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ボロボロ王子とイライラ嬢さん

「これが・・・レディーシャーロット、かい?」



「はい、娘です。」



40代ほどの男性の問いかけに、父が答える。


この男性は、チャールズ王子の親族の方らしい。

以前、家庭教師のハロルドに名前を教えてもらっていたが、興味が無いので覚えていない。




「はじめまして、私はアーロン。

王子と一緒に一ヶ月間、世話になる予定だよ。よろしく。」




そう言うと、彼は手を差し出した。

彼の表情は先ほどと変わらず、少し困惑顔である。

私は内心悪態をつきながら私も手を出し、握手をした。




「お初にお目にかかります。シャーロット・グレース・ヒルトンです。

よろしくお願いします、アーロン様。」



「うむ。ほら、チャールズも挨拶しなさい?」




かなりの内気なのか、なかなか挨拶をしようとしない。

何故こんなにも内向的なのか。

ゲームの彼と違いすぎて、正直ギャップについていけない。




「・・・チャールズ、です。」




アーロンの背中に隠れながら挨拶をする。

王子の癖にまともな教育を受けていないのだろうか。


まあ、私も最近教育を受け始めた身だが。体感的には。




「チャールズ、彼女は婚約者なのだから仲良くするんだぞ。」


「・・・うん。分かったよ。」




仲良く、・・・・ねえ。


いきなりの婚約。

いきなりのお泊まり。

いきなりの訪問。


正直言って、こんな常識の無い彼らと仲良くは出来そうにない。

まあ、自分より身分が上の人たちだから仕方はないのだけれど。


というか、さっきからのその困惑顔は何なのか。

とてつもない嫌悪感だ。

これがクララみたいな超美少女の困惑顔なら美味しいのに。




「・・・本日はどうなさいますか。」


「そうだねぇ、初日だしねえ。

うーん、じゃあヒルトン卿。チェスの相手を頼めるかな?」


「分かりました。」



そのような会話をしながら、父とアーロンはどこかへ行ってしまった。

いやいやいやいや、王子をおいて行かないでよ。

会ったばかりだよ?超気まずい。相手超だんまり王子だし。



そうして呆然としていると、近くに居たメイドが口を開いた。




「お嬢様、この一ヶ月間は基本チャールズ様とお二人で一緒に行動して下さい。」


「は?」


「・・・アーロン様のご指示です。」




そう言うと、私と王子はとある広い部屋に連れていかれた。

私が入ったことの無い部屋だ。

まあ、この屋敷の部屋数は多すぎて、ほとんどの部屋に入ったことないのだが。


その部屋には、十分すぎる家具や玩具が揃っていた。

そこには、キングサイズで天蓋付きのベッドもおいてある。



「ここで一ヶ月間、過ごして下さい。

また、基本的に食事や入浴、またその他の用事以外では私たち使用人は立ち入りません。」



「は!?」



「二人きりで、仲を深めてくださいませ。」



そう言うとメイドは、部屋から出て行ってしまった。



本当にありえないだろう。いきなりここで二人きりで生活しろ、と?

このベッドの大きさからして、眠るときも一緒なのだろう。


やめてくれ。勘弁してくれ。

私は人が近くに居たら眠れない質なんだ。不眠症になるわ。

そうでなくても、この貴族社会で結婚前の男女が一緒に眠るなんて。

日本ならあり得る話だが、この世界観では普通あり得ない話だろう。



・・・兎にも角にも、ここから一ヶ月は一緒に過ごさないといけないらしい。

とりあえず、怯えまくって何も話さない王子に話しかけてみる。




「あはは、何か変なことになってしまいましたね。」



「・・・。」



「大丈夫ですか、チャールズ様・・・?」




彼は、本当に怯えているようだ。

それが、この突然の状況に対してではないことが彼の反応から分かる。



私に怯えているようだ、この王子様は。



解せない。

私は何もしていないのに。実に不愉快である。




「チャールズ様、・・・何故、私に怯えているんですか?」


「・・・え!?う、そ、その・・・・」




私は、少しイラッとしていたのもあり、少し不機嫌顔で王子に問いかける。

一応、悪役令嬢のシャーロットの不機嫌顔だ。

それなりの威圧感と恐怖を与えることが出来るだろう。


そうする、彼は下を向き、涙目になる。

そして、体感30分ぶりに口を開いた。





「だって、根暗と、ちがうからっ・・・・」





ボロボロ涙をこぼす王子は、私を睨みつけてそう言ったのだった。




百合・・・ない・・・

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