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15年前、塾講師は突然消えた

「おい、聞いたか? 川口先生、急に塾講を辞めたんだってよ」


「じゃあ、今日の国語は自習か?」


「やっぱり、あの噂は本当だったんだな…。それにしてもあのロリコン野郎、Kに手を出したんだろう。あの歳で中学生に手を出したら、こうなるってことぐらい分かっただろうに…」


「俺の聞いた話によれば、条例に引っかかったらしくて警察で取り調べを受けているらしいぞ」


「うわー、マジかよ。それ、シャレになってねぇな」


 川口先生が塾講師を辞めた日、教室では男女問わずに川口先生の話で持ち切りだった。心がチクチクと痛んだ。この話がKの耳に入らなければいいのにと思った。


 しかし。これだけたくさんの人が話していれば、嫌でも彼女は聞かされることになるだろう。そのたびにつらい思いすることになることは間違いなかった。


 確か、川口先生は25歳ぐらいだったはずだ。Kは15歳で10ぐらいの歳の差があった。しかし、10歳ぐらいの歳の差が何だと言うのだ。


 たまたま、Kがまだ15歳だから問題があっただけだ。世の中には25歳と35歳の恋人だって、夫婦だっている。この場合の10歳差はまったく問題にならないのに、どうして15歳だと問題なのだろうか?


 本当に問題なのは川口先生が真剣にKを愛したかどうかである。真剣であったなら問題ないと思う。しかし、もしこれが遊びだったとしたら、それこそ許されないことである。


 その場合は条例でも法律でも何でもいいのでうーんときつい罰を与えるべきである。でも、私は二人が真剣に愛し合い、Kは幸せだったと信じていたかった。そう思うことで自分の心の傷を最小限に抑えようとしていたのだと思う。それぐらい、あの頃の私はKのことが好きだった。


 だが、私の思いとは裏腹に物事が動いていった。まず、川口先生が仕事を辞めてから3日後、Kも突然塾を辞めた。


 そして、彼女の母親が川口先生と塾を相手に裁判を起こした。二人だけの問題のはずが、いつの間にか塾やKの家族の問題となってしまったのである。話はいたずらに大きくなり、もはや誰かがもみ消したり、この話を内密に処理したりできなくなってしまった。


 とうとう、この話はテレビや新聞にも取り上げられ、全国のお茶の間をにぎわすこととなった。そのため、塾の前にはテレビキャスターやら新聞記者やらが張り付くようになったので、ほとぼりが冷めるまで塾は一時閉鎖されたほどである。

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