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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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謎の突破口

 ヒョウマが語った『ナインテイルの湯』で起きた事件の顛末を聞いてヤンが大爆笑していた。

「ウシャシャシャ! そりゃ"合法的"というより"モーホー的"アルね!」

「笑い事じゃないぜよ! わしゃ衆道の気はこれっぽっちもないきに。まっことアキラもアキラよ、何で教えてくれんかったがかよ?」

 ヒョウマがふて腐れた顔で僕を睨んで問い詰める。

「ゴメン、でもあのアンナだよ? 一目見れば男だとすぐに分かりそうなもんだけど。ヒョウマは本当に分かんなかったんだ」

 僕が若干の罪悪感を抱えつつそう言い訳するとヒョウマは遠い目をする。

「わしは剣の道一筋で10年間ずうっと剣術道場に住み込みで修行しとったんじゃが、そこにおった妹がわりの師匠の孫娘がこれまたえらく子供っぽいおなごでな。その反動か知らんが、そういう娘っ子はもう性の対象としちゃ見れんがよ。アンナみたいな派手なおなごこそ、わしの理想ぜよ」

 自らの言葉にウンウンと頷くヒョウマ。

「残念ね、理想のアンナはおなごじゃなくオトコだったアルね。ウシャシャシャ!」

 ヤンの心臓を抉るような一言にヒョウマは頭を抱え込んだ。

 あちゃー、程々にしてあげなよヤン。

「でもそんなに気持ち良かったんだ? アンナの腕前は」

 僕が興味津々で尋ねると、ヒョウマがうっとりとした顔になった。

「ありゃ素人じゃないがよ。わしらフェルパーのツボも完全に心得とる。一度味わったらやめられん、魔性のテクニックじゃきに。おおアンナ、何でおまえは男に生まれたぜよ……」

 なんだかんだでヒョウマはまだアンナに未練たっぷりの様子である。

 うーん、大丈夫かなこの人……。

 まあそっちの気はないと言っているし、後はもうヒョウマを信じよう。

 アンナもちょっとからかっただけみたいだからね。

 そうこうしてるとアンナとサラもやって来た。

 僕らはひとっ風呂浴びた後、男子組だけ先に<バタフライナイト>に集まって、一杯やりつつ談笑していたのだった。


「アラ、楽しそうじゃない。一体何を話していたのかしら?」

「アンナのマッサージの腕前の話をしてたんだよ。プロ顔負けって話みたいだけど」

 そう返す僕にウッフンとウィンクするアンナ。

「ウフフ、このアンナさんの繊細な指が織りなす芸術的な腕前は、そんじょそこらのマッサージ師なんかよりよっぽどスゴイのヨ。アキラにも前に"サービス"してあげるって言ったじゃない」

 思い出した、確か『マルホーンの迷宮』から帰った時にアンナはそんなことを言っていた。

 あれはそういう意味だったのか。

「私も昨日の晩、アンナに寝る前マッサージしてもらったの。すっごく上手だったわ。あれをしてもらわなかったら多分今日はまともに動けなかったと思う。ありがとう、アンナ」

 そう言ってサラが笑顔でアンナの腕に抱きついてじゃれつく。

 まさかサラまでアンナ流マッサージ術の体験者だったとは。

 何か僕だけ損をした気になってきたぞ……もし機会があったら今度は勇気を出してお願いしよう。

「さて全員揃ったとこで作戦会議ね。ヤンさんこの短時間の間に最新情報仕入れてきたよ。スパイ顔負けの腕前で、ターゲットのケツのホクロの数まで調べ上げ"密偵請負人"と呼ばれて恐れられた程の男がヤンさんアルね」

 ヤンが自信満々に丸眼鏡を光らせた。

「それはいいから、肝心の最新情報の話を早く教えてよ」

 僕が急かすとヤンは目の前のドライエールを一気に飲んで勢いをつけた。

「善のパーティ『イグナシオ・ワルツ』がアングラデスの最速攻略を狙ってるみたいね。今日初めて迷宮に潜って、もう三層まで行ったらしいアルよ」

 それは僕にも聞き覚えのない名前だった。

「初日の探索でもう三層、かなりのハイペースだわネ」

 そう言ってグラスを傾けるアンナ。

 するとサラが何かに気づいたような顔つきになる。

「待ってヤン。その『イグナシオ・ワルツ』ってもしかしてロードがリーダーじゃなかった?」

「そうね。知り合いアルかサラ?」

 サラが納得がいった様子で頷いた。

「多分それ私の兄、ジェラルドのパーティだわ。来日前からアングラデスを最速攻略するって息巻いてたし。パーティ名もそれっぽいわ。あの人イグナシオ教会の熱心な信者だから」

