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11 ミポルはミポルで考えているみたい

 ◇-◇


「だ~か~ら~、わざわざ認識阻害に~、しなくても~、大丈夫~、なの~」


 ミポルは軽く頬を膨らませながら言った。……かわいいけど、説明になってないよ、ミポル。


 そんなことを考えたのを見透かしたように、ミポルが笑った。


「もう~、カミーラは~。もう少し~、ボクのことを~、信用してよ~」

「信用できないから言っているでしょう。ここに来るまでのあれを見て、どう信用できるっていうのよー」


 怒り口調でそう言ったら、ミポルはニシシッといたずらっぽく笑った。


「だって~、もう~、ほんとうに~、必要~、ないんだよ~。なぜなら~、カミーラもレイニーも~、帰るんだからさ」

「帰る……そんなことは勝手に出来ないんだよ、ミポル」


 ミポルの言葉にレニーが諭すように話しかけた。


「レイニーが言いたいのは~、約束(・・)があるから~、ってことなんでしょう~。それもね~、大丈夫だよ~」

「大丈夫じゃないってば。本当にミポルは余計なことをしてくれたんだから! この後、なんで首脳陣と話し合いをするわけ? あの三バカも来させるのよね。ついでにアホもでしょ。ただでさえ仕事が溜まって、卒業式に出られるかどうかだって云うのに、厄介ごとを増やさないでよ」


 私の文句にミポルは目を大きく見開いて驚いた顔をした。


「えっ? 卒業式? もしかして~、カミーラは~、出たいの?」

「もちろんよ! この一年はほとんど学院に行けなかったけど、ミルキア様と一緒に卒業しましょうねって、約束しているのよ」


 そう答えたらミポルは困ったような顔をした。


「え~、約束か~。……でも~、こっちのほうが~、先なわけだし~。……でも~、カミーラの希望なわけだし~」


 意味が解らないことをブツブツと呟きだしたミポル。そうしたら、レニーが私の手を握ってきた。


「三バカってカミーラが言うってことは、彼らにまた絡まれたの? 大丈夫かい。怪我とかしてないかい?」


 レニーは心配そうに私の目を覗き込んだ後、服などに覆われていない、手や顔を真剣な顔で見てきた。どこにも怪我をしている様子が見られなくて、ホッとした表情を浮かべた。


「大丈夫よ、レニー。怪我はしてないわ。いつもの罵倒をされただけよ」

「罵倒って……。ごめん。そんな時にそばに居てあげられなかったなんて」

「いいのよ、レニー。辛いわけではないしね。それよりも、私の素顔を見た反応が、揃いも揃って同じようでね。さすが三バカと思ったわ」

「それなんだけど、何があったのか話してくれないかい? この後首脳陣との話し合いに、僕も居たほうがいいんだろう」


 視線をミポルに向けてレニーは言った。


「あ~、うん。そうなんだ~。……え~と、ボクは~、二人のためを思ったんだけど、どうやら少~し二人と、話し合いが足りなかったみたいだ。だから、ちょっと、対策を練りたいから、カミーラから、話を聞いてくれるかな」


 ミポルは視線を私に向けると謝ってきた。


「ごめんよ、カミーラ。どうやらボクは、期日が来ることが嬉しくて、浮かれすぎたみたいだ。二人にとって、悪いようにはしないから、ね」

「うん。私も怒ってごめんね。ミポルはいつも、私とレニーのことを考えてくれているものね。そこは信頼しているから。でも、私達のために無茶はしないでね」

「無茶なんてしないよ。大丈夫。ちょっと大事(おおごと)にしちゃうけど、ちゃんと良いほうに、するからね」


 にこりとミポルは笑うと、スラミーと共に窓のほうへと移動をした。どうやら二人で対策会議をするみたいだ。私はレニーへと視線を移したら、目が合ったレニーは肩を竦めてから言った。


「座って話そうか」

「そうね。でもその前に、レニーは朝ご飯を食べたの?」

「え~と……まだ、だけど」

「食べに行く?」

「いや、やめておくよ。僕のことでまで騒ぎになるなんて、嫌だもの」


 でも、それだとレニーは朝ご飯抜きということになってしまう。私は備え付けのミニキッチンのところに行くとお湯を沸かしてお茶の支度をすることにした。それから、この前二人で買ってきたクッキーがあったはずと、棚の中を探して取り出した。


「あ~、カミーラ。大丈夫よ~。ジョシュに~、持ってきて~と~、頼んであるから~」


 私の様子に気がついた、スラミーが言った。わかったと、頷いて合図をしたら、スラミーはすぐに窓のほうを向いてしまった。それならと、ジョシュの分もカップを出しておくことにした。


 二人分のお茶を入れて、残りのお湯は保温ポットへと入れておく。隅のソファーに座ると、何故かレニーが隣に座ってきた。一応お皿に出してみたクッキーに手を伸ばしたレニー。やはりお腹がすいていたのね。


「カミーラ、それじゃあ何があったのか、話してね」


 にこりと笑って聞いてきたレニーに、私は掻いつまんで事情を話したのでした。


 ◇-◇


「ふう~ん、つまり食堂で馬鹿一号こと、ディクソン・ラザクレアに絡まれて、ついでにチャラ男のテイト・ダブリンにも言い寄られかけた、と。廊下に出たら、追いかけてきたアホ共のせいで、莫迦二号のラキア・クラルスにも絡まれることになり、庭園を抜けて研究棟に来ようとしたら、おおバカ三号のゲイル第二王子にも言いがかり的に、言い寄られそうになって、アホで魔術師団長の息子のシラン・ドワイトが無理やり障壁(まほう)を解除して、騎士団長も暴言を言ったんだね。それをミポルがお仕置きをして、他の諸々のことを含めて、このあとお話合いをすることになったんだ」


 ……えーと、レニー。笑顔がとっても怖いんだけど~。


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