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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマス事変
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寝坊した信次(信次目線)

 それから僕は勉強を始めた。目標が明確になると、目も頭も冴え渡る。

 本当は兄貴だって、双極性障害の治療の為に休んだ方がいいし、亜美も糖尿病で、今の仕事量は厳しいはずなんだ。

 でも、家族の為に、2人とも頑張ってる。文句なんて、聞いた事ない。

 せめて無理しなくてもいいように、僕が3本目の柱にならなきゃ。出来るだけ、早く。


 よし、参考書一冊終わり。集中すると、やっぱり早いね。

 亜美の様子を見に行こうかな。寝てるといいんだけど。

 僕はこっそり、亜美達の部屋に入った。


 良かった。亜美は気持ちよさそうに眠っている。

 兄貴が居なくても眠れるくらい、酔いが回っていたんだろう。

 頑張るとこは亜美の良いとこだけど、冷静に物事を考えて欲しいよね。


 んで、兄貴はまだ帰って来ないなあ。もう2時間は経つ。

 瀬尾家まで徒歩5分も掛からないのに。

 連絡も来てないから、海里は緊急外来に行く程ではないんだろうけど心配だなあ。

 いいや、それならそれで勉強しなきゃ。飛び級試験の後は大学入試も待ってる。いくら勉強しても足りないくらいだ。

 兄貴、休みだったのにありがとね。


 コーヒーでも淹れようかな。もう少し起きてたいし。

 と、コポコポコーヒーを淹れてたら、声が聞こえてきた。


「ただいまー」

「おかえりなさい。お疲れ様」

「あ、そのコーヒー先に貰ってもいいか?」

「うん。すぐ淹れるから待っててね」


 兄貴、なんか疲れてるなあ。海里1人を診ただけのはずなのに。

 起き抜けにも飲んだコーヒーを、また飲みたがるくらいだし。


「お待たせ。なんか疲れてるね」

「ああ、瀬尾家が全滅してたからな」

「え、皆風邪ひいてたの?」

「そ。皆風邪で良かったけどな。熱下がらなかったら、明日病院に来るよう言っといた」


 瀬尾家全員か。海里に海里のお父さんにお母さん、お姉さんに妹さんに。そりゃ疲れるよね。


「今日はありがとね。僕の我儘だったのに」

「俺も心配になったしな。海里くん勉強してたから、止めるのが1番疲れたかも」

「海里、頑張りすぎ」

「瀬尾家全員に簡易的な氷枕作って、看病もしてきたから今日は大丈夫」


 サラッと言ってるけど、診察よりそっちの方が大変だったんじゃあ?

 兄貴はコーヒーを一気に飲み干し、お風呂に入っていった。

 僕もいつかは兄貴のように、人を助けられる医者になりたいな。

 その為にも、勉強頑張らなきゃ。僕の夢だから。

 僕はもう一度、コーヒーを淹れた。


 ◇


 リビングでのんびりコーヒーを飲んでいると、兄貴がお風呂から出て来た。

 今は22時。兄貴も寝る時間だね。


「そう言えば、信次の勉強も見てやらないとな」

「クリスマス明け、落ち着いた頃お願いね」

「今年の正月休みは、そのまま年末年始になりそうだし、そのくらいに見てやるよ」

「ありがとね。僕、頑張るよ」

「じゃあ、俺はもう寝るな。信次も無理すんなよ。おやすみ」

「おやすみ、兄貴」


 兄貴が部屋に入ると同時に、僕はコーヒーを飲み終わった。

 あともう少し、勉強頑張るぞ。兄貴みたいな医者になる為の、通過点だ。

 よし、参考書2冊目やるぞ!!


 の前に、ライム見るか。のばらさんから返って来てた。

 『無理はダメですわ。でも、頑張ってくださいまし』か。のばらさんらしい応援に、ちょっと力貰えた。

 ありがとね。頑張るよ。って返して、僕はもう一度机に向かう。


 ◇


「……はっ!」


 しまった。机で寝てしまってた。今何時だ?

