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25章 弟の想い

少し長めかもしれません。

「ねえ、陸斗くん」

「なあに?」

私はいま、中村さんの家にいた。そして、美味しい夕食をいただいて、お風呂に入って、リビングで陸斗くんと2人きりになっているところだった。

「陸斗くんは、中村さんのことをどう思っているの?」

「それはつまりお姉ちゃんの事?」

「そうだよ」

「うーん、そうだなぁ……」

しばらく間が空いたあと、陸斗くんは話し始めた。

「僕はね、お姉ちゃんのことが少しうらやましいんだ。だって、僕にはないような不思議な力を使えるから。お母さんに似たからね」

色々理解が追いつかない。

「……どういうこと?」

「実は、僕達のお母さんは人間じゃないんだ」

「えっ⁉︎ ……それって本当?」

「そんなことで嘘ついてどうするの?ほんとのことだよ。僕達のお母さんは、「あいの国」って言うところから来たんだ」

「間の国?」

「そう、間の国。そこは妖怪たちや、死の国に行けなかった魂たちや、その子供たちが住んでいる国なんだ。他にも、姿は人間だけど魔法や不思議な力が使えるような人とかね。お母さんみたいに」

「そんな国があるんだね。お母さんはそこの出身なの?」

「そうだよ。お母さんは、生まれも育ちもそこなんだ。そこで生まれた人は、大人になるまでそこから出られないって言うルールがあるんだって。お母さんは好奇心旺盛だったから、早く人間の世界に行きたくてたまらなかったんだって。そして大人になって、初めて人間の世界に来た時、何もわからなかったお母さんに、人間の世界のいろんなことを教えてくれたのがお父さんだったんだ。やがて2人は惹かれあい、結婚することになったんだ。やがて生まれたのが、お姉ちゃんと僕だった。お姉ちゃんはお母さんの血を強く引いていて、お母さんみたいな不思議な力を持っているんだ。ただ、その代償に目が見えないんだけどね。性格はお父さんに似たよ。僕はお父さんの血を強く引いてるからか、霊感がある位でそんな不思議な力を持っていないんだ。でも性格はお母さんに似てるって言われるなぁ」

「そうなんだ」

「僕は少し、お姉ちゃんがうらやましい。そういう力が使えるのが、いいなぁって思うことがある。でも、お姉ちゃんはほんの少し損をしているのかなって思うこともあるんだ」

「え?なんで?」

「だって……お姉ちゃんは目が見えないもの。ほら、外を見てごらんよ」

私がカーテンを開けると、今日は天気がいいのか、星が綺麗に見えた。

「綺麗な星だね」

「でしょ?だけど、お姉ちゃんはその景色を見れないんだよ」

私ははっとした。

そうだ。いくら不思議な力があって触れたものは目に見えるとしても、この星空には触れることはできない。つまり、この星空は見ることはできない。いや、それだけではない。

「綺麗な空も、僕たちが住んでいるこの街並みも、草原だって、お姉ちゃんはみることが出来ないんだ。きっと、一生」

「……そうだね」

「だから、こんなに綺麗なものを見れない、いつも過ごしている街を見れない、そういうのって……少し損をしているのかもって」

「……確かに、そうかもね」

少し迷って、私は言った。

「ねぇ……聡美さんのことは、どう思っているの?」

「……知ってるの?聡美お姉ちゃんのこと……」

「うん……この間、夢の中で会ったの」

「そっか……」

しばらくの沈黙。

「……聡美お姉ちゃんは、お父さんの血とお母さんの血をちょうど半分ずつぐらい引いた人だった。お母さんやお姉ちゃん — あっこお姉ちゃんほどじゃないけど、少し不思議な力が使えて、霊感があった。性格はお父さん似だった。少しだけ不思議な力を使える代償だったのかなぁ、聡美お姉ちゃんは病弱だった。そして、聡美お姉ちゃんは、人の病気は治せても、自分の病気は治せなかった」

少し悲しげな顔で、陸斗くんは話してくれた。

「一昨年、聡美お姉ちゃんは気管支炎にかかって、そのまま肺炎に悪化したんだ」

陸斗くんは窓の外の星空を見つめ、話し続ける。

「それで、そのまま聡美お姉ちゃんは、死んでしまったんだ。それを看取ったのは、あっこお姉ちゃんだけだった」

「……そっか」

「でも、聡美お姉ちゃんも、あっこお姉ちゃんも、僕も、みんな同じように幸せなんだと思う。同じように、恵まれているんだと思う」

「……そっか。教えてくれて、ありがとう」

「いえいえ!お話しできて、楽しかったよ」

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