15年前、僕は○○高校に入学した(2)
私たちはベンチに腰かけて、しばらく夕日を眺めていた。何とか話す機会をつかんだと言うのに、情けないことに、何を話せばいいのかまったく分からなかったのだ…。
「福井君、高校生活楽しんでいる?」
Kが話し出してくれたおかげで、何とか話すきっかけをつかむことができた。
「まあ、それなりにね…。まだ、始まったばかりだから、よく分からんよ。Kさんは?」
「私? 私は今、高校浪人中。去年の今頃は○○高校合格に向けて頑張っていたのにね…。塾でりゅうちゃんに会って付き合うようになって、それがばれてりゅうちゃんが講師をクビになって、私も白い目で見られるようになって…」
りゅうちゃん? 一瞬、誰かと思った。ああ、Kが転落するきっかけになった淫行塾講師・川口のことか…。変に聞き返さなくてよかった。話は続く…。
「ずっと、どうしたらいいのか考えていた。でも、やっとわかったの。こんなこと、どんなに考えても仕方ないって。それよりも周りからどう思われようとも、何があろうとも前に進むしかないんだって…。そう思えたら、やっと楽になって、普通の生活ができるようになった」
話の流れでつい聞いてしまったが、本当は聞くべきでなかったかもしれない。いや、聞きたくなかった。彼女の口から川口のことを「りゅうちゃん」なんて呼んでいる事など知りたくなかった…。
中三のときの彼女を知っていれば、高校へ入学できていないことも分かるはずだからだ。それにこうやって外を普通に歩いているのだから、すでに心の傷から回復していることだって予測できる。
「今だから正直に言うけど、去年の夏、あなたが○○高校を受けると聞いたとき、心の中で絶対無理だと思っていた。さらに万が一受かるようなことがあれば、○○高校へ行きたいと思ている人がみんな受かってしまうと思っていた。あの頃の私は本当に傲慢で生意気だたなぁ…」
「いや、去年の夏の時点なら、そう思うのが普通でしょう。あの頃の僕は本当に成績が悪かったからね。先生たちからもさんざん言われたし…。だからこそ、見返してやりたくて必死だった」
「ところで福井君はどうして○○高校を受けようと思ったの?」
まさか、ここでこんな質問を受けるとは思わなかった。まさか、あこがれの本人を前にして、正直に答えるわけにもいかないので、そのあたりをどうしようか考えた末に、このように答えることにした。
「自分を変えたかったんだよね。このままじゃ、ずっと落ちこぼれのまま、人生が終わってしまうと思ったら、急にやる気が出てきたんだよ。弱い自分や嫌な自分から逃げたくて必死だった」
「そうなんだ…。じゃあ、私と一緒ね」
「はあ?」




