Flag5―真冬の桜―(1)
血塗れになったり世紀末と遭遇したなど激動の転校初日から一週間位が経った時、リアトラの季節は俺の居た世界と変わらず絶賛真冬真っ只中だった。
しかしこの時には自主練等の成果か使える魔法も増え、魔力付加と属性強化を同時に扱える様にはなっていた。
ちなみに属性は全部で火、水、風、地、雷、光、闇の7つと属性には入らない“無”がある。
“無”に含まれる魔法の例を上げると回復魔法や召喚魔法といった属性が関係無い魔法がそれに当たる。
また、雷、光、闇の三属性が基礎魔法に入っていないのは単純に難しいからだそうだ。
そして属性強化の属性によって変わる効果だが火は筋力が上がり、水は頑丈な鎧に、風は切れ味の上昇で、地は生命力の上昇、雷は瞬発力や反応速度が上がり、光は目視されにくくなり、そして闇は衝撃の吸収をすることが出来る。
いずれも移動速度の上昇がついているが風と雷と光は他に比べて速い。
しかし魔力付加や属性強化に使う魔力は体内魔力しか使うことが出来ず、特に属性強化は魔力の消費が激しいので基本的には魔力付加だけだったり時々部分的に属性強化するくらいでないと魔力の少ない人は直ぐに魔力が枯渇してしまう。
また、体全体を覆う属性強化をする事を〝~鎧〟と言い、~の部分にはその属性が入る。
そして何故俺がこんな復習じみた事をしているかと言うと、本日の魔法の筆記小テストがボロボロだった事について反省をしていたからである……。
現在テスト返却後の教室で俺とコーチとルーナとレディの四人で結果の報告をしている。
しかしそもそも……。
「魔法の授業で筆記のテストがあるなんて聞いてない……」
魔法以外の教科であれば俺の世界と殆ど同じだったので大丈夫なのだが如何せん魔法についての知識はまだ乏しいので酷いのなんの……。
「まあまあ、司さん」
「ルーナに宥められても……」
「あははっ! ルーナは筆記なら学年でもかなり上位だもんね」
そう言って笑うレディだがレディの成績も悪くは無く、むしろルーナよりは下ではあるがレディも上位争いをしている程だ。
「はあ……まさかレディが頭良いなんて……」
年がら年中妄想してるものだと思ってたよ……。
「まあそんなひがむなよ。次があるだろ?」
そう言い、サムズアップするコーチ。おい、お前俺より下だったじゃねぇか。何故そんなにピンピンしていられるんだ。
「お前……タフだな」
コーチのポジティブさやメンタルの強さには呆れを通り越して尊敬の念すら出てくる。
「へへっ! まあ、俺は魔法戦闘の実技の天才だからな!」
「あーはいはい」
褒めてはいない。
「こう見えてもクラスで三位なんだぜ!」
「なあルーナ、ホントか?」
「酷ぇっ! 信じてくれよ!」
「ホントですよ。契約武器も強力ですしね」
ルーナが言うのなら本当なのかもしれない。
「そっか、うんうん…………契約武器って何?」
コーチの武器と言えば執行の何たらって槍を思い出すが召喚時に『契約の象』とか言っていたのでそれが契約武器だったのだろうか。
「ツカサはそんなのもわからねぇのか? 流石ヴァカだな!」
コーチに馬鹿と言われて否定出来ないのはダメージが大きい。腹を抱えて「ぶははははっ!」と笑う顔が腹立つ。
「じゃあ説明してみろよ」
「へっ! それはだなぁ……契約する武器なんだよ!」
よくそんな説明で偉そうに出来るな……。そして何故こいつは馬鹿なのに魔法を使えているんだ。
「それなら馬鹿なコーチ君に変わって淑女であるボクが説明してあげようじゃないか!」
レディは自信ありげに、ルーナと負けず劣らずの大きさの胸を張る。淑女かどうかは置いておいて、説明してくれるのはありがたい。
「良いかい? まず契約武器と言うのは世界のどこかにあると言われている武器と契約することで使える様になるんだ! そして様々な能力を持っているんだけどそれは使っているとわかってくる様になるんだよ!」
レディは「ちなみに名前は触れた時にわかるんだよ!」と補足説明も忘れない。
「先生しつもーん世界のどこかってどこですか?」
そう言って手を挙げて質問するのはコーチ。お前、さっきの今でよくそんな事出来るな……。しかしそれについては俺も気になったので素直に聞く事にする。
「残念ながら判明してないんだ。研究されてはいるんだけどね」
「ちなみに確認されている物で有名なのはコーチさんも使っている司法を司る武器群ですよね」
「そうだよ流石ルーナちゃん! 馬鹿とは違うねぇ! けど馬鹿の使う《執行のジェス=クロワイド》は光属性最強クラスなんだよ!」
あの格好良い槍は見た目だけじゃ無かったのか。そう考えると転校初日の模擬戦終了時のコーチに対するブーイングも納得出来る。
「先生! 武器群ってことは司法を司る武器は他にもあるって事ですか?」
そんな時、そう質問したのはコーチ、本当に知らないの?
「馬鹿なのに良いところを突くね! だけど今は関係無いから流すね」
項垂れるコーチ。……最近コーチの扱い雑だな。俺も言えないかもしれないけど。
「はいそこコーチ君ばっか見ずに真面目に聞きなよ!」
レディは俺をビシッと指差す。まさかレディが真面目な事を言うとは……。
「鼻血を止めてから言ってくれ」
「これは美味しいんだから良いの! はい、次行くよ次!」
清々しいまでの開き直りだこと。とはいえ、授業と言って良いのかはわからないが、授業をしてくれているのだから今回は多目に見ることにしよう。
「じゃあここまで来て出てくる疑問はなんでしょう……はい、ツカサ君」
「えっと……どうやって武器と契約するか、か?」
「そう! そうなんだよツカサ君! 実はね、契約武器とは言うけど、契約書武器って言うのは生まれた時から決まっているんだ。つまり、契約は生まれる頃には済まされているんだよ!」
「へー……じゃあ武器はどうやって呼び寄せるんだ?」
「うんうん! 学ぶ意欲がある子は大好きだよ! それはズバリ召喚魔法なんだよ!」
「ナ、ナンダッテー!」
「いや、コーチは知ってるだろ」




