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真相、予感、リオ村へ。

 再びアーデルのいる洞窟の地下水脈に降りてきた。水面にアーデルが浮かぶ。その視線の先に、ヒルダとネロ、そして他の魔族もいた。


「ここにネロ村長がいる。それはすなわち、ネロ村長を退けられた……ということですね」

「はい。少し時間はかかりましたが」

 するとネロはおもむろに立ち上がり……


「アーデルハイド村長。ワタシはリオ村の長、名はネロと申します。この度の再三にわたる侵略行為、もはや謝罪の言葉もありません。ですが、改めて謝罪をば……と思い、この地に入りし事お許しください」

「よいのです。ネロ村長。その顔を見ればわかります」

 その言葉を聞くと、ネロは再び座り込んだ。


「……そしてヒルダさん。やはりあなたは、わたしの見込んだ通りでした」

「見込んだ通り……?」

 アーデルの言葉の意味が、いまいち理解できなかった。


「その前にネロ村長。リオ村の現在の様子をお聞かせください」

「ほう?」

「村の長でありながら、その村の長自らがこの村に何度も侵略を試みるほどです。なんらかの事情があるのでは?」

 それを聞いて、ネロは『はっはっは』と膝を打った。


「さすが、アーデル様にはかないませんな。……えぇ、実は深い事情があるのです」

「事情……お嫁さん探しなのだ~?」

「ふ、ならば肝の据わった奴じゃ。……ワラワがおりながら」


 少し黙ってて……ヒルダは心からそう思った。と言うかライザも乗っからなくていい。


「……実は、我々リオ村が今、空中分解の危機に瀕しているのです」

「空中分解?」

 ジャンが振り向く。


「えぇ。リオ村は今、村の者の意見が真っ二つになっておりましてね……ワタシとメリア君を含んだ{王都敵対派}と、村ナンバー2のサーペント族、カイの率いる{王都臣従派}に」

「つまり、王都に付き従うか、敵対するか……そのどっちかに分かれてるのか。魔族も一枚岩じゃないんだな。で、この村の住民を取り入れて、少しでも敵対派の足しにしよう。ってことか」

 ジャンが言うと、ネロは深くうなずいた。


「ワタシに力がないばかりに……不甲斐ないことですな」

 溜息をつくネロを横目に、メリアは不安そうな顔をしている。


「臣従派の動きが急加速したのは、この付近の村……リブラ村が壊滅したことに起因しています」

「!?」

 村が壊滅……!?リブラ村と言う名前はヒルダは聞いたことがないが、壊滅……という事は、それだけ恐ろしい事をしたのだろう。

 洞窟の中を、緊張が支配する。


「偵察に行っていたアンナちゃんの話によれば、村は激しい炎に包まれたように、黒い炭しか残っていなかったとの事」

「{炎獄}の仕業か」

 おそらく、とネロ。


「では、生存者は?」

 アーデルが恐る恐る聞くが、無言で首を横に振るネロで、すべてを察せてしまう。


「あの{炎獄のダグラス}の事です。逃げ惑う魔族も、その斧の餌食としているでしょう。もしくは、子供だけを生存させ、自分の都合のいい{駒}として育てるか」

「駒……?」

 首をひねるヒルダに……


「王都の奴らは、洗脳する薬品を食事に混ぜ使用し、自らの意にそぐわぬ者どもを皆、自らの手駒としておるのじゃ。特に幼子は、その薬品を混ぜられた食事を、何の疑いもなく食うじゃろうな」

 ライザの言葉は、ヒルダの脳を激しくかき乱した。

 食事を使って……洗脳!?

 料理は本来、人を笑顔にするためにある。だが、それが洗脳によるもの……しかもそれを、食事を最も欲している子供たちに行っている……!?

 ……吐き気がする。こんなことが……許されていいはずがない。


「……」

「……?」

 それを言ったライザは、少し遠い目をしていた。


「……じゃあ、カタリーナがやっていたことはなんなんだろう……?」

「カタリーナ?{金嵐のカタリーナ}がどうしたのですか?」

 ネロとメリアに、狩りに行った時の事の話をした。


 ・ ・ ・ ・ ・


「ふむ……それはよくわかりませんな。しかし大方、リブラ村の様子でも見に行っていたのでしょう。そしてついでに腹が減ったから、牛を殺してその肉を食べようとした……違いますかな?」

「……でも、それだとあたしを助けた意味がよくわからなくて……」

「牛を食べるのに恥ずかしかったのでしょう。プライドが高いのが王都の人間なのですからね」

 ……本当にそうなのだろうか?腑に落ちるような、腑に落ちないような……?


