第5章: 第1部: 異邦人たちを導く女
あの武器商人、スルクとの話を終えたルチアーノは、異邦人ギルドへ戻ることにした。
最初、あの男のことは少し面倒な人物だと思っていた。だが、イルサと同じように、実際は自分が思っていたほど悪い人間ではなかった。
もっとも、よく考えてみれば、そもそも悪人だと思ったことはなかったのだが。
ただ、少し面倒に感じていただけだ。
あるいは、問題は別のところにあるのかもしれない。
ルチアーノは、どうやら他人と接することに慣れていないようだった。
人と関わること自体が、彼にとってはひどく億劫だった。しかも、かなりおしゃべりな性格であるにもかかわらず、それが会話を楽にしてくれるわけではなかった。むしろ、余計に難しくしているようですらあった。
どうしてこんなことになるんだ?
イルサやミカと知り合い、その後スルクとも話をしたが、彼らの誰かと積極的に話したいと思ったことは、ほとんどなかった。
それどころか、自分次第だったなら、そもそもあの会話のどれも始めていなかっただろう。
自分から話に加わるよりも、隅のほうでじっとして、周囲を眺めているほうが落ち着くのだ。
要するに、主人公よりも脇役でいたいということだ。
台本に自分の出番が少なければ少ないほどいい。
ただ、生き延びるために必要だから会話をしているだけだった。
とはいえ、スルクのことが嫌いなわけではない。
もう少し話していたかったな……。
ルチアーノは歩きながら、しばらく黙り込んだ。
もっとも、その考えを後悔するまでに、そう時間はかからなかった。
いや、そこまででもないか。あれ以上長く話していたら、きっと疲れていただろう。
何事もほどほどが肝心だ。
そんなことを考えながら、ルチアーノは異邦人ギルドへ向かって、ウルブスの街路をのんびりと歩き続けた。
自分の好きにできるのなら、もうしばらく散策を続け、この辺境の町の景色を眺めていたかった。まだ目にする機会のなかったものが、たくさん残っているのだから。
しかし、やるべきことがあった。
イルサから、装備の購入が終わったらギルドに戻り、異邦人の証明書を受け取るように言われていたのだ。
彼の理解では、その書類は自分がギルドに所属していることを証明するためのものらしい。
具体的には何の役に立つんだ?
確か、いろいろあったはずだ。
ルチアーノは記憶を辿ろうとした。
その一つは、もし自分が何か問題に巻き込まれた場合、手の空いているほかの異邦人たちが助ける義務を負うというものだった。
少なくとも、彼はそう理解していた。
いわば、「一人に手を出せば、全員を敵に回す」というようなものだ。
いや、正確には少し違ったかもしれない。
イルサは別の言葉で説明していたが、ルチアーノの記憶にはそんなふうに残っていた。
それ以降の話については、ほとんど思い出せなかった。
教師のような人たちが、俺たちを助けてくれるという話もしていた気がする……。
いくら思い出そうとしても、説明の全容を思い出すことはできなかった。
異邦人たちへの何らかの支援や教育に関係する話だったことは覚えているが、細かい部分が抜け落ちていた。
どうやら、スルクとの会話にあまりにも集中していたせいで、イルサから聞いた情報のかなりの部分を忘れてしまったらしい。
不思議なことに、武器商人と出会う前は、この世界に関するさまざまなことを思い出せていた。
それなのに今になって、また頭の中に記憶の空白が増えていた。
まあいいか……そのうち思い出すだろう。
そう願うしかなかった。
やがて、彼はギルドの大きな二枚扉の前にたどり着いた。
扉を開け、中へと入る。
すると、そこには以前訪れたときとはかなり違う光景が広がっていた。
ギルドの中は、異邦人たちでいっぱいだった。
どうして異邦人だと分かるんだ?
答えは簡単だった。
イルサから、この場所に出入りする人間のほとんどは、一部の例外を除いて異邦人だと聞かされていたからだ。
ならば、ここにいる人々の大半が自分と同じような人間だと考えるのは、自然なことだった。
「どうしてこんなに人がいるんだ?」
ルチアーノは小声で呟いた。
前に訪れたときと比べて、ギルドの中にいる人間の数がかなり増えていることに気づいていた。
何かあったのだろうか?
