セシルの受難に終わりはない
20話の後にセシルに襲ったのは受難の連続でした。
「ま、待て…!落ち着け…!」
「え?なにが?落ち着いてるよ?」
「ならその手を下ろせ!!」
やっとセシルとアリシアの関係が進み、幸せそうにアリシアの顔が微笑んだところを見れたセシルは、幸せの絶頂にいた。アリシアとわかれ自分の屋敷についてもなお、身に纏う雰囲気はふわふわしていた。表情はいつもの無なものだったが、長年セシルに仕えてきた使用人たちには手に取るようにわかっていた。
そんなセシルだが、大事なことを忘れている。
そう、自分が生涯の主人とし、仕えているお方のことを…―――。
そのレイハルクは無人だったセシルの部屋で勝手にお茶を優雅に飲んでいた。一瞬事態が把握できなかったがその優秀な頭脳で瞬時に理解したセシルは、背中に冷や汗が流れたのを感じた。
こちらに目を向けたレイハルクの瞳が笑っていないことに気づいたから。
「僕の言いたいことはわかってるよね?」
「……」
「ね?」
「すまん…」
「え?」
「っ不可抗力だ!!!シルヴィアが泣くとは思わなかったんだよ!」
そう、セシルはあの時、シルヴィアを泣かせている。例えシルヴィアがハンカチで顔を隠して見えないようにしたとしても、事実シルヴィアは泣いていたのだ。それを見過ごすレイハルクではない事を、セシルは知り合ってこの方、十二分に理解していた。
やっと振り上げていた手を下ろしたレイハルクだが、瞳は未だ笑っていないままだった。なんとか言い訳を連ね、やっとレイハルクの瞳が閉じられた。
それをみたセシルは大きなため息とともに身体の力全てをソファに預けた。猛獣と闘った後のような疲労がセシルを襲っている。あながち間違いではない。
「理由は聞いてるよ。」
「…そうか。」
「シルヴィアを泣かせていいのは僕だけだっていうのに…。」
「そこか!?お前でも泣かすなよ!!」
「冗談はおいといて、おめでとうセシル。アリシア嬢と付き合ったんだって?」
冗談って…と落ち込んだセシルはその言葉を聞いて顔を上げた。そこには友人の幸せを祝うレイハルクがいた。それをいて小さなため息を溢したセシルは、顔を緩める。
「…ありがとう。」
「友人が幸せそうで、僕も嬉しいよ。だけど…」
「?なんだ?」
「これからシルヴィアがくるって。楽しみだね。」
「…は!?いや、呼ぶなよ!!!」
「存分に嫌味を言われてね?」
「お前まだ怒ってるだろ!?っだからあれは不可抗力だって…!!」
そう会話する二人の部屋の前が段々騒がしくなっていく。最初は遠くから聞こえてきていたものが段々こちらに向かってきていた。それにセシルは顔を引きつらせ、レイハルクは悪戯が成功したかのように笑った。
嵐がくるまであと数秒。
「ふふ、頑張れ?」
「お…っまえ!!」
っバーーーーン!!
勢いよく開いた扉は音を立てて壁にぶち当たった。そしてそこから現れたのは…
「セシル!!!よくも私のアリシアを…!!!!」
「ほんっとうにめんどくさいな、お前らは!!」
セシルの受難はまだまだ続く…――――。




