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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag3―試験と試練―(9)

「司さん……ちゃんと見てましたか?」


「えっ? ああ、うん」


「では実践……と言いたい所ですが、まずは性質を知るところからしましょうか」


「性質か……当たり前のことなんだろうけど〝ビロウ・フレイ〟に似ているように見えたな」


「そうです。〝スペリア・フレイ〟は〝ビロウ・フレイ〟の直接上位種ですからね」


 確か直接上位種と言うのは、ある魔法のランクが上がる時に性質が追加されているだけの魔法の事だった筈だ。


「そういえば、ルーナはいつも最初に性質を教えてくれるけど、性質がわかれば簡単に使えるのか?」


「そうですね……必ずしも最初にする必要は無いんですけど、難しい話をする前に簡単に性質を理解しておいた方がイメージしやすいかなと」


 言われてみると確かにそうだ。先に魔法の組み立てとか、複雑だったり難しい上位の話をされるよりも、前もってその魔法がどんな魔法なのか知っておいた方がわかりやすい。


「では、〝スペリア・フレイ〟の性質を説明していきますね。〝ビロウ・フレイ〟は〝フレイ〟に増加と拡散の性質が追加されていますが、〝スペリア・フレイ〟には更に持続と輻射の性質が追加されています」


「そんな感じがするような気がする……。けど、話の腰を折って悪いんだけどさ、今日は昨日みたいに宿に戻って勉強しないのか?」


「すみません、そうしたいのは山々なんですけれど、私はそろそろ学校の準備をしなくちゃいけないので、今日から学校の寮に戻ろうかと思っているんです。ですので、申し訳無いんですけど、ある程度はここで教えるので、復習や細かいところは宿に戻った時に一人でお願いします」


「そっか。俺は教えて貰ってる側だから、気にしないでくれ。これ以上ルーナに迷惑を掛ける訳にはいかないしさ」


 そうして俺はルーナに〝スペリア・フレイ〟について教えてもらい、初級、中級の魔法を一通り練習した後、明日の昼にまた集合することを決めて別れた。


 宿に戻った後、ルーナが居ない事に気付いたナイトさんに説明すると「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」と唸って倒れ込んだり、咽び泣いたり々と面倒ではあったが、前もって教えてもらったルーナの説明がわかりやすかった事もあり、〝スペリア・フレイ〟の理解を深める事が出来た。


 翌日、ナイトさんがやけ酒したせいで部屋が酒臭かった為、俺は早めに部屋を出て演習場へと向かった。


 演習場に着いたのは昼の少し前、そのせいかまだ人は少ない。好都合だ。魔法を練習するには丁度良い。


「〝スペリア・フレイ〟」


 早速腕を伸ばして魔法の名前を口にする。


 ……けれども。何も起こらない。一応魔力は無くなっている感覚があるので全く出来ていないというわけじゃないっぽい。


 一旦、ウォーミングアップが必要だったのかと、覚えている初級、中級の魔法を使ってみて調子を確認する。良くも悪くも昨日とはそんなに変わってはいない。


 気を取り直してもう一度。


「〝スペリア・フレイ〟」


 やはり、魔力は消費しているけれど、変化なし。魔法陣が現れる気配でさえ無い。


「〝スペリア・フレイ〟!」


 気合いが足りなかったのかと思い、恥を忍んで力一杯叫んだが、恥をかいただけだった。


 兎に角魔法を口にした。それでも魔力と体力だけが削られて、何の成果も得られない。一体何が駄目なんだろうか。


 息を上げながら、地面にへたり込む。これまで順調だった分、ここに来てぶつかった壁が大きく見えた。これが中級と上級の違いなのか。


 地面に手をついた状態のまま、息を整えていると、演習場が少し騒がしい事に気付いた。


 もうそんな時間なのか、このままではルーナとコーチに情けない姿を見せてしまう事になってしまうと思って、辺りを見渡すと、何だか様子が可笑しい。


 目に写ったのは武装している集団。こんなところにしてはミスマッチ過ぎる。


 そう思ったのも束の間、集団を統率しているらしき、青い短髪に青い目をした三十代位の、長身で肩幅が広く筋肉質な男が、集団の中から表れると、大きな声で呼び掛け始めた。


「我々は《リアトラの影》である。君達には非常に申し訳無いが今から拘束させてもらう。静かにしていれば我々も危害を加えるつもりはない」


 嫌に落ち着いた口調で言い終わると、あっという間に演習場に居た人々は一ヶ所に集められ、手に石で出来た様な枷を嵌められてしまった。


 無論、俺は疲れていたので為す術無く引っ張っていかれた。漸くこの世界に慣れてきたのに、こんな現実的じゃないような事に起こられると、事態の深刻さなんてわかったもんじゃない。けれども、何故かやけに落ち着いていた。


「いいか、君達が今嵌めている物は魔法を吸収するものだ。故に逃げようなんて考えは早々に捨てる事を推奨する。それに君達があまりにもしつこい様であれば、我々も然るべき手段を取らせて貰うことになる事も覚えていて欲しい」


「ふざけんな! 何が《リアトラの影》だ! んなの知らねぇしそんな脅しなんざ効かねぇんだよ! 〝ビロウ・フレイ〟!」


 そう言ったのは武装した男達二人に押さえ付けられながら連れて来られた二十代位に見える男性で、男性は隙を見て男二人を振り解くと、手枷を溶かそうとして魔法を発動する。


「な、なんでだよ!? クソッ!」


 しかし、現れた炎は直ぐに小さくなってしまい、手枷が傷付く事は無かった。


 その後も男性は何度も手枷を破壊しようと試すも、結果は同じ。それでもめげずに魔法を発動しようとしたが、その魔法が現れる事は無かった。


 男性の胸元から、赤く染まった一本の剣が生えてきた。生え際からは赤い液体が溢れ出る。小刻みに動いていた男性がピクリともしなくなると、男性の胸元から剣が消えた。


 いつの間にか男性の後ろに立っていた《リアトラの影》の一員が手に持っている何の特徴もない剣には、鮮やかな赤の液体が滴っている。


「うっ……」


 嘔吐した。人が、死んだ。殺された。簡単に。あの一瞬で、あの一本の剣だけで。


「人が死ぬところを見たのは始めてか?」


 怯え、叫ぶ声の中で、嘔吐いてしまった事が目立ったのだろうか、俺に気付いた青い短髪の男は、俺の元へやってくると、そう問い掛けてきた。


 身体中から嫌な汗が吹き出し、心臓の鼓動は早くなる。時間の流れは感じられなくなり、現実に居ているという感覚が薄くなる。


「どうした? 声が出ないか?」


 目を逸らす。それは無意識に現実から目を背けようとして起こった事だったが、その際目に入った回りにいる人達も、俺と同じような状況だということがわかった。


 頼れる人なんて、いない。


 頭が冷えてきた。


 すると、視野が広がって、演習場全体の状況が目に入ってきた。


 大量に居た筈の《リアトラの影》のメンバーは、いつの間にか演習場の出入り口から外に出ている様で、今は目の前に居る青い短髪の男と、男性を殺した男しか居ない。この場の制圧が完了したと判断して、隠れている人が居ないかの確認や、外部からの警備を固める為に移動したのだろうか。

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