もっとも、正直なところ、彼には大して関係のないことだった。
何があろうと、俺には関係ない。
ルチアーノは人混みの間を進み、比較的人の少なそうな部屋の端まで移動した。
正確に何人の異邦人がいるのかは分からなかったが、見える範囲から判断するに、二十人から三十人ほど、あるいはそれ以上いるようだった。
まずはイルサを探すことが先だ。
何が起きているにせよ、きっと俺には関係ない。
少なくとも、そのときの彼はそう思っていた。
二階へ続く階段の一つに向かおうとした、そのときだった。
絶え間なく響いていた室内のざわめきが、突然ぴたりと止んだ。
ルチアーノは驚いて足を止めた。
その場にいた人々が、一人、また一人と、同じ場所へ視線を向けていく。
興味を引かれた彼も、そちらを見た。
そこにいたのは――
二階に、彼が探しに来た人物がいた。
イルサだった。
二人の視線が交わる。
彼女はいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべ、軽く手を振って挨拶した。
「やあ……」
ルチアーノも、いつもと変わらない表情のまま、手を上げて応えた。
イルサの隣には、ノートらしきものを手にしたミカが立っていた。いつもどおり高慢な眼差しを、階下に集まった人々へと向けている。
どうやら、イルサと話すのは後になりそうだ。
そう結論づけると、ルチアーノは疲れたように長いため息をついた。
できることなら、用事はさっさと済ませてしまいたかった。
だが、まあ、待つしかなさそうだ。
一方、イルサは二階の手すりに両手を置き、集まった人々を見渡した。
彼女の表情が変わる。
いつもの悪戯っぽい笑みは消え、代わりに落ち着いた、大人びた表情が浮かんでいた。
「昨日もお話ししたとおり……!」
彼女の声が、広間いっぱいに響き渡った。
ルチアーノは、彼女をよく見ようと少しだけ顔を上げた。
「……皆さんをムエルガルへ歓迎します!」
イルサの言葉に、集まった人々の間で反応が起こった。
一方、ルチアーノは周囲を見回した。
自分の左右にいる人々は、昨日やって来た者たちの一部だった。イルサが自分たちと同じ世代の異邦人だと説明していた、あの人々である。
ああ……なるほど、そういうことか。
つまり、この人混みは偶然集まったわけではなかったのだ。
イルサが、新しくやって来た者たちを呼び集めていたのである。
「今、ここから皆さんの冒険が始まります……ムエルガルでの、皆さん自身の物語が」
彼女は一度言葉を切り、それから続けた。
「そして、その道のりは決して平坦なものではないかもしれません。皆さんは、これから数多くの経験をすることになるでしょう。楽しいこともあれば、とても悲しいこともあるはずです。さらには、想像している以上に困難な経験をすることさえあるかもしれません」
彼女の表情は穏やかなままだった。
「ですが……」
イルサは言葉を止めた。
ほんの短い間だったが、その場にいる全員の意識を引きつけるには十分な沈黙だった。
ルチアーノもまた、彼女を見つめていた。
ここまで来て、彼は認めざるを得なかった。
あんなふうに話すイルサは、壇上に立つ姿がとても様になっている。
彼女には、何か普段とは違うものがあった。
イルサは強い人間だった。声を荒らげることなく、周囲に権威を感じさせることのできる人物だった。
ルチアーノにも、それが伝わってきた。
彼女の声の調子、立ち姿、そして一つ一つの言葉を口にするその様子。そのすべてが、広間全体に広がっていくような確かな自信を感じさせていた。
感情が豊かな人間だとは思っていない彼でさえ、その演説の影響を感じ取ることができた。
不思議なものだった。
彼女と知り合ってから、まだほんの数時間しか経っていない。それまでのルチアーノにとって、イルサはどこか気楽な性格で、時には少し間の抜けたところさえある人物だった。
だが、今見せている彼女の一面は、それとはまったく異なっていた。
先ほどの会話で自分をからかっていた人物と、同じ人間には思えない。
いや、そうでもないのかもしれない。
もしかすると、その両方がイルサという人間なのだろう。
いずれにせよ、彼女があのように振る舞う姿を見たことで、ルチアーノの中で彼女に対する評価は少し変わった。
彼の目には、ギルド長である彼女が、素直に尊敬できる人物として映っていた。
もっとも、それを口に出すつもりはなかったが。
「やっぱり、ギルド長なんだよな……」
ルチアーノは、まだ驚きを隠せない様子でそう呟いた。




