実習
(学校だから国語、算数、社会と言った座学も有る)
(貴族ならある程度の知識が必要よね)
(うん。だけど傍から見たら退屈な時間だよね。恥辱に顔を歪める女教師が居たりするならともかく……)
(……殴られたいの?)
(だ、だから、座学は飛ばしちゃうって話さ!)
「いいか! ダンジョンは危険な場所だ! 絶対に気を抜かないように!」
教師の訓辞に学生達は「はいっ」と返事した。いよいよダンジョンでの実習が始まる。
学生達は引率教師が灯す魔法の光を頼りにダンジョンを進む。出てくる魔物は大ネズミ。その大ネズミを攻撃魔法で「ファイヤー!」と倒すのが実習の課題だ。
そして学生達は交替で課題をこなし、「楽勝!」「やりぃ!」「余裕ね!」と口々に感想を漏らす。ナーシュを除いて。
「ぐぬぬ……」
ナーシュが唸ろうともこのダンジョンにも設置されているフィールドが過大な魔法力を抑制している。
「気を落とすな。これから頑張れば挽回できる」
「はい……」
教師の慰めの言葉に釈然としないものを感じても、反論する気にもならないナーシュである。
「それじゃ、後ろで少し休め」
「はい……」
ナーシュは列の後ろへと歩く。ところがその途中、「ヒロインを辱めた天罰だ」と言う囁き声と共に突き飛ばされてしまう。
折しも深い谷に架かったようにしている岩の上。ナーシュは足を踏み外して谷底へと真っ逆さまだ。「きゃーっ」と誰かの悲鳴が上がり、喧騒が渦巻く。しかし瞬く間にその喧騒がナーシュには遠くなった。
「マジか……」
谷の底は暗闇で見えない。
(物理的な谷に落としちゃったのね……)
(これで視覚効果ばっちりさ!)
(はいはい。ところで落とした犯人はどうするの?)
(ここではどうにもしないよ。この事件は迷宮入りだから)
(……ガバガバね)
(女の子がガバガバだなんて……、まあ、はしたない!)
(! ぶん殴る!)
(いてっ! 殴ってから言わないで!)




