15年前の片思い ☆1
15年前の夏も今と同じようにとても蒸し暑かった。どうして、こんなに暑い中、勉強しないといけないのか…と思いながらも、行きたい高校に行くために勉強をしていた。
毎日のようにクーラーがよく効いた市立図書館まで行って勉強していた。ここだとみんな静かに勉強しているか、本を読んでいるかのどちらかなので、嫌でもやらないといけない気分に追い込まれる。
それにKに出会えることが何よりのやる気になった。Kはとてもかわいくて優しい女の子であった。3年のときはクラスが違ったが、2年のときは同じクラスで話をしたことも何度かあった。
あれは秋のクラスマッチのときだったと思う。私はサッカーでスライディングをしようとして失敗してケガした。派手に右膝を擦りむいて、みんなの失笑を買う。
それが恥ずかしくてこっそり保健室に行こうとしたら、保健委員のKがそれに気付いて保健室まで連れて行ってくれたのである。私は大したケガではないので、彼女を制して一人で保健室へ行きたかった。しかし…
「何言ってるの。そんなひどいケガをしているんだから…。ほら、肩につかまって!」
と、彼女に言われたのである。何を言っているのか意味がよく分からなかった。ただのかすり傷だと思っていたからである。
だが、だんだん左足首の痛みがひどくなって、最後には歩くのも困難になってしまった。あとで左足首がねんざしていることが分かったのだが…。それにしてもKは何でそのことがすぐに分かったのか? 不思議でたまらなかった。
それがきっかけでKのことを好きなったのだから、田村先生の言うこともまんざらでもない。中学生の恋愛なんて単純明快だ。
そんな訳で毎日、市立図書館に通って勉強した。ただKに会いたいがために…。そのためだったら、今までやりたいとも思わなかった勉強にも身が入るようになった。でも、告白しようとはとても思えなかった。
そんなことをしたら恥ずかしさのあまりに心臓が飛び出して、体がバラバラになってしまうと感じた。そう考えると磯辺の行動はすごい。やはり、いつの時代も女性は強い…。
もちろん、彼女の行動は常に気にしていたから、彼女が塾通いしていると知ったら、親に頼んで同じ塾に入れてもらった。
親は初め、「こんな進学塾に入ってもお前はついていけないから止めとけ」と最もなことを言われたが、引き下がらず「入る以上は頑張って成績をあげる」と説得した。いつしか、昼間は図書館、夜は塾へ行くことが私の夏休みの日課となった。