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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
102/179

Flag8―魔導―(10)

「だが、魔導が奇跡を生み出すと言えども何事にも限度はある。そして問題は“物理的”に見ない場合、つまり魔法と魔術においての例え話で、初級魔法の箱に最上級魔法と同じ量の果物を入れるという不可能が可能になるということだ」


「では魔術は魔法に何かしらの手を加えて限度を越えさせたものと?」


「ああ、そんな感じで良い。そして魔術はこの世界に伝わる神話と同時期に編み出されたというのが通説だ。何のためかは言わんでもわかるだろ?」


 この世界に伝わる神話。魔闘祭の一件以降、知る必要があると思って調べたのでもう知っている。


 神話の中では神の域に手を伸ばそうとした人間は別の世界に閉じ込められ、こちら側の人間はそれを《牢獄の住人》と呼んだ。だが、それが只の神と人間による神話なら、《牢獄の住人》なんて悪意の籠った様な呼び方にはならない筈だ。となると何千年も昔に魔術なんてものを生み出すことになる原因なんて一つ……人間同士の戦争だ。


 昔に起こったことの真実なんてわからないが、学園長の言い方からして、多分これであっていると思う。


 それに、もしそれで合っているのなら、何となく魔術と言うものについて納得出来るような気もする。


「魔術は誰でも簡単に人を殺せる様にする為に作られたんですね……」


「そうだ。とは言っても、本当の意味で魔術を使える様になった人間はほんの一握りだったんだろうがな」


「一握り? ……ああ、そう言うことか、魔術は魔法の限界を超えさせた事によって生まれる反動みたいなのがあったんですね……例えば、死ぬ、とか」


「……貴様は本当に教えていて面白味のない生徒だな。だがまあ、正解だ。ものによっては死ぬ。それでなくても何かしらの反動があって魔術というものを真の意味で使える人間なんて殆どいない」


 学園長は投げ遣りにそう言うが、その割に解説がきちんとしているのには些か違和感を感じる。……いや、そもそもこの人がまともなことを言っていること自体がおかしいのか。納得。


「『殆ど』か……。七英雄のステラ=フォールが“魔術師”と呼ばれているのは、その『殆ど』に入るからですか?」


「ああ。その中でも彼女は飛び抜けて優秀だったらしい。とは言え、そういう意味での魔術を使える気質を備えた者はあまりいないんだがな」


「だが、魔導が奇跡を生み出すと言えども何事にも限度はある。そして問題は“物理的”に見ない場合、つまり魔法と魔術においての例え話で、初級魔法の箱に最上級魔法と同じ量の果物を入れるという不可能が可能になるということだ」


「では魔術は魔法に何かしらの手を加えて限度を越えさせたものと?」


「ああ、そんな感じで良い。そして魔術はこの世界に伝わる神話と同時期に編み出されたというのが通説だ。何のためかは言わんでもわかるだろ?」


 この世界に伝わる神話。魔闘祭の一件以降、知る必要があると思って調べたのでもう知っている。


 神話の中では神の域に手を伸ばそうとした人間は別の世界に閉じ込められ、こちら側の人間はそれを《牢獄の住人》と呼んだ。だが、それが只の神と人間による神話なら、《牢獄の住人》なんて悪意の籠った様な呼び方にはならない筈だ。となると何千年も昔に魔術なんてものを生み出すことになる原因なんて一つ……人間同士の戦争だ。


 昔に起こったことの真実なんてわからないが、学園長の言い方からして、多分これであっていると思う。


 それに、もしそれで合っているのなら、何となく魔術と言うものについて納得出来るような気もする。


「魔術は誰でも簡単に人を殺せる様にする為に作られたんですね……」


「そうだ。とは言っても、本当の意味で魔術を使える様になった人間はほんの一握りだったんだろうがな」


「一握り? ……ああ、そう言うことか、魔術は魔法の限界を超えさせた事によって生まれる反動みたいなのがあったんですね……例えば、死ぬ、とか」


「……貴様は本当に教えていて面白味のない生徒だな。だがまあ、正解だ。ものによっては死ぬ。それでなくても何かしらの反動があって魔術というものを真の意味で使える人間なんて殆どいない」


 学園長は投げ遣りにそう言うが、その割に解説がきちんとしているのには些か違和感を感じる。……いや、そもそもこの人がまともなことを言っていること自体がおかしいのか。納得。


「『殆ど』か……。七英雄のステラ=フォールが“魔術師”と呼ばれているのは、その『殆ど』に入るからですか?」


「ああ。その中でも彼女は飛び抜けて優秀だったらしい。とは言え、そういう意味での魔術を使える気質を備えた者はあまりいないんだがな」


 学園長は「すまん、すまん」と申し訳のなさが微塵も滲んでもいない砕けた口調で言う。


「とりあえず……どうして魂魄の結び付きが強いと反動が少ないんですか……?」


 放置していたら絶対に話が進まなさそうなので、未だに何故か勝ち誇ったような顔をしている学園長に話を促した。


「わかったから、そう睨むな。何でも、魂魄の結び付きが弱い者が魔術を使うと、魂魄が分離して廃人、又は理性のない死ぬまで無差別に暴れ回る『魔人』と呼ばれる状態に陥ってしまうらしい。それと、魂魄を媒体にしているから、魔術をコントロール出来ない間は精神面にも影響が出ることがある」


 何それ怖い。もっと早く知っておきたかった……。何かの拍子で使っていたらと思うとゾッとする。


「なるほど、わかりました。ですが、さっきから気になっていたんですけど、“媒体”と言うのと、どうして“らしい”なんですか?」


 別にこの世界での常識なら断言しても言い筈なのに“らしい”と言うのは何となく引っ掛かる。


「媒体は……あー……私もよくわからないんだ。この魔術についての定義はまだ結構新しいもので私自身もよく知らないからな。だから“らしい”なのだ。だがまあ、この定義を見つけたのはレイン=シュラインと言う学者だから信憑性は有るとは思う」


 また出て来たよレイン=シュライン。一体何者なのだろうか? 話を聞く限りそれなりに信頼は厚いみたいだけど……。


「胡散臭い……」


「折角私自ら手解きをしたんだ、もっと嬉しそうな顔をしたらどうだ?」


「そもそもなんで俺にそんな話をしたんですか?」


「なぁに、ちょっとしたお詫びだよ」


「お詫び? 知識の差を見せ付けて嘲笑う事がですか?」


 その上終始あんな遠回りな言い方をしていたのだから、絶対に何か企んでいるとしか思えない。


「……はぁ。お詫びは本当だ。只、貴様の事を聞いてしまったから力になってやれないかと思ったんだよ」


「……っ。ナイトさんが話したんですか……?」


「ナイト……さん、は悪くない。貴様の成績等を見ているとあまりにも変だったから無理矢理私が聞き出したのだ」


「無理矢理ですか……あの人が簡単に口を割るような人とは思えないんですが」

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