表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/91

日の光の下で(5)


「ただ?」


 そんな綜一狼を真っ直ぐに見据えて、楓は綜一狼の答えを待つ。


「あえて拒まなかっただけだ」


 ボソリと呟く綜一狼。


「……」


 綜一狼の発言に、楓は軽蔑の眼差しを向ける。


「だから悪かったって! もう二度としない。約束するっ」


 まるで浮気のバレた亭主のように、あたふたとしながら、綜一狼は言い募る。


「本当に?」

「ああ。絶対だ」


 楓の疑惑の瞳を受けて、綜一狼は大きく頷く。


「だから楓もだぞ。俺以外の奴にはするな」

「う、うん。これからは気を付ける」


 まさかすでに、静揮と聖。

 二人にキスをされてしまったとは言えない。


「これから?」


 だが楓の歯切れの悪い台詞を、綜一狼は耳聡く聞き逃さなかった。


「あ……」

「まさか、お前にちょっかいをかけてきた奴がいるのか?」


 ハッとした様子の楓に、綜一狼の目が光る。


「ち、違うのっ。あれは不可抗力。事故みたいなものだし……」

「不可抗力? 事故!?」


 見事なまでに墓穴を掘っていく楓。


「まったく。これだからお前からは目が離せないんだ」


 綜一狼は楓を抱きしめる腕に力を込める。

 もう二度と離さないというように。


「本当にいいのか? 俺で」

「うん」

「もうお前を手放さないからな。お前が嫌だっていっても、気持ちの歯止めはとっくになくなってるんだ。」

「うん……」

「何があっても、俺はお前を守る。聖にも、他の誰にも楓は渡さない」

「綜ちゃんと一緒なら大丈夫だよ」


 楓は綜一狼に、にっこりと微笑みかける。


 温かな風が、二人の間をすり抜けていく。

 綜一狼は楓を見つめ、そっと微笑む。

 愛しさを込めた優しい瞳が、楓を捉えている。


「……」

「……」


 小さな沈黙がその場を支配する。

 綜一狼の唇がゆっくりと楓の唇に触れる。

 言葉よりも、たった一度の口付けが、二人の思いを形にする。


『永遠に離れない』


 それが二人の誓い。


 長い長い口付けが終わったその時だった。


「綜一狼! そこで何をしてるんだっ」


 その場に静揮が姿を現す。

 ちょうど楓を抱きしめたままの綜一狼を見て、静揮は鬼の形相で綜一狼に詰め寄る。


「し、静ちゃんっ」


 楓は真っ赤になって、思わず綜一狼を押しのける。


「別にいいじゃないか。両思いなんだし」


 慌てる楓を他所に、綜一狼はサラリと真面目な顔で言い放つ。


「て、てめぇっ。言っておくがなっ! 俺は楓と付き合うことは認めないっ」

「え!?」


 静揮の爆弾発言に、楓は静揮を見る。


「兄として、こんないい加減な奴に妹はやれんっ」

「お前な、こんな時だけ兄貴面するなよ」


 綜一狼は呆れたように言い放つ。


「今しなくていつするんだっ!」


 静揮は即座に言い放つ。


「私も綜一狼に渡すのは惜しいと思うわ」

「ル、ルナまで……」


 その場に参戦したルナが、楓に抱きつき言う。


「俺も納得出来んっ。綜一狼ばっかりいい思いすんなんて」


 と、守屋は綜一狼からかなり離れた位置から叫ぶ。


「そういう訳だから、よろしくな」


 静揮はニッと意地の悪い笑みを浮かべる。


「そんなことで俺が納得するか」


 そう言うと、綜一狼は楓の手を取り駆け出す。


「あ、待ちやがれっ」

「卑怯よっ」


 その後を、慌てて追う面々。


「俺から離れるなよ」

「うんっ」


 握られた手に、確かな温もりを感じながら、楓は綜一狼に微笑みを向けるのだった。




最後まで読んでいただいてありがとうございました!

これにて一部完結というところでしょうか?

第二部は、気分次第で(笑)


過去作品なので、読みづらい部分も多々あったかと思いますが、

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

本当に、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