチ君がレディちゃんのスカート捲ろうとしていまーす」


「殴って寝かせとけ」


 若干拗ねているネアン先生はぶっきらぼうに生徒の質問に返し、俺に向き直ると、「早くしろ」と何故か急かされる。


「……何を?」


「何を? じゃねぇだろ! 俺はさっきからお前が一発目だって言ってんだ!」


「あの……失礼ですが何の話でごさいましょうか?」


「お前俺の話を聞いてなかったのか?」


「はい……まあ」


 両隣だった二人のせいだけど、今は伸びてるし、言い訳に使っても話が拗れそうだし仕方がない。


「はあ……もう一回しか言わないからよく聞けよ? これからお前はある勝負に参加してもらう。まあ、参加って言ったってこのクラスに入った時点で強制参加だから気にするな」


 強制参加で気にするなとか無理だろ。しかしそう説明するネアン先生はどこか楽しそうだ。良い性格をしておられる。やっぱり、これからするのが“アレ”ってやつなのかな。


「その勝負の内容は?」


「それはだな……模擬戦だ」


「模擬戦……?」


「そう、模擬戦」


「マジで?」


「マジで」


「それっていつもの授業と一緒じゃないですか」


 それに模擬戦をすると言うのはこの授業の初めにも言っていた。


「それは違うんだなー……言っただろう? これは勝負だって」


「つまりただの模擬戦じゃ無いと?」


「ああ、そうだ! 今回はチーム戦! 戦う時は一対一だがお前には仲間がいる!」


「チーム戦か……他のメンバーは?」


 少なくとも自分のチーム位は確認しておきたい。


「カーミリアを除く全員だ」


「はっ?」


「だからカーミリアを除く全員がチームなんだよ」


「へー……つまり四十人弱で一人の女子生徒と? 成る程なー……アンタ馬鹿だろ」


 何を言っているんだこの教師は。


「ちなみにルールはこの授業の時間以内に全員がカーミリアに倒されれば敗けだ」


「何でそんな事をするんだ?」


 いくら学院一位と言えど流石にそれはキツイと思う。


「気になるか? 気になるよな!? 良かろうならば話してやろうじゃないか……あれは今から一万年……いや、もう少し前だったか……世界が…………すみません真面目に説明しますからそんな存在を否定する様な目で見るのはやめてください……」


「なら早く」


「初夏に色々あってこうなりました。主にノリで」


「ノリで?!」


「ちなみに全抜きされた時の最速タイムは二十分でカーミリアは今まで一度も敗けて無いからな」


「マジで!?」


 一人三十秒位の計算じゃねぇか……。


「まあ、そう言う訳だから頑張って逝ってこい」


 そう言ってネアン先生は笑顔で俺の肩をポンと叩いた後、俺から離れて行った。気のせいか死んで来いとも言われた気もする。やたら元気だったのはそのせいか。良い性格していやがる。


「死にはしないから安心しろ」


「心を読むな!」


 良い性格をしてるよ、ホント。

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