「そうだったか。三層でオークの大群とボスであるオークロードを倒したらしいアルが、四層に降りる階段が見つからず結局引き上げたみたいね。階段の場所の情報を集めてるらしいよ」

 ヤンの言葉に引っかかる点を感じた僕が疑問の声を上げる。

「あれ、でも確か四層までは『アングラデスの迷宮』って確認済みなんだよね?」

 僕の言葉にアンナがメモを取り出した。

「以前迷宮調査員に確認された時の情報にはこうあるわ。『扉を開けた先にはオークの大群とそれを率いるリーダーの姿。奥には下層へ続く階段を確認するがあまりのオークの数に調査を断念し帰還』と」

 迷宮調査員はその名の通り迷宮の深さ、現れるモンスターを調査するのが仕事だ。

 決して戦闘要員でも攻略要員でもない彼らは、生きて帰り情報を伝えることを最優先とする。

 その昔活躍したダイヤ&ハートという伝説的な迷宮調査員コンビのおかげで、彼らに憧れ後継者になろうとその道を志す者も意外と多い。

「ほいたら三層ボスのオークロードを倒しちゅう、その『イグナシオ・ワルツ』が『アングラデスの迷宮』攻略パーティの現在トップちゅうわけか」

 ヒョウマがギラリとその野性的な目を光らせた。

 非常に肉食獣っぽくて、ちょっと怖い。

「アタシたちは別に競争してるワケじゃないわ。こっちはこっちでのんびりいきましょうヨ」

「私もアンナに賛成。できることなら兄とは会いたくないもの」

 アンナとサラがのんびり案を出すがヒョウマの顔は晴れない。

「けんど、わしゃ同輩じゃった男とどっちが先に攻略するか競争しとるきに。もし『イグナシオ・ワルツ』にそいつがおるならちっくと困るぜよ」

「ヒョウマは迷宮に潜るのにそんな理由があったアルか。ヤンさんも分かるよ、男の意地ね。うーん、こりゃどうしたものよ」

 ヤンは若干ヒョウマ寄りの姿勢を見せた。

 あちらを立てればこちらが立たず、そんな感じだ。

「しょうがないわネ。それじゃ明日は三層を目指して潜りましょう。危険を感じたらすぐに撤退、それでいいかしら?」

 アンナが出したこの折衷案にみんなが賛成した。


 三層か。

 僕たちは二層のコープスワームに苦戦して引き返したんだっけ。

 でもレベルも上がり、仲間も増え、防具も新調した今ならもうあんな無様な結果にはならないはずだ。

 というか、トリプルGのゴタゴタで僕のおニューの鎖帷子+1は結局ヤンにしか自慢してないのに気付いた。

 まあ今さら自慢するのも何だか旬を逃したみたいで恥ずかしいし、『その素敵な防具は何?』と聞かれるまではいいか。

 それにしても、三層でボスの部屋にあったはずの階段が見つからなかったというのが気にかかる。

 何かがおかしい。

 そういや、二層に降りる階段を前にした時もアンナが妙なことを言っていた。

 『二層へ降りる階段の位置が、何だか前来た時とこう……配置がズレている気がするんだけど』

 それと、『サラ専用トイレ』で突然現れたあのコボルドたち。

 いまだ答えは出せないけど、この謎の突破口は見えた気がする。


「アキラ、黙りこくっちゃってどうしたの?」

 サラが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。

「ちょっと気になることがあるんだ。まあ明日、その場所に着いたら話すよ」

 そう、あの場所……あそこに必ず手がかりがあるはずだ。

「もう~深刻な顔しちゃって~。アキラちゃん、スマイルは大事よ~ほらス・マ・イ・ル!」

 僕がサラ相手に結構シリアスに決めていたら、突然ママがやって来て雰囲気をぶち壊してくれた。

「おう、アキラよ。あのド派手なセクシーなおなご、わしにも紹介してくれんか?」

 ヒョウマよ、それも男だ。

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