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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag4―血と汗と涙の魔術学院―(8)

「どうした変態?」


 とりあえず騒がしくてフラフラしている変態二人に聞き返してみた。


「何度言ったらわかるんだ! 俺は変態じゃねぇ! 俺はジェントルメンだっ!!」


「そしてボクは淑女だよ!!」


「ふーん……で、何?」


 聞き返さなければ良かったと軽く後悔しながら言い方を変えて質問してみる。


「酷いっ! 流された!」


 流さずにどうしろと言うのか。


「これだね! この言葉責めでコーチくんを喜ば……いや、悦ばせるんだね!」


 この人はこの人でブレないなぁ……。


「で、お前らも着いてくるんだろ?」


「何でそんなに冷たいんだ!? そもそも何でほって行こうとしたんだよ!?」


 いや、だってこの人達はこんな感じで良さそうだもの。


「気にすんな、とっとと行こうぜ?」


「いや、気にするだろ!? 行くけど」


「デレは!? ねぇ、デレはいつ来るの!?」


 何だかんだ文句であったり妄言であったりを言いつつもコーチとレディも着いて来る。こうして、主に二人が賑やかにしながら学食へと向かった。




 学食に入ると外見通り中は広かったが、当初に予想していたものとは違ってお洒落なカフェの様だった。……先程の三人組の先輩もここを利用するのだろうか……。


 そんなこんなで各々が料理を受け取って、大きめのテーブルを囲んで座る。しかし四人で囲んでもテーブル自体が大きいので中々スペースが余り、少し違和感がある。


 ちなみに席は俺の右隣にノスリ、正面にはルーナがおり、こちらから見てルーナの右隣にレディ、その隣にコーチが座っている。


「そう言えばノスリちゃんはいつも一人なのか?」


 みんながご飯を食べ始めて少しした時、コーチのそんな一言で団らんしていた空気が凍りついた。


「コーチ……」


「馬鹿……」


 俺とレディが呆れのあまり言葉を洩らす。レディもこうしてたらまともなんだけどなぁ。


「えっ? 何なのこの空気!?」


「お前のせいだ馬鹿」


「そうだよ馬鹿」


「酷い……俺は良かったらこれかも一緒に飯食べようって言いたかったのに……」


「……えっ?」


「マジで……?」


「何……だと……?」


 コーチの発言にノスリを除いた俺達三人は絶句する。


「ごめんコーチ……俺、お前の事ただの馬鹿だと思ってた……」


「コーチ君はただの馬鹿じゃなかったんだね!」


「うわぁぁぁん! ルーナちゃぁぁん!」


「まさか……コーチさんからそんな言葉が出るなんて……」


「うわぁぁぁノスリちゃぁぁん頼みの綱は君だけだぁー!」


 ルーナのまさかの一言によりソウルクラッシュされたコーチは今度はノスリに泣きつきに行った。


「や……」


 しかしノスリは近づいて来るコーチに対して絡まれていた時には見せなかった怯えた様な表情をした後、知ってか知らずか俺の服の袖をギュッと掴んだ。


「来ないで……」


 強い否定。ここまで言われたら誰だって傷付くだろう。容赦ない……。


「うわぁぁぁ!」


 ノスリの言葉がトドメになったのかコーチは叫びながら学食から飛び出して行った。


「なあノスリ、少し虐め過ぎたんじゃないのか?」


 俺は未だに袖を握っているノスリに問い掛けてみる。


「本当に……怖かった……」


 今にも泣き出しそうな表情をするノスリ。コーチの何処が怖かったのだろうか? いや、変態だからか……。


 しかしこんなノスリを見ていると昔の來依菜を思い出す。


「なんで……笑ってるの?」


 どうやら少し笑ってしまっていた様でノスリは少し頬を膨らませていた。


「ごめんごめん! ちょっと昔を思い出して」


「昔……?」


 そう言ってノスリは首を傾ける。表情が乏しい子だと思っていたが話してみると案外表情は変わるみたいだ。


「うん、俺にも妹が居ててさ、ノスリとちょっと似てたから」


 本当はちょっとではなく瓜二つだけど。


「司さん良いんですか?」


 來依菜の話だと思い、心配したのかルーナが声をかけてきた。大丈夫だと答えたけれど、何故か皆俺を見ている。


「えーっと……どうしたの?」


「今度は泣きそうな顔……してる……」


「そ、そうか?」


 ノスリに言われて気付いた。意識しては無かったけど、もしかしたら來依菜はもう……いや、気のせいだと自分自身に言い聞かせる。


「大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫」


「それなら良いですけど……」


 浮かない表情を浮かべるルーナ。心配を掛けてしまって申し訳ない。


「なんでぇ! なんで誰も引き戻しに来てくれ無いんだよぉ!」


 そんな時、外に飛び出して行った筈のコーチが異様なテンションで戻って来た。


「なんだ? 追い掛けて来て欲しかったのか?」


「……ぶはっ!」


 鼻血を吹き出すレディ。


「またか……」


「……大丈夫?」


 ノスリが心配してレディの側に寄る。


「ノープロブ……レム……」


「ってレディちゃん!? おもいっきり倒れてるじゃねぇか!」


「えっ? あっ? うぇ?」


 コーチは騒ぎ、ルーナは戸惑う。レディとコーチには悪いけど、辛気臭い空気だったので助かった。


 その後はそんな辛気臭い空気も忘れてしまう程、再びレディを医務室まで運んだり、道中運ばれている人と変態が暴走したりするなど、騒がしいながらも充実した時間を過ごした。


 ちなみに学食のメニューだが俺達の世界にあるようなものと同じで、食文化も大体同じようだった。不思議だ。


 また、余談ではあるが不良な先輩三人組は気絶していた時にレディの鼻血により血塗れになっていて、気絶から醒めて起き上がったところをたまたま目撃した生徒が数人居たそうで『歩く死体』と言う噂の一つになったそうな。

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