15年前の片思い ☆2
「お前、頭でも打っておかしくなったのか? そんなガリ勉って柄でもなかっただろう」
「いや、実は○○高を狙っていてね。これからは頑張ろうと思う」
「おい、気は確かか? ○○高と言ったら、県内で一番難しくて、本当に優秀な連中しか行けない所なんだぞ。お前が行けたら、誰でも入れるぞ。…って、おいっ、聞けよ。無視すんなよ!」
友人の言うことは最もであった。でも、この頃はその気になれば、何でもできるような気がした。Kと同じ高校に入れたら、きっと毎日が楽しくなるだろうと本気で思っていた。
あれは激しい夕立が降った日だったと思う。塾にノートと筆箱を忘れたことに気付き、急遽、塾へ引き返した。建物の中に入ると、外が暗いせいで構内ももう真っ暗だった。もう生徒も講師も誰もいないようである。
「うわっ、びっくりした。お前、こんな所で何やってるんだ…」
びっくりしたのはこっちの方である。突然、懐中電灯で照らされて、思わず大きな声を出してしまった。それに警備のおっちゃんもびっくりしたようである。
「ちょっと、筆箱とノートを忘れたので、取りにきました」
「そうか、だったら電気をつけたらいいじゃないか? 暗い中、誰か歩いていたら、こっちが泥棒と間違えるから…」
入り口の近くで警備のおっちゃんと軽いやり取りをした後、自分の教室へ向かった。お目当ての物を無事に回収して、家へ戻ろうとしたときである。職員室から何か聞こえた。
なぜかKの声が聞こえたので、それでつい気になってしまい、足が止まってしまった。なにかゴニョゴニョ言っているのが聞こえる。
「……………ことが好き。かわ………」
「きみは………とくべ………だ」
どうやら、一組の男女がこそこそやっているような会話。よせばいいのに、好奇心を抑えられずに職員室のドアに耳を近づけて、会話をじっくり聞くことにした。
「私、この塾に入って本当によかった。だって、川口先生と出会えたんだもん」
「俺もこの塾の講師をしていてよかったよ。だって、Kと出会えたから」
その後、二人はキスをし出した。ドア越しの影が一つに重なったし、棒アイスを勢いよく吸ったときに出るような音がチューチュー聞こえたからである。こんな形で他のカップルがキスをしているときの音を聞かされるとは思わなかった。
ドアの外には僕がいるにも関わらず、二人はそれに気付くことなく奇妙な音を立て続ける。
こんなこと、知りたくなかったのに…。好きになった少女と塾で生徒に一番人気のある先生が付き合っていたなんて…。悔しさのあまりに叫びたかった。
でも、ここで叫んでも二人の関係を壊せるはずもないし、みっともないのでこっそりと建物を出た。そして、夕立の中をずぶぬれになりながら走った。
別に筆箱なんか…取りにいかなくてもよかったんだ。家には何かしらの筆記用具ぐらいあるんだ。こんなことを知るぐらいなら、筆箱を忘れたことを思い出すことなく、真っすぐに家へ帰れたらよかったのに…。




