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最終話「今日も隣に、あなたのそばに」




 あの後、僕は全てを話した。姉さんとの思い出も、父さんや母さんの僕への接し方も、蔵でのことも。


 なぜ、姉さんがそんな行動をとったのかも、全部。


 途切れ途切れだったから、話し終わる頃にはもうだいぶ夜も更けていたんだけど、それでも和真様はずっと僕の話を聞いていてくれた。話し終わると、そっと僕を抱きしめて「頑張ったね」と言ってくれた。それで涙が溢れてきてしまって、気が付いたら朝でベッドに寝ていた。


 和奏さんや和斗さんに性別を明かすと、和奏様に「なんとなく知ってたよ」と言われてしまった。そういえば最初に会った時に、おにぃちゃんと呼ばれたもんね。和斗様も頷いていた。


 和也さんは「よかったな、はる」と言ってくれた。ものすごく嬉しかった。


 遥歩さんも、ものすごく嬉しそうに喜んでくれた。心配していてくれたみたいで、こそばゆくてくすぐったかった。


 それと、僕の体はヒートを長年抑えていたせいで、うまく機能しなくなっているらしい。ちゃんとヒートがくるには三年くらいかかるとお医者様に言われた。それじゃあちょうど成人くらいだねと和真様が言って、成人になったら番ってくれると約束してくれた。


 和真様と僕では、どうしても年齢差や力の差がある。それで僕が望まない方へ、望まないことを言うように誘導させてしまうのがひどく怖いとおっしゃっていた。だから僕が自分の意見を言えるようにいろいろ連れて行ってくれたり、いろんなことを話してくれたりしている。僕は和真様を慕っているけれど、それでも成人するまで関係は待ち、改めて確認することに決まった。


 あとは大人に任せておきなさい、と微笑んでいた和真様は、本当にいろいろしてくれたみたいだ。東雲本家の人たちと何度も話し合って、僕の家…、違う、金田家の処遇を決めてくれたらしい。


 ちなみに本家の人というか、現在家を動かしている人(和真様はそのお手伝いをしていたようだ)は琴音さんのお姉さんとその妻の方らしく、金田家にものすごい怒っていた。会わせていただいたときはひどく緊張したけれど、義理のお姉さんにあたるお二人は琴葉様と彩乃様といって、すごく美しくて優しくて、琴音さんが垣間重なって見えるような人たちだった。


 上の人とも話し合い、金田家は名字と土地を剥奪され、平民になったそうだ。本来はもっとひどい刑罰もあったようだけど、僕がそこまで強い恨みを抱いていないことから全財産剥奪は免除されたようだ。その上で僕とは縁を切ることになった。縁を切るというのは、ざっくり言うともう家族として関わらないこと。逆に家族だったことを利用して近づこうとすれば、重罪になるという刑だ。社交界でも噂が広まったようで、金田家の居場所は貴族社会には無くなった。


 けれど、嬉しいことが一つ。風の噂で聞いたことだけれど、母さんや父さんだった人たちが屋敷を追われる時、姉さん…莉愛だけは、晴れやかな笑顔だったという。どうか、これからも無事でいてほしいな。


 いろいろ立て込みすぎて、ようやくすべてが終わったあと、和真様は体調を崩された。数日ですぐ回復されたけど、申し訳なさそうに笑いながら「これからは頼ることを覚えなきゃいけないね」とおっしゃっていた。僕も少しでも支えられるように頑張りたいと伝えたら、嬉しそうに笑った。



◇◇◇


 

 …久しぶりに、思い出した。懐かしい夢を見たからかな。


 咲き誇る桜の下で、姉さんと一緒に遊ぶ夢だった。それで記憶が芋づる式に出てきた。ざあっと開いている窓から風が吹き込んできて、首まで切った髪が揺れる。


 ずいぶん最近な気もするけれど、でも遠い気もすることだ。あれからもうそれなりに時が経ち、今はもう春。夢で見たような桜が庭にも咲いている。


「はるにぃちゃん、遊ぼ?」


和奏さんがひょこんと顔を出した。その手には、みんなで作った僕の布人形。だいぶ美化されている気がするけど、そっくりだと言われたので嬉しい。


 琴音さんが設計したこの家の庭は、季節に合わせていろいろな表情が見える。今の季節は小さな木々が植わったところに小さな秘密基地みたいな空間ができているのだ。


「にーちゃん」


和斗さんも和奏さんの後ろから顔を出した。頷き、僕は家の外に出る。


 談笑していた和真様と和也さんがこっちに気がつき、和也さんが駆け寄ってきた。和真様もゆっくり歩いてくる。


 さっきの風に乗ってきたのか、桜が僕に贈り物をしてくれたみたいだ。和真様が僕の髪を撫でて花びらをとり、そのまま唇を髪に触れさせた。流れるような動作に胸がくすぐったい。


 僕たちに許されている触れ合いは、口以外のキス、それからハグ。そのあたりは成人前でもしていいのだ。なので愛情表現はもっぱらこれである。


 和真さんの胸に手を当てて背伸びし、頬にお返しする。


 ふわりと柔らかく笑って、和真様が僕を撫でた。余韻を確かめるようにやわらかくそこに触れるクセが、ただひどく愛おしい。


「はるー!父さんー!早く!」


和也さんの声が聞こえて、僕たちは顔を見合わせてつい、笑った。


「はる、行こうか」


和真さんの肘に軽く触れさせてもらい、僕たちは和也さんたちの方へと歩き出す。


 暖かい日差しが、眩しくて心地よい。


「遅いぞー!」


「準備できた〜」


「いただきましよ」


そう言って笑っている声のところに、ゆっくり向かう。大切な、大切な家族の元に。



 こうやって、今日も、これからも、明日も。


 ずっと、ずっと、隣にいたい。笑って、泣いて、たぶん喧嘩して仲直りして。そうやって、生きていきたい。


 いたいんだ。大好きな人の、横に。僕の場所に。


 あなたのそばに。



 

以上で完結となります!



今まではると周りの人々(と作者)を見守ってくださり、ありがとうございました!!

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