[私はママを 傷付けた王都を絶対に許さない これで王都に臣従するなら ここで死んでもいい]

 泣きそうな顔をして、その紙を見せる。


「……ねぇ、ネロ。メリアのお母さんって……」

「えぇ。メリア君の母親、ザラは、米と言う作物の作り方を知っていたが故に王都に拉致され、その後の行方はまったく分かりません。その時のショックから、メリア君は喋ることを拒むようになり、何も言えなくなってしまいました」

「ご……ご……め……」

「大丈夫よ。無理に話さなくても」

 そういうと、メリアは安心したような顔になり、再びヒルダにすり寄った。ヒルダの柔らかい肌に、メリアの髪の毛がふわりふわりとなぞられる。


「ちょっくすぐったいってば」

「まさかメリア君がワタシ以外の人間にこうもなつくとは……あなたは特別な力を持っているようですな」


 シーン………………


「な、なんですかその{嘘だ、絶対なつかれてないね}顔は!?」

 必死に否定するネロ。……いや、否定する辺り逆に怪しい。


「じゃあ、その{お米}って奴で、さっき持ってきた醤油とか、純米酢って奴も作ったんだか?」

「え、えぇ、その通りです」

 米……米があれば、大分料理に幅が広がる。米を主食に、色んなおかずも作れ、栄養バランスもとれるだろう。


「ネロ、米はあとどれくらいある?」

「……苗木も奪われ、残るは村に残るわずかなものしかありません。一応、醤油や酢は多めに作っていたため、まだあまりはありますが……」

「……そう。でも、大丈夫なの?」

 ここでヒルダが、今まで誰も言わなかったことを口走った。


「今ここに{敵対派}の中核であるあんたたち2人がいたら、今リオ村{臣従派}で大変なことになってるんじゃない?」


「……」「……」


 そしてネロ、絶叫。


「本気で考えてなかったの!?例えるなら今、醤油の保管場所とか酢の保管場所とか襲い放題じゃない!?」

「迂闊……迂闊すぎました……!この村とリオ村をひとつにする事だけを考えていたために、そこまで頭が回りませんでした!」

「と、とりあえず急いでリオ村に戻ったほうがいいんじゃない!?醤油とお酢だけでも何とかしないと!」

 あたふたするネロとメリア。しかし普通考える事なんじゃないだろうか……?


「と、とりあえず我々はリオ村に戻ります。それこそもう、大急ぎで!」

 脱兎のごとく駆け出し、洞窟を後にするネロ。


「……」

 不安そうな顔のメリア。


「メリア……?」

 するとメリアはヒルダに抱き着き、すがるようにヒルダを見上げる。


「……」

 正直この村の料理の事だけで手いっぱいなのだが、乗り掛かった舟だ。

 それに、メリアは自分の事を信じている。そのメリアの事を裏切ることは……ヒルダには無理だった。


「メリア君!何をしているんだ!急ぐ」

「ネロ!」

 ヒルダは、ある言葉を伝えた。




 …………そして、3日後。


 まだ朝の陽ざしが昇り切らず、ほの暗い森の中を進む、一つの影。


「……地図だと、もう少しよね」

 ガサガサと草むらをかき分け、奥に進むと……


「曲者~!」

 突然跳びかかってきた、黄色い全身スーツの猿のような女の子。


「うわぁ!」

 派手にヒップアタックで突き飛ばされ、さらに体に馬乗りになられてしまう。


「よ~し、捕まえた!王都の文字通りの犬……お命ちょうだ……あ、あれ?」

「ちょっ苦しい!苦しいから!離れて!」

 ピョインとバック宙して離れる。


「……え?もしかして、ネロ様が言ってたヒルダ殿って……?」

 パタパタと、尻をはたきながら話す。


「う~、そうだけど……」

「うえぇ!?そうだったでござるか!済まぬでござる!拙者、好戦的だからつい……」

 好戦的でもいきなりヒップアタックしてくるだろうか……?それにしてもさっきの動き、かなり身軽だ。


「えっと……とりあえず、これ集めてくれる?」

 地面には、色々と散乱していた。どれも割れてはいないので一安心だが……


「承知!」

 女の子と2人で、それを集め、背負っていたステンレス製の籠にいれる。

 ……さすがに鉄より軽いとはいえ、こうも色々入っていると重い。しかし女の子はシュパシュパと影が見えないほどの動きで集める。


「ふう、これですべてでござるか?」

 お尻の部分だけが赤く塗られたボディースーツの上には、赤い後ろでまとめたシニヨン。そして背が小さい。ビッケより小さい……だろうか?


「ありがとう……って、まぁキミにやられたんだけどね」

「誠に申し訳ないでござる……」

 平身低頭、額を地面に添えた手の上に乗せる女の子。


「あたしはヒルダ。キミは?」

 名を聞くと、ズビ、ズビと、体勢を立て直し、自らの胸に手を添える。


「拙者、名をアンナと申す。ネロ様に頼まれ、ヒルダ殿をお迎えに行くように、と」

「アンナね、よろしく」

 と、握手をした瞬間……


 ぐぎゅるるるるるるる……


「す、すまぬ。拙者でござる……」

「何も食べてないの?」

「そろそろ来るのではないかと、ネロ様がご帰還された3日前の夜からここにきて、口に含むものは水以外何も……」

「真面目!」


 カリッカリッと、キュウリを食べる音がする。

 本来はなにかしらの食材として使えるか?と思って持ってきたものだが……おなかがすきすぎて倒れられても困る。


「美味!美味でござる!」

「マヨネーズ、一応持ってきておいてよかったわ。キュウリはお世辞にも新鮮とは言えないから、濃い味を付けないとね」

 しかし本当においしそうに食べるな……


「う~ん、おいしい!これで3日間はがんばれるでござる!」

「いや燃費いいわね!?」




 しばらく道なき道を、他愛ない話をしながら歩いていると……


「さぁ、見えてきたでござる!」

「!?」

 無数の浮島に橋が架かった、海の上に出来た村……




「ようこそヒルダ殿、拙者たちの、リオ村へ!」

ヴァーゴ村の住民は、今後も登場します。

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