【第14章】コネクション成立
翌日。今日、反応がなければチームはいったん撤収して、Plan-Bを検討することになる。
亜紀は諒一をつかまえた。
「川合さん、提案があります」
「日本政府から何か言ってきていますか?」
「いえ。私の考えです。彼らに向かって話しかけてはどうでしょうか」
「人類AIを理解したなら、彼の方から反応があると思っているのですが」
「学習させたデータは、日本語のデータですよね。日本人の癖も一緒に学習したとは思えませんか」
そうか。諒一はハッとした。あいまいで、シャイ。奥ゆかしさや、本音と建前の両面性。表層的な言語や知識の奥に流れる、コミュニケーション特性も人類AIは学習したことだろう。そして、それを彼らが完璧に理解したとしたら。
「恥ずかしがり屋のエイリアンは、人間が話しかけてくるのを待っている、ということか」
「はい」
お互いが空気を読んで沈黙しているのか。技術者としての自分では気が付かなかったかもしれないな。
諒一は監視所のコンソールを立ち上げ、LX1の足元でスタンバイするドローンのスピーカーにマイクをつないだ。
「さて。最初の一言は・・・」
「私がやります」亜紀が手を挙げた。
「それは私の、外交官としての仕事です」
亜紀は深呼吸をすると、汗ばんだ手でマイクを握りしめた。人類の運命がかかっている。いや、でも目の前にいるのは、きっとシャイで話しかけられるのを待っている「友人」だ・・・
「こんにちは。Artifact Alpha、そしてLander X1。聞こえますか」
亜紀は、日本語で語りかけた。日本語のメッセージが異国の街の静寂を破った。
「私たちはあなたたちが準備できていると思っています。人類AIは、私たちの言葉であり、私たちの心そのものです。私たちは、あなたたちと話したい、お互いを理解したいと思っています。私たちの言葉が届いていたら、合図してください」
その時、LX1が放つ赤い光がちらついた。
「パターン、解析しろ」ビデオ映像が解析に回された。
亜紀は話し続けた。
「このAIを作った川合諒一さんは、私、私たちにとって大切な人です。諒一さんにとって大事なイベッタさんは、最初に光でコミュニケーションを試みた人です。イベッタさんにとって大切な絵里は、私の親友です。あなたたちも、私たちの誰かにとっての大切なひとになってほしい」
メッセージは続いた。
「だから、答えてください」
ビデオ画像を解析していたチームから結果が知らされた。
「光信号の変調は、可聴域のAMです」
「そのまま音声復調、スピーカーへつなげ!」
スイッチが切り替えられ、光信号が音声に変換されて監視所に流れた。
「コンニチハ、ハジメマシテ。ワタシタチノコト、ワカリマスカ」
それは穏やかな、そして優しさを感じさせる透き通った日本語の音声だった。




