第3話
あなたはダストシュートの下に綺麗に着地した。
―さて石を探すか…。
すると上から何か降ってきた。
シュタタタタ。鼻毛ゴーレムたちも同じように降りてきて、綺麗に着地した。
鼻毛ゴーレムは何も言わず、ボーとしている。
「よし、ゴーレムどもいくぞ。」
あなたは気を取り直して、ゾンビを避けつつ、石を探しに行く。
「オペ子、いるか?」
「はいデス。オペ子サービス残業中デスが、何デス?」
「小さい石はあるんだが、どれくらいの大きさだといいんだ。」
「そうデスね。拳より大きいのがいいデス。もっと大きいのは運べないデスからね。」
「それくらいの大きさのを適当に集めればいいんだな。」
「デスデス。ふぁいとデス~。」
オペ子からの助言でイメージを持てたので、その辺に落ちている石を拾いつつ、それをゴーレムに渡していく。
思ったよりは落ちているので、どんどん拾っていくが、すぐに持ちきれなくなってくる。
ゴーレムは一体で一個しか持てない。効率悪いけど仕方がないか……。
一度戻ろう。
家に戻ってきて、いつものように赤いボタンからのボッシュートで中に戻る。
ちなみにゴーレムたちは掃除機のようなもので中に吸い込まれていた。
中に戻って、作業部屋に入って、台座に石を置くと、また様々な道具がリストアップされる。
武器、探索道具、いろいろ……etc
困ったな……どれがいるのかがわからん。
「オペ子さん! 何がいいのかわからないです!」
オペ子から深~いため息が出てきた。
「多少は頭を使うデス。少しでもいい素材を使って、少しでもいい装備や施設を作る。これがサバイバルの基本デス。」
「そうは言ってもさあ~。…………そうだ。荷物があまり持てないのが困っている。それができる装備はないか。」
「いい質問なのデス。ちょっと待つデス。…………木の枝と樹木の皮、植物のツタがあれば簡単なバックパックが作れるのデス。」
持ってきた物にはなかった素材がいくつかある。
「木の枝はあるデス。樹木の皮は石のナイフを作れば集められるデス。植物のツタも石のナイフで切り取ればいいデス。見つけやすくできるように、オペ子くおりてぃ~で描いたイラストをあげるデス。」
渡されたイラストには、デフォルメされた大きな木の表面を石のナイフで削る様子と木の枝に絡まるツタを切る様子が描かれている。
「よし! わかった! 行ってくるぞ!!」
次の指針が決まればすぐ行動する。それが今僕ができることだ。
ロボットアームに首を掴まれる。
「聞いていたデスか。石のナイフがいるって言ったデスよね。」
いつか息の根を止められそうなので、言うことは聞かないと……。
石を台座に置いて、石のナイフを選択する。
ガオン、ガオン、ピキーン、アベシ!
台座に石を割って作った石器のナイフができた。
「じゃあ、気を取り直して、行ってくるぞ」
「行ってらしゃいデス。」
僕はナイフを腰紐に括ると、外へと繰り出していった。
◇ ◇ ◇
ゾンビは基本的に意思がない。
また、群れたり、道具を使ったりはしない。
生き物がほとんどいない世界では、 ゾンビも襲う相手がいないので、ただそこにいるだけである。
しかし、長きに渡る停滞は、突然に進化を引き起こす。
あなたがそれを知るのは遠くない未来であろう。
そんな知る由のない未来の濃霧の入り口に僕は立っている。
「さてと、樹木の皮、植物のツタか……。どこにあるのかな。」
外に出てフラフラと歩きだした。
ゴーレムたちもヨチヨチとついてくる。
なんか愛着が湧いてくるようになってきた。
ゾンビが視界に入ることはあるが、意外と襲われることは最初の時からはない。
――まだ行ったことがないところに行ってみるか。
まだ見ぬ場所への好奇心から新たな方角へ進んでいく。
壊れた建物には、いろいろな物が見える。
人類がいたことに使われていたと思われる文字やイラストの描かれたところ。
壊れた機械のような物。
そんな中に、廃墟の壁に植物のツタが絡みついているのが見えた。
―これかな。
ツタを石のナイフを切り取ると、ゴーレムにポイっと渡した。
―手に届く分は取っておくか。
何本が切り取ると、次の樹木の皮を探し始めた。
皮というくらいだから多少大きな木である必要があると思った。
廃墟の横にそこそこ大きな木があるので、そこへ向かってみる。
木に近づいて、表面を撫でるとゴツゴツしている。
石のナイフを表面に当てて削り取る。
皮は表面こそ固いが、曲げると意外に柔軟である。
―いけそうだな……。
ゴリゴリゴリゴリ。
石のナイフで削れるだけ削り、ゴーレムに渡していく。
ふと、見るともう手空きのゴーレムがいないことに気づく。
―ここまでか。
一息ついた。そのときだった。
カラカラカラ。
聞いたことのない音が響いた。
それは後ろから近付いてきた。
ゾンビだった。しかし、それには今までと違った。
手に金属のパイプを引きずりながら来るのだ。
