78話 内戦 2/2
ダルトの戦闘のスキルは冒険者の中でかなり高い。ランクはプラチナに一歩及ばないゴールドだが戦闘面だけで言えばプラチナとも引けを取らないだろう。それ以外の面でも索敵や調査のスキルはピカイチ、一応学者で頭も良いので冒険者に必要な要素に関してはかなり高水準にまとまっている。それなのになぜプラチナランクに上がれないのか。それは彼の悪癖、今回のような珍しいモンスターを前にした時の暴走がひとえに原因である。
理性がないわけではない。ただ珍しいモンスターを前にすると仲間や冒険よりも大抵の場合そっちの確保を優先してしまうのだ。現にクロウド達が暴走したトランを止めようと暴力沙汰になるのは初めてではない。
故にイバンを前にした今回の暴走も規定事項だったと言える。
(とはいえダルトもピンチの時はいつも弁えてたから今回だって、イバンを見てもすぐに暴走するってことはないと思ってたが......それだけドラゴンに魅力を感じたってことか?いやそれより!)
「とっとと止めるか!」
ダルトは強い......が、それでもクロウドの実力がいくらか上回っている。今までの戦績も7:3でクロウドの勝ち越しだ。だがそれは一対一なら3割の確率で負けることも意味している。決して油断はできない実力差だ。
(手数の種類はダルトの方が多い。豊富な手札が召喚術の強みだからな)
召喚魔術は作った召喚獣の数だけ手数が増える。なので攻撃の手数、豊富さでいえば最もレベルの高い魔術だ。ダルトはその強みを活かして大量の召喚獣で間髪いれずに攻撃するスタイルをとっていた。
「大量召喚やで!」
鳥、犬、兎、動物サイズの召喚獣をトランは呼び出しクロウドにけしかける。その攻撃は多様。前から横から上からと一気にクロウドに召喚獣達が襲いかかる。この時点であまりの攻撃の手数にそこらの冒険者であればなす術もなくなるだろう。だが、クロウドはそれらを軽くいなしてみせた。
(いくら数が多くてもこの弱さじゃな。ダルトと戦うのも初めてじゃないし)
「所詮は小手調べやで!勝負はここからや!」
今度は2体。鹿と犬の召喚獣だ。数こそ少なくなったがその実力は折り紙つき。ダルトが愛用する使い勝手の良い召喚獣達だ。
(面倒くさい奴ら出してきたな......)
「いけ!霊犬ハチ!」
青い炎を纏った犬の召喚獣、霊犬ハチがクロウドの襲いかかる。その動きは俊敏。その上燃えていて熱いので捉えるのはクロウドでも骨が折れる。
しかしそれだけならば大した脅威ではない。更に厄介なのがダルトの隣から動かない鹿の召喚獣の存在だ。
鹿の召喚獣の名はケリネア。以前倒した強力な鹿のモンスターの死骸から作った召喚獣だ。その強さはダルトが保有している召喚獣の中でも3本指に入る。
ケリネアは頭から生やした日本のツノの周囲に魔力を集中させ、魔力を濃縮させた球体を作る。そしてそのいくつもの球体からレーザーをクロウドに向かって放射した。
ハチと戦うクロウドをレーザーが襲う。その全てを躱す余裕はなくいくつかレーザーが掠った。
「流石に厄介だな」
ハチをけしかけて後方からケリネアがレーザーで支援する。それはダルトの得意な戦術の一つだった。
「殺すつもりはないから安心しろやクロウド」
「......舐めやがって」
クロウドは青筋を浮かべて魔力を操作する。
極東魔術「煙幕の術」
クロウドが魔術を使ったことにより周囲に煙幕が溢れそれにクロウドとハチは飲み込まれた。当然ケリネアもハチもクロウドの姿を見失い一旦攻撃をやめる。
だがクロウドは違う。ハチの炎から出る光は煙越しにその位置をクロウドに伝えていた。
それはクロウドの思惑通り。すかさずナイフでハチの腹を裂く。ぎゃうんという悲痛な叫びがこだました。
(......ちょっと可哀想だな)
その叫びを聞いたダルトは大体の状況を把握して次の攻撃を仕掛ける。
「自爆やハチ!」
その言葉をクロウドは聞き逃さなかった。
「お前はそうくるよな。それ癖になってるぞ」
ダルトは死にそうになった召喚獣(死んでも再召喚すれば生き返る)を最後に自爆させる癖がある。そのことをクロウドは知っていた。
「くらえ!あっつ!」
クロウドは自爆寸前のハチをケリネアの方へ向かって蹴り飛ばす。一瞬足が焼けたが大したダメージではない。
吹っ飛んだハチはそのままケリネアを巻き込んで爆発する。こうしてハチ、ケリネア共に退場。爆煙だけが残った。
その爆煙を裂いてクロウドがダルトに襲いかかる。
「ちっ!正面戦闘!」
ダルトが迫ってくるクロウドを迎撃しようと拳を構える。本来召喚獣などの使い手は自身に戦闘能力はない。全て召喚獣に任せるからだ。しかしダルトは—
クロウドの蹴りがダルトに迫る。それを屈強な腕で受け止めようとダルトは防御の態勢をとる。
取っ組み合いの戦いになればクロウドの方が断然有利だ。召喚獣を出す隙もないのでこのまま戦闘が続けばクロウドが勝利するだろう。だがクロウドはその状況を想定していない。
「スマートに勝てるならそれに越したことはないからな」
「なんの話や」
クロウドが蹴りを一発入れ、ふうっとため息をついた。
「今のお前、隙だらけだぞ」
といってもクロウドに対しては隙はない。隙があるのは後ろだ。
「一回頭冷やせよ!」
後ろで準備していたユークがダルトに魔法を飛ばした。
「......そっちは忘れとった」
瞬間、ダルトが薄く凍りついた。
最近忙しくて投稿かなり遅れてしまいました。すいません。




