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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
23/179

Flag3―試験と試練―(12)

「残念ながら俺の魔力付加や属性強化は自分で言うのも可笑しいもしれんが一般的な魔導士とは格が違うものでな……」


「そりゃ笑え無い冗談だな……」


「もう一回試してみるか?」


 毅然とした態度で、青い短髪の男は向かってくる。急いで立ち上がり左に跳んで、何とか避ける事が出来たが背中の痛みが中々に足を引っ張ってくれる。右足首もあまり庇っていられない。


 青い短髪の男は間髪入れず拳を突き出してくる。最初の内は避けられていたが、段々と体と拳の距離が近付いて、遂に腹を掠った。向かってくる拳に対して同じタイミングで避けていた筈なのに……!


「どうした? 動きが鈍っているぞ?」


「性格悪いな……」


「なんだ……気付いていたのか?」


「当たり前だろ」


 薄っすらと笑った青い短髪の男は、まだまだ余力を残している。それでどういうわけか、俺で遊んでいるのだ。


「そうか……では、もう少しだけ力を出そう」


「えっ――」


 景色が歪んだ。


「大丈夫か?」


 背中と腹に広がる酷い痛みと吐き気、遠くから聞こえる声に、俺は殴り飛ばされたのだと気付いた。


「嫌味な……野郎だな……」


「褒め言葉として受け取っておこう」


 立ち上がろうとしていた俺の前まで移動した青い短髪の男は俺を蹴り飛ばし、俺は無様に地面を転がる。


「ッあ……」


「さっきまでの威勢はどうした? いい加減辛いだろう? もう諦めたらどうだ?」


「……はっ。ざけんな、こっちだって色々あんだよ。勝手な事言ってんじゃねぇ……」


 あー……もう、叫びたい位痛いのにそこまで声が出そうにない。口の中だって鉄の味がして気持ち悪い。


「そうか。なら、気が済むまで見せてみろ」


 また、速度が上がった。


「言われなくても見せてやる……」


 どうせ避けれないのなら、端っから避ける事は考えずに、やれること全部やってやる。


「〝ランド〟」


 青い短髪の男の前に土の壁を造る。しかし足止めにもならない。


「〝ランド〟」


 しかしそれでも俺は何度も青い短髪の男の前に土の壁を造り出す。


「〝ランド〟」


「しつこい」


 男の表情が少し歪む。


「〝ランド〟」


「何がしたい? 自棄にでもなったか?」


「〝ランド〟」


 遂に、土の壁が作れる位置が目の前になってしまった。しかしそれもこれまでと同様に、簡単に崩れ去ってしまう。


「無駄であったな」


 拳が腹へとめり込んで、喉の奥からは不快感が逆流してくる。それでも吹き飛ばされ無いように、俺は青い短髪の男の腕にしがみついて吹き飛ばされないように離さなかった。


「それがしたかった事か? 根性は認めよう。しかしそれだけだ。何の考えもなければ、それは無謀でしかない。」


 口の中に広がるのは鉄の味、身体中には痛みには吐き気。もう嫌だ……けど、こんな所で諦めるつもりは無い。死ぬなんて、以ての外だ。


 必死に只必死に。


「は? んな訳無ぇだろ……バーカ……」


 魔法の名前を口にした。



「〝スペリア・フレイ〟」



 突き出した俺の手の平の前には四芒星の魔方陣が浮かび上がる。大量の炎が吹き出して水蒸気を発生させながら男を飲み込んだ。


 今まで成功しなかったのは当たり前だ。一発目から、難しい方法で挑戦する馬鹿がいるかよ。結局、俺は焦っていたんだ。


「勝った……かな? ……あ……れ?」


 体に力が入らない。そりゃそうか。別に魔力の量が多い訳じゃないのに、あれだけ魔法を連発すればこんな風にもなる。


 掠れて見える視界の先の炎が膨れる。間も無く、炎が全て吹き飛んだ。


「おいおい……嘘、だろ……?」


「油断したな……まさかここまでやられるとは……想定外だ」


 青い短髪の男の顔は熱により若干赤くなり、着ていた鎧は少し焦げていたものの、これといったダメージは見受けられ無い。


「油断……するからだ」


「褒められるとは思わなかったな」


「そりゃあれだけやったんだ……」


 最悪の事態……しかし不思議と怖くはは無かった。ああ、届かなかった。そんな事を呑気に思っていた。


 それに何処か相手が死んでいなかった――殺さずに済んだ――事に安堵している自分も居る。


「随分と素直だな……覚悟は出来ているか?」


「覚悟ってなんだよ……」


「面白い。少年、その栄誉を讃えて名前を聞いておこう」


「……ツカサだ。けど、そんなのが栄誉だとは思わないね」


「やはり面白い。俺の名前は……ショウシだ」


「誰もそんなの聞いてねぇよ……」


「それもそうだ。ならば、今一度問おう……覚悟は出来ているか?」


 ……人生って案外あっさりとしている。あれ? 俺、諦めかけてる? ……けど、それでも。


「そんな覚悟出来るわけねぇだろ……バーカ……」


「その割には素直だな。……では、去らばだツカサ。……〝ビロウ・フレイ〟」


 違ぇよ……。素直なんかじゃ無い。悔しいけど、体が動いてくれないだけなんだよ……。


 心の中で毒突いても、魔方陣は描かれ、炎が押し寄せてくる。


 そうして、俺は炎に呑まれる――その刹那。



「我求めしは盾、〝サピーナ〟!」



 そんな、ハスキーで凛とした声が聞こえたかと思うと、俺目の前に七芒星の魔法陣が現れ、そこから俺の体よりも大きな盾が出現し、炎から俺を守った。


 助かった……? そう思いながら俺は声のした方向へと、首を向けた。


「ルイス……エバイン……」


 ショウシが呟いた、俺が首を向けた先に居たのはウェーブがかった紫の髪に同じく紫色の瞳を持つスーツ姿の女性――王都魔術学院学園長であるルイス=エバインだった。


「どうした? 私の顔に何か付いているか?」


 大きな盾が消えた。が、ショウシはそれを気にした素振りも見せず、学園長に問い掛けた。


「何故お前がここに居る?」


「たまたま近くを通りかかってな……何故そんな顔をする?」


 学園長の言葉に促され俺はショウシの顔を見るとその顔は少し焦っている様にも見えた。


「選りに選ってルイス=エバインか、最悪だな……」


「何故私が見ず知らずの貴様なぞにそんな風に言われなければいけない?」


「この国で会いたくない人間の内の一人に会ったんだから当たり前だ」


 ショウシは肩を竦めて苦笑いしながらも両の拳を構え、戦う体勢を取った。


「酷い言われようだな」


 対称的に学園長は未悪戯な笑みを浮かべるだけで、何の構えも取らない。


「それ程の相手と言うことだ……」


 ショウシが溢すと同時、ショウシが俺の視界から消えた。急いで学園長の方へと目を向けると、ショウシは学園長の方へと、俺と戦っていた時とは違い、格段に速く、真っ直ぐでは無く翻弄するかの様に進んでいた。やっぱり手加減されていたのか。わかってはいたつもりだけど、悔しい。


 二人の距離は縮まり、ショウシが拳を振り上げる。


「我求めしは盾! 〝サピーナ〟!」


 同時、学園長も魔法を発動し、巨大な盾で拳から身を守った。

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