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文章表記の落とし穴と利用法

 現代作文に落とし穴があるとすれば『普段使っている言葉をそのまま文章に使う』という手法が許されていることではないだろうか。

 我々が文章を書き始めてまず要求されるのは、口で発音している言葉を目に見える『文字』で書き写すことである。ひらがなしか覚えていない子供はここで混乱する。「おーさま」と普段発音している言葉をひらがなだけでどう書き表せばいいのか。

 ひらがなというのは音しか持たない。「おうさま」だと大人が理解できるのは「王」という漢字の音読みが「おう」であると知っているからだ。漢字をまだ習っていない子供に、このことを理解させるのは難しい。

 だが、漢字で書けば間違いなく「王様」だということが分かってもらえるではないか。

 そもそもひらがなだけでかかれたにほんごというのは、よみにくいことこのうえない。

 だから我々書き手は漢字仮名まじり文を普通に書く。漢字で意味を補い、ひらがなで音を表現する以外のルールなど、実は文章には存在しないのである。記号の使用ももちろん禁止などされてはいない。


『もうすぐたん生日なのでwktkしています』


 娘よ、上達したなぁ。でも学校へ提出するのにワクテカはやばいと思うぞ……

 でも、ネットスラングを知っているとちょっとカッコいいと勘違いしている小学生同士の会話で、ワクテカはよく聞かれる言葉である。


「ktkr、キタコレじゃね?」

「もう、wktkでわーいって感じなんだけど?」

「母さんがhshsしててさぁ……」


 娘よ……ぜったい世間様によからぬ誤解をされる。特に最後のは俺の性癖を誤解されかねん……

 色々ヘコむところではあるが、日常会話をそのまま文章に直すことを許されているなら、絶対的な間違いとは言い切れない。作風と、使う単語の知名度によってはむちゃくちゃ効果的なのではないだろうか……そう、アザとーがネットスラング使いになれないのは、そういう新語に疎いということ以前に作風の壁がある。

 作風とは何かというと、アザとーのようにカンだけでものを書くタイプにとっては全体の見取り図である。直接投稿ではなく、一度ワードで文書を作成するのも、この見取り図を俯瞰するためだ。

 文章をざっと見渡したときに感じる雰囲気、それが作風である。

 実は雰囲気重視で「それっぽい文章を書く」という作業はさして難しいことではない。文章にもテンプレのようなものがあって、語彙と漢字の使用量、比喩表現をちょっと配分すれば


 このように愚者の鬱言のような駄文の一節さえ、真言含む賢者の名言にも似た幻想ファンタジー感あふれる古曲たらしめることができる。


……なんてね。

 文体は軽くするのか、重くするのか、それによって漢字の使用量も、使う漢字の種類も変わってくる。同じ「むし」という単語を表すにも、「虫」と書くか「蟲」と書くかで全体の印象は変わってしまう。なぜなら文章にしたことで言葉は視覚野から入る情報へと変化するからだ。

 つまり書き手の意図を視覚的に表し得るものならば、記号だろうが顔文字だろうがAAだろうがかまわないのである。


「其処もとの、名は何という」

「(゜.゜*)(*゜.゜)」

「そう、お主じゃ。他に誰奴が居る」

「( ̄へ ̄)」

「ふむ、答える気はなさそうであるな」


 ほ~ら、会話もできちゃった♪

 逆に漢字を記号的に使ってそれっぽい言葉を作るという遊び方もある。音読み訓読みなど一切気にせずに、漢字の持つ意味だけを並べるのだ。

 例えばアザとーが良く使う『笑息』。これはため息のようにもれる柔らかい笑いを表現したくて考えた言葉だが、意外なことに未だかつて誰も違和感を訴えては来ない。もちろん前後の文章から意味の予測ができるように組んではいるが……むしろ皆さん、これに何とルビを打って読んでいるのか、教えてください!

 

 もちろん、正しい文章作法というものも大事だ。会社の面接などで志望動機を書けといわれて


 以前より自分の過去のスキルを生かせる職をと思っておりましたが、貴社の応募要項を目にしたとき、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!と思いました。


 なんてやらかしたら、絶対落とされる。(いや、俺が面接官なら採用するけどね? だって、すっげぇ喜んでるじゃん?)

 まあ、そういうことをやらかさない程度の常識は欲しいところだが……自由に文章を書いていいよ、と言われたら、それはもう「音を表すひらがな」と、「意味を表す漢字」を駆使して好きなように遊んでいいよ。あ、記号も用意したから使ってみてね♪ と言われたのと同じだ。正しい文章作法なんか誰にも強制されないのなら、好きに遊ばなきゃ損だ。

 ただし忘れてはいけない。文章である以上は読んでいる人に伝わらなければ意味がない。

 最後にアザとー、「恋欲」という言葉を作ってみた。もちろん、いきなりこの単語だけを使っては誰にも意味は分かってもらえない。そこで……


 お互いに愛の言葉は交わした。次はいよいよ……と思うと、こうして映画館の暗がりでふとした拍子に触れるひじの動きさえもがなまめかしい。

「あ、ごめん」

 だが、同じポップコーンのカップに突っ込んだ手が重なった瞬間に感じたのは、今までの女に感じた体だけを重ねる愛欲などではなく、引っ込められた指先の恥じらいさえも欲する恋欲だった……


 どっすか?

 こんなに面白い言葉を与えられているのだから、ぜひ遊び心をもって既存の枠にとらわれない「新たな日本語」を、われわれ書き手こそが生み出すべきなのである。


このネタ、苦しくなってきた。

次は真面目に文章作法でも書こうかなぁ……

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