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六角の花   作者: フミ
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作戦会議と握り飯

腹は決まった そして腹が減った


「時は明朝 夜明け前 まずは腹ごしらえ!」


アキヨリが身をよじらせ袖を振ると

袂から竹の葉に包まれた握り飯がぼとぼと床に落ちた


「まったくいつのまに抜け目の無い人だ」


「全くだ!あーはっはっはっは!」


皆に笑顔が戻った


「食おう!

明朝の段取り話して聞かすから 食いながら聞いてくれ」


握り飯を一つ拾って自分も食べながら

短刀を使って床に野営地の縮図を描きながら

飯粒を皆の顔に飛ばしながら

侵入から脱出まで事を細かく伝え聞かせた


一同感心して聞き入っていたが

ハッタリにハッタリを重ねた奇策と

握り飯をあの短い間に盗んできた抜け目無さに


「この人は侍より大泥棒の才があるのでは無いか」


と幼少よりアキヨリの突飛な言動に振り回され続けて来たタキは訝しんだ


「何か尋ねておくことはあるか?」


アキヨリがそう締めくくると山ほどあった握り飯はすでに無く皆納得した様子だった


「ならば寝る!本日は皆ご苦労

おやすみなさい!」


自分の朱槍を枕にアキヨリはすぐに寝息を立て始めた


「いつもの調子だ!」


「違いない いつもの調子だ」


リヨウの身を案じるあまり取り乱した感が

アキヨリから見て取れたが

段取り良く言いたい事だけ言って皆を置いて行く普段の彼の真骨頂が炸裂して

普通の人間なら不安に駆られるところなのだろうが皆 逆に安堵した


そのお陰で明日は死地に赴く者の心持ちとは程遠い

落ち着き安堵した しかもどこか温かいとも言える心情で皆眠りにつくことが出来た


皆 槍を枕にしたので

口を串刺しにされ日干しにされたししゃものようだった


直様眠りについたアキヨリは夢を見た

リヨウの夢だった

楽しそうにはしゃぐリヨウのその傍らには若い女がいた

どこかで見たことがあるような気がしてならない女だったが

後姿しか見えず誰かは分からず終いだった


「あれはだれだ」


声に出していた

自分の声で目を覚ましたアキヨリは

その夢が特別なもののように思えてならなかった

しかし根拠のないものを極端に嫌う彼は

すぐに思考の外へと夢の事を放り出し

付き纏う眠気でぼやける脳と体の繋がりを辿りながら起き上がり

祠の出入り口の引き戸に手をかけた

戸を開け夜空を見上げると夜明け間近の星座が瞬きアキヨリを急かした


「起きてくれ みんな 俺の槍を返してくれよ」


皆眠りの深いところから引っ張り上げられはしたが

戯けたアキヨリの声を聞き

また目覚めも楽しい気分で迎えられ

戦に望む心構えとは程遠かったが

お陰で皆昨日の疲れは感じる事はなかった


「さて行こうか!」


「はっ!」


「承知!」


「おう!」


一つ声が上がる度に一行の闘志が積み上げられていった


「もうすぐだ!

あのまん丸な目玉を見る事ができる」


アキヨリは槍の鞘を抜き駆け出した


つづく


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