 5時45分。完全にやらかした。

 僕は直ぐ部屋を出て、遅れを取り戻そうとしたんだけど……。


「信次、おはよ。洗濯機はもう回してあるよ。朝ご飯も今出来た」

「亜美、ごめんね。寝坊しちゃって」

「夜遅くまで勉強してたもんね。京平も心配してたよ」

「あれ? 亜美、あの後起きたの?」

「京平が部屋に帰って来た時に、ね。京平が覗いてたの気付かなかったでしょ?」


 勉強に集中してて全然気付かなかったや。のばらさんのライムを見た時の僕のニヤケ顔は、見られてないといいな。

 

「という訳で、後15分寝といで。もうやる事ないし」

「洗濯機もそんくらいに終わるもんね。ありがと、亜美」


 亜美も早起き出来るようになった上に、朝の家事を熟せるようになって。成長を感じるよ。

 正直身体の疲れは取り切れて無かったので、僕はアラームを掛けてもう一度寝直した。

 すぐに寝付いた僕は、夢を見た。



「我が名は最強魔王、京平だ。小娘、近う寄れ」

「嫌ですわ! のばらを振った人に、のばらは興味ありませんわ!」

「ならば、我の愛人になるか? 良い暮らしをさせてやるぞ」

「愛人なんかに興味ありませんわ。べーですわ」


 なんだこりゃ? 兄貴が浮気してるわ魔王だわで、のばらさんはのばらさんのままで。

 

「のばらさん、これ助けた方がいいやつ?」

「ふ、来たか。勇者信次よ」

「信次くん、助けてくださいまし!」

「兄貴、その格好ダサいからやめた方がいいよ。亜美が買って来たの?」

「黙れ、我が妃の悪口は許さんぞ」

「亜美ー、兄貴さっき浮気してたよー」


 取り敢えず兄貴がダサすぎて浮気性で魔王という救いの無さは兎も角、のばらさんを助けなきゃね。


「一緒に逃げよ、のばらさん」

「有難うございますわ」

「こら、待て!」

「京平こそ待ちなさい! また浮気したのね! 許さない!」

「ひー!」


 うわあ、兄貴の身体、超ボロボロになってくなあ。浮気しようとした罰だね。

 僕はのばらさんの手を引っ張って、ひたすら走った。


「ここまで来れば大丈夫かな?」

「有難うございますわ。お礼にキスしますわ」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」


ーーピピピッ、ピピッピ。


「なんだ、夢か」


 もう15分経ったみたい。変な夢だったなあ。

 夢でいいからキスしたかったな。


「ふわあ、起きなきゃ」


 僕がリビングに向かうと兄貴も起きていて、食卓に座っていた。


「おはよ、亜美、兄貴」

「おはよ、信次。体調大丈夫か?」

「あ、信次おはよ。洗濯物ならもう干したからね」

「うん大丈夫。まじか、亜美ありがとね」


 良かった。いつもの亜美と兄貴だ。

 やっぱりあれは夢だったみたいだね。

 

「今日は私、頑張ったもんね!」

「本当ありがとね、亜美。助かったよ」

「信次、俺がトイレに起きた時もまだ勉強してたしな。勉強も程々にな」

「うん、今日は早めに寝なきゃ」

「じゃ、ご飯たべよ!」

「「「いただきます」」」


 久々に亜美の朝ご飯食べるなあ。

 鯵の開きに、ほうれん草のお浸しに、お味噌汁。

 亜美が和食作るの珍しい。鯵の開きを焼きながら、お弁当作ったのかな?


「というか、いよいよ明日がプチパーティーだね!」

「帰りに材料買っとくから、兄貴よろしくね」

「おう、任せとけ!」


 兄貴の料理も好きだから楽しみだな。

 2人とも、どんなプレゼント買ったんだろ?


「あー。友達呼んでのパーティー初めてだから、緊張するなあ」

「亜美に友達が出来て良かったよ」

「大切にするんだよ、亜美」


 最近亜美、笑顔が増えたし本当に良かった。

 兄貴とも恋人になれたし、友達も出来たし、亜美の努力が報われたのが嬉しいよ。


「私を皆大切にしてくれてるから、私も大切にしたいな」

「変な事されたらすぐ相談しろよ」

「うん、京平もありがとね」


 というか、今ふと思ったけど、僕バイト続ける意味、もう無いんだよなあ。

 元々は、亜美のライバルをとっちめる為だったのに、僕はそのライバルに惚れるわ、亜美は仲良くなるわ、でね。のばらさん凄いよね。


 どちらにしても、来月からは受験勉強で入れなくなるし、バイトどうしよう。

 のばらさんと会える機会が減るのも嫌だけど、大学に入った後はバイト厳しいだろうしな。

 小暮さんと今日、相談しなきゃだな。


「ごちそうさまでした」

「信次早いね」

「お腹ぺこぺこだったもん」


 さて、朝の支度をして、今日は遅めのスタートだけど、頑張るぞ!

作者「やべ、鼻詰まり。風邪ひきかけたか?」

信次「海里の風邪がうつったのかも」

作者「やべ、寝なきゃ」

京平「薬飲んでさっさと寝るしかないからな、風邪は」

亜美「みんなは風邪ひかないようにね?」

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