19 三バカの罪状?
レニーがヨシヨシという感じに頭を撫でてくれた。
「フッ、これでわかっただろう。カミーラはお前たちのことは、嫌っているんだからね」
フッ、って? ……あれ? レニーってば、もしかして挑発しているの?
「「「そんなわけあるかー(ないだろう)! お前が彼女を隠すから悪いんじゃないかー!!」」」
三バカの声が揃った。……さすが主従ね。考える事だけでなく、言うことも一緒だなんて。
「別に僕が隠したわけじゃないよ。……というかさ、自分たちの今までの行動を振り返ってみたらどうなの。僕たちはただ、支給された眼鏡をかけていただけだよ。それなのに、辺境の村から来たと馬鹿にして、散々暴言を吐いてくれたよね。それって、僕たちの姿をちゃんと見ようとしなかった証拠じゃないか。見た目や立場で態度を変えるようなやつを、嫌うのは当たり前だろう」
レニーの言葉に三バカは唇を噛みしめて黙り込んだ。
「あー、レイニー。三バカを凹ませるのは、ボクの役目だからさ~。君はカミーラのケアだけしててよ」
ミポルが苦笑気味にレニーに言った。
「わかった。じゃあ、こうしていることにするよ」
レニーはミポルに笑みを返すと椅子に座り直し、私のことを膝の上に横向きに座らせた。
「「「あー! @&#$%」」」
また三バカが叫んでいるけど、「あー」以降が言葉になってないな~。……まあ、どうでもいいんだけどね。……ふふっ。レニーの膝抱っこ~。久しぶりだな~。レニーの体温に包み込まれている感じが、とても安心するのよね~。
「ほら、そこ。騒いでんじゃないよ。次はお前たちのことだからな」
ミポルの言葉に、私も視線を三バカへと向けた。
「お前たちはカミーラとレイニーが学院に着いた時に、国王の命令で二人を出迎えていたよな。想像以上の可愛さに舞い上がって、襲うとした」
……ミポルが不自然に言葉を止めた。私も両脇からの圧力を感じて、冷や汗がでそうになる。レニーが安心させてくれようとしてか、そっと私の手に手を重ねてくれた。
「ゴホン」とミポルはわざとらしく咳ばらいをした。それで、見えない圧力は弱まったのよ。
「あ~、まあ、流石に学院に着いたばかりの二人をどうこうするのは、問題だと思ったのか、事務員がそばに来たから学院長室への案内を任せたようだったけど。だけど翌日に教室に現れた二人が、認識阻害の術式を組み込んだ眼鏡をかけていたことで、前日の姿と違うように見えたから、別人と判断したんだろ。自分たちの思い込みで本来の姿を認識できなかったくせに、二人の容姿が劣っていると不当な貶めを始めた。それがお前ら三人だけでなく、高位貴族の子息令嬢にまで、同じことをするように強要したよね」
ミポルは確認するように言葉を切って、三バカのことを見据えた。三人は顔色を悪くしたけど、何も言おうとしなかった。
……でも先ほど、ミポルの言葉の途中で「認識阻害?!」と、おおバカが声をあげていたよね。やっと合点がいったのか、目を見開いて喜ぼうとして、続きのミポルの言葉に顔色を悪くするって……。
前々から思っていたけど、この三人って成績と判断力があっていない気がするんだけど。この三人よりジョシュやミルキア様のほうが、よっぽど世情のことなどをわかっていらっしゃるわ。
私とレニーは精霊たちのおかげでいい成績を残せたのよ。といっても試験中に答えを教えてくれるような、不正なことはしてないわよ。
私とレニーは、とにかく村の外のことを知らなさ過ぎたから、精霊たちがおしゃべりの中で、王都で何が流行っているか、から、各国の情勢を細かく教えてくれたのね。最初はよその国ではそんな事件があったんだ、とか、あの国とこの国は少し緊迫した情勢なんだと、思ったりしただけよ。
それがいろいろな授業の中で……というか、ファッションの授業があったことには驚いたのよ。流行というのは変わっていくもので、それでも数年ごとに似たようなものが流行るなんて教わった時には驚いたわ。あと、自国の歴史だけでなく各国の歴史も学ぶとか、現在の各国の情勢の授業があったりもしてね……。
ああ、いけない。また余計なことを考えていたわ。え~と、そう! 私とレニーの成績が良かったのは、精霊たちのおしゃべりのおかげといいたかっただけなのよ。本当にみんなには感謝だわ。
◇-◇
「あれ、ちょっと待って。ねえミポル、三人は国王の命令で私とレニーを襲うとしたんでしょ。『精霊の加護を与えられた者』を痛めつけようだなんて、精霊からの報復を考えなかったのかしら」
私は疑問を口にしただけなのに、何故か生温かい視線をみんなから向けられた。
「あのさ、カミーラ、襲うってそういう意味じゃないんだよ」
ミポルが諭すように言ってきた。痛めつける以外に人を襲うって……。
「ハッ! もしかして攫うつもりだったの! ……でも、攫っていってどうするの?」
首を傾げながら立って話をしているミポルのことを見上げたの。
「そりゃー、かわいがるに決まっているだろう」
「かわいがる? えっ、やだ、気持ち悪い」
人形みたいに着飾らせてそばに置くつもりなのかと、想像して気分が悪くなる。
「カミーラ、何を想像したのか知らないけど、ちょっとずれている気がするんだけど」
「だって、かわいがるんでしょ。着飾らせてそばに置くんじゃないの?」
ミポルとスラミーは顔を見合わせてから、ため息を吐き出した。
「いや、そうじゃなくて……えーと、そういうことも含めるけど……子供を作る行為をしようと考えていたんだよ」
「えっ! やだー、もっと気持ち悪~い!」