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もう、今更です  作者: つむぎ


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34/52

6

王家の血は、長きにわたる純血主義のもとで濃くなりすぎていた。代々王位を継ぐ者たちは、正統性を保つために近しい血筋の者との婚姻を繰り返し、その結果として精神の不安定さや偏執的な気質を持つ者が増えていた。


フェリクス・ヴァルモン王子もまた、その血の影響を強く受けていた。幼い頃から聡明ではあったが、どこか一つの物事に強く執着する傾向があり、それが「運命の愛」という幻想に結びついたとき、誰にも止められないほどに歪んでしまった。


カトリーヌ・ベルフォールとの婚約は、そうした王家の血を薄めるための一手だった。


ベルフォール家は王家に次ぐ高貴な血筋を持ちながらも、王家ほど近親婚を重ねず、比較的健全な系譜を維持していた。王宮の重臣たちは、カトリーヌとの婚約によってフェリクスの血統に新たな要素を取り入れ、次世代に健全な後継者を生み出すことを狙っていたのだ。


しかし、フェリクス本人はこの婚約を「政治の道具」としか見ていなかった。彼の心はすでに「運命の愛」へと傾いており、カトリーヌを「選ばされた相手」としか認識していなかった。結果として、彼は公衆の面前で婚約破棄を宣言し、自らの未来を閉ざすことになった。


一方、第二王子は側室の子であり、王家の血は正妃の子であるフェリクスほど濃くなかった。側室の出自が名門とはいえ王家と遠縁だったため、彼にはフェリクスのような偏執的な気質は見られず、比較的穏やかで冷静な性格を持っていた。


そのため、貴族たちは次第に第二王子へと傾き始めた。


王妃はそれを認めなかった。


「フェリクスこそが正統なる王の血を引く者。この王家を継ぐのは、彼以外にありえません」


彼女の言葉には、母としての愛情だけでなく、王家の伝統を守ろうとする強い意志が込められていた。


「第一王子がいるのに側室の子である第二王子が王位を継ぐなど、王家の歴史に泥を塗ることになります」


だが、貴族たちは冷ややかだった。


「正統なる血筋を持っていながら、王子殿下はすでに精神の不安定さを隠せていない。それを知らぬ者はいません」


「正妃の子であることと、国を治める資質があることは別問題でしょう」


次第に、王妃の言葉は届かなくなっていく。


フェリクスの血筋は正統だが、王としての器を持たない。


第二王子の血筋は多少薄まるが、政治の場では冷静で安定している。


王宮の中で、その選択はすでに決まりつつあった。


それでも、王妃はフェリクスを見捨てることはできなかった。


彼女にとって、フェリクスはただの「王位継承者」ではなく、唯一の息子だった。


息子が王になれないということは、彼女が王妃であり続けることもできないことを意味する。


「フェリクス、あなたには王としての責務があるのです」


「母上、僕は間違ってなどいない。リリアは、僕を愛しているんだ」


王宮の奥深くで、母と息子は互いに信じ合いながらも、すでに破滅への道を進んでいた。

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