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プロローグ
少々酷い始まりではありますが、温かいお話にできたらと思っております。
月のない夜だった。
空には薄雲がかかり、星さえもその光を鈍らせていた。
ーーー闇の中、
断末魔の声が響く。
それは一瞬で消え、叫び声の主が瞬く間にこと切れたのだとわかる。
その直後にもうひとり…
静寂が戻った暗闇に、血に塗れた一体の鬼がいた。
美しい銀の髪の間から、ふたつの角が見てとれる。
その両手には、先程こと切れたばかりの、ふたつの屍から抉り出した臓物が握られていた。
ーー悪鬼ーー
と、人は呼ぶだろう。
美しい風貌を怒りに歪めたそのモノは、最も簡単に人の世を地獄絵図さながらに変えてしまったのだから。
誰かが見ていたならば、この人外なる者を如何なる手段を用いても、葬り去ろうとするだろう。
我が身を守るため。
大切なものを守るために。
誰かが見ていたならば、人の世の裁きと名を打ってこの鬼の命を奪うだろう。
人成らざる者の心には、人は寄り添うことをしない。
鬼の目に浮かぶ涙など、人は認めようとさえしないのだから……