「なんだ!? こいつ。」
今まで会ったゾンビはどこか焦点が合わず、寄ってくるもののそれはそこにいるだけという感じだった。
でもこいつは明確にこっちを見据えている。
―逃げるか……いや、こいつはゴーレムより早い。やるしかない。
木の剣を抜き、ゴーレムを下がらせる。
カラカラカラ。
パイプを擦る音に力が入っているように感じた。
すると、ゾンビはパイプを振り上げると、こちらに向かってくる。
―まずは剣でパイプを受けて、動きを逸らしたら頭を叩く。
振り下ろされたパイプを剣で受ける。
ガンッ。
逸らすことができず、そのまま押し飛ばされてしまった。
驚いた。前、ゾンビと戦った時に力を感じなかったからイメージと違いすぎた。
困惑を振り払うと、すぐに立ち上がって、剣を構える。
またゾンビはパイプを振り上げて、向かってくる。
―今度は受けずに、避けて頭を狙う。
パイプを振り下ろす軌道が見えた。先に身を下げて、避ける。
パイプは地面を強くたたいた。
―今だ。
剣をゾンビの頭に叩きつけた。
バキッ。
ゾンビの頭は半分ほど砕けた。しかし、剣も折れてしまった。
最初にパイプを受けたときに、壊れていたようだ。
手元には石のナイフしかない。
リーチは手のひらくらいしかない。
しかも、頭が砕けているのに、ゾンビはまだ動いている。
ゾンビはヨロヨロしながらまたパイプを振り上げた。
―まずい。どうすれば……。
ゾンビを見ると、目の焦点が合っていないのがわかった。
いつものゾンビと同じように。
―行くしかない!
僕は少し体を屈めながら、ゾンビへとタックルした。
パイプは空を薙ぎ払った。
その勢いでパイプがゾンビの手から離れた。
「それをよこせ!!」
僕はパイプを拾うと、そのままゾンビの頭に振り下ろした。
バキャッ。
ゾンビは動かなくなった。
そこからはあまり覚えていない。
必死に家へ戻った。
怪我はほとんどないが、死ぬかもしれないという精神的な負荷があった。
家に帰って、オペ子と話をしたことすら記憶にないまま、寝てしまった。
◇ ◇ ◇
家に帰ってくるなり、気を失うように寝ている彼を眺めてつつ、私は考えた。
―道具を使うゾンビが現れたデスか。なぜか生前の行動を持っているゾンビ……。
普通のゾンビはゾンビになったときに、脳が腐っていてゾンビの本能しか残らない。
しかし、極稀に生前にやろうとしていたことをやり始めるゾンビがいる。死ぬ前にゾンビと戦っていた人間がゾンビになったあと、そのときに戦っていた動きをする。
―今回はそれなんデスかね。まずは彼の安全デスね。
柱からロボットアームを出すと、次の準備を始めることにした。
◇ ◇ ◇
朝の陽ざしが窓から入りこんで、顔を当たる。
眩しさに目が覚めそうになった時、轟音が耳に届く。
キュキュキュキュイン! キュキュキュキュイン!
「うわ~~~~~~~。」
飛び起きるように、体を起こした。
「ぐっども~にんデス! いい朝デスね。」
オペ子がモニターの中でラジオ体操をしている。
「目覚ましにはうるさすぎだろ。」
「まあ、いいじゃないデスか。むしろ、アラームが聞こえてもすぐ止めて二度寝することがないだけ、いいと思うべきデス。」
朝から騒がしい目に合ったことにため息が出る。
「さて、今日のみーてぃんぐデス。まずご飯とシャワー済ませたら言うデス。」
食糧庫からパンと水を持ち出してから、シャワーを浴びる。
戻ると、オペ子もラジオ体操を終えて、スムージーを飲んでいる。
―なんでモニターの中でスムージ飲むんだよ。
「終わったぞ。ご飯は食べながらでいいだろ。」
「まあいいデス。まずは昨日はご苦労なのデス。バックパックは作っておいたデス。感謝はするがいいデス。」
バックパックが柱の下に置いてあるのに気づいた。
ゴーレムたちから拾った素材を受け取って作ってくれていたようだ。
「それはそうと、昨日のあのゾンビはなんだ。武器を使っていたぞ。」
「あ~ポクポクポクチン…言い忘れていたデス。あれはエリート・ゾンビデス。失敗失敗てへペロデス。」
「オペ子~!」
柱に向かって殴りかかろうとする。
「まあまあデス。身を守るための手立てを教えるデス。そのために、まず木、石を集めるデス。レッツトライデス。」
「へいへい。わかりました。」
壊れた剣の代わりに昨日拾ったパイプを持つと、外に行く準備をした。
「しかしな。木を拾い、石を拾い、全然進まないな~。」
「デス……。文句を言わないデス!」
モニターの中で怒りマークをつけたオペ子が粗ぶっている。
「へいへい。」
ゴーレムたちを連れて外に出かけた。
「全然進んでいない? ……違う。やっと動き出したデス。消えていた人類の足取りはやっと進み始めたデス…。」
オペ子の呟きは誰にも聞こえることはない。
あなたが知らないことを知っている者の言葉はまだあなたには伝わらないのである。
次に続く。




