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ヘルキャット 3


 ドロップキックを喰らって吹き飛ばされてゆき、再びロープに吹き飛ばされて、転倒。今度は墨江の髪の毛が掴まれて強引に起立させられたのちに、身の丈百八〇を誇る躰を抱え上げられた。そして、妙子が白いマットに、墨江を渾身の力で叩きつける。たちまち、己の脳内と眼の内側に、稲妻が走り回っていくのを視た。そして再び髪の毛を掴まれて起こされた墨江は、同じ手を二度も喰らうものですかと、妙子の肩につかみかかって組み合った。しばらくの間続いていた力比べののちに、妙子が口を開いてゆく。その開かれた上下の肉壁には、象牙色の犬歯が群れをなして整然と並んでいた。これには流石の墨江も目を剥いていく。だが、そんな感情も引っ込めてしまうなりに、妙子の肩から外した片腕を下から滑り込ませて顎を鷲掴みにして、女の口を塞いだ。次に、相手の肩から残りの利き腕を解いたすぐに、妙子の口を塞いだまま躰を屈めながら拳を引いていく。その邪魔な手を外そうと、妙子が肘や膝を使って殴りつけていった。だが、このようなことにも構わずに、全身をバネへと変えて、墨江は女の顔面に拳を叩き込んだ。打撃で妙子が仰け反り、天をあおぐ。すかさず襟

を掴まれて、正面を向かされた。そして、墨江は再び拳を弾丸のごとく放っていく。

 顔面ド真ん中に決まる拳。

 再び、顔面ド真ん中に拳。

 もう一撃、真正面から拳。

 またまた顔面ド真ん中に拳。

 妙子の視界が醜く歪んでゆく。

 霞もかかってきた。

 お次は、腹に拳が射し込まれた。

 内臓がひしゃげて、嘔吐。

 そして、拳が顔面に迫ってきた。

 妙子は、この一撃を喰らってしまったら私はもうオシマイだと思った途端に、鼻先で拳が止まった。なにを思ったのか、拳を下げながら墨江が微笑みかけてきたではないか。すると、不覚にも、心の何処かで安堵してしまった刹那、脇の下に頭を挟まれて、妙子の全身から血の気が引いていった。墨江が、妙子の首に腕を巻いて革ベルトを掴むと、腰を落とした。持ち上げられてはたまるかと踏ん張ったかいもなく足がマットから浮いたときには、妙子の全身に悪寒が走った。そうして、爪先が天を突いて、瞳は墨江の足元を見た。女を抱え上げたまま、墨江は低い声で囁いていく。

「歯ァ、食いしばれ」

 そして、白いマットへと、妙子を脳天から突き刺した。女の意識は一瞬で飛び、視界は暗転した。




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