カズトとカスハラ
その時だ。遠くからサイレン音がして、次第に近づいてくる。
「ウーオン・ウーオン・ウーオン」
パトカーのような赤色灯を点滅させ、
警告音を鳴らしながらヒト型AIロボット店長カズトが近づいてきた。
光と音の派手なエレクトリカルパレードで、
店内100名近いすべてのお客様の注目がカズトに集まる。
「そちらのA3番卓のカップルのお客さま。サイタマケン迷惑防止条例に抵触している行動が散見されましたのでこの店よりの退店を勧告いたします」
カズトはハッキリと言った。
「ハァ~。なんじゃおまえ」
「店長のカズトと申します」
「店長? ロボットが? この店大丈夫? 人間の責任者呼んでくれる?」
カズトは相手のペースに乗らないように話を始めた。
「お客様の行動はこちらのホバーパイルダーから撮影されたドローンカメラですべて記録されております」
「それでは、お客様の問題行動を具体的に述べさせていただきます」
「1. 最初に間違って提供した商品が来て、すぐあなたは従業員を呼びました。5分もたっておりません。
それに飛沫が飛んだから自分らによこせと言いました。
2. トクトクオトクセットにそちらの女性の髪の毛を入れました。
それをサービスしろと脅迫しました。
3. ビールの泡はしっかりついたものを提供しています。
唐揚げの中心温度は85℃以上です。
4. 生中2つタダで持ってこいと脅しました。
5. 自分らは有名トライ系YouTuberで、これらのことを拡散すると脅しました。
納得いかないとおっしゃるのでしたら、只今よりここで今回のお客様の問題行動の上映会を開催いたします」
クレーマーの2人は、ぼそぼそと小声で相談を始めた。
――分が悪いのを感じているようだ。
「ただいまより退店していただければ、とくに問題にはしません」
カズトはまたハッキリと言い放った。
ぼそぼそ相談していた2人だが、女性の方が「もういいよ」と切れ気味に相手の男性に毒づいた。
すると、クレーマーの男性が立ち上がりながら言葉を吐いた。
「出て行ってやるけどな。完全にプライバシーの侵害だからな。
訴えてやる。あんたらもこの店気をつけた方がいいで。
プライベートの会話を録音されているなんて犯罪だ。
皆さんも気をつけた方がいい」
取り巻きの、オーディエンスである他のお客様たちにもアピールをした。
「この機能は問題行動の発生可能性を感じられるお客様だけに発動し、すべての記録はクレーム対応以外で使われることはありません。
入口の当店ご利用時の注意事項の看板に明記させて頂いております」
2名の男女はみなを聞き終わるまでもなく、退店していった。
咄嗟に、カズトの4輪がフルスロットルになった。
「お会計8948円を払っていただきまーす」
猛スピードで2人を追走した。




