第1話
西暦20XX年、世界は超大国の超化学兵器によって、それはそれは恐ろしいことになっていた。
超化学兵器から出てくるガスを吸うと、体はどす黒く変色していき、生気が失われていく。
意識は次第になくなり、気づいたときにはうめき声をあげて人という人に襲い掛かるだけのモノになる。
人々はこれをゾンビと呼んだ。
ゾンビは生き物全てに襲い掛かってくる。人はもちろん、犬や猫、鳥にカエルに魚にまで襲っていった。
しかもこのゾンビの恐ろしいところは人以外は襲われると死んでしまうウイルスを傷口から感染させてくる。
すると……パンパカパーン!!
☆☆☆これによって生き物は全滅してしまった☆☆☆
世界は滅亡してしまった…はずだった。
生き残りがたった一人だけいたのだ。そう、それは……『あなた!!!』
さあ、この世界を生き抜き、自分だけのパラダイスを作りましょう!
これはそんな滅亡した世界で生き残ろうとする人のお話。
◇ ◇ ◇
街の明かりはもう何年も前に消えてしまい、建物は錆びてしまったり、植物で覆われたものしか見当たらない。
街の中に見えるのはゾンビ……廃墟……ゾンビ……廃墟であった。
生き物はもうおらず、ただ小さなうめき声をあげて彷徨っている。
ゾンビは生き物以外には興味がなく、建物を触ることもなく、食事や睡眠も必要がないため、ただただ動き回っているだけなのである。
そんな街から離れた荒野のど真ん中にそれはあった。
研究施設のような見た目であり、人は絶滅したはずなのにアンテナや防衛装置が動いていた。
ここにはゾンビはおらず、人もいないのに電気も付いている。
そんな施設の中の奥、さらに奥の奥にそれはあった。
2mくらいのカプセルがあり、その中には薄緑に光る液体が満たされており、その中には人であった。
カプセルには様々なコードがつながっており、それぞれが複雑そうな機械につながっている。
その中にはモニターにつながっているものもあり、モニターにはこのように映し出されていた。
―『カプセル開放まであと10秒―9、8、7、6、5、4、3、2、1、カプセル開放!!』
すると、プシューという音と白い煙がカプセルから出ると、カプセルの中の液体は排水されていき、ブオーという音がなって濡れた胴体を乾かしていく。
そして、カプセルの蓋が開いて、その人は目を覚ますのであった。
―暖かい。長い夢を見ていたような気持であった。
目を覚ますと何かプラスチックのケースのような所で寝ていたようだ。
体に力が入りにくいが、ぐっと力を入れてケースの中から体を起こした。
そこは研究施設のような場所であった。誰も人はいない。
機械やモニターは動いており、誰かがいたような施設に感じられた。
「誰かいないか~!」
声を出して辺りを見回してみるが、何も反応がない。
ブーンというような機械の動く音だけである。
重い体をカプセルの中から出して、モニターの近くへ行った。
モニターにはアルファベットや数字の羅列、よくわからないグラフやパラメーターがあった。
意味が分からないので、ほかの機械に目を移す。
いろいろなボタンが付いた機械もあるが、ボタンに記されている文字が読めないため、やはり触るのをやめた。
うろうろ部屋を見回っていると赤い大きなボタンがあった。
そこには『押すな!押すなよ!絶対に押すなよ!』と書いてあった。
赤くて手のひらほどの大きなボタンだ。
押しやすそうにボタンにはカバーが付いていた。カバーはひっぱると簡単に外れた。
僕は文字は読めないので、気になったからこれを押した。
――パーオ☆パオパオ☆ティロリロリーン☆☆ティロリロリーン☆☆タララーラーラー☆☆☆
大きなサイレンがなったと思うと、モニターに映像が映った。
映像には禿げた頭に白い毛が2本付いた白衣の男性が映し出された。
「あ、あ、あ、テステス。うん。あ、あ、あ。よし。聞こえるかね。」
男性はカンペを取り出して、語り始めた。
「この映像はえ~西暦20XY年1月に撮ったものである。君はある病気にかかってここの病院に来た。手術は成功し、病気は治ったが術後の様子が悪かったのでそのカプセルで休養しておった。」
―僕は病気になっていた?
「しかしだ。超大国が超化学兵器を使ったせいで世界はゾンビだらけ。この施設も廃棄が決まった。だが、君を連れていく余裕がないので、君を置いていくことにした。本当に申し訳ない。」
―僕は置いてかれたのか。
「君を助けるためにAIを用意しておいた。詳しいことはAIに聞くように。では検討を祈る!ちなみにこのボタンは記憶がなくなった人間が一番押しやすい雰囲気のボタンランキング第1位だ。」
モニターに映し出された動画は消えて、元の画面に戻っていた。
動画で言われた通り、カプセルの横にある柱のような機械のところへ向かう。
柱の機械にはさっきの機械にあったような赤いボタンがあった。
僕は迷わずそれを押した。
ピーポーパーゴゴゴゴゴゴ、という音が鳴った後、柱の機械が起動し始めた。
―『起動シークエンス、システムオールグリーン。AIりんぐでぃんどん@オペ子始動します。Helloあなた。こちらオペ子。元気デスか。』
柱に着いている大きなモニターには無機質な表情をした少女が映し出されていた。
「え、え、え?」
突然、柱の機械から声をかけられたので返事に困ってしまう。
「あなたは今日からここで生きていかないといけませんデス。頑張って生きていきましょう。わかったデスか?Do you understand?」
無機質な表情のまま、エイエイオーと拳を振り上げている。
「わ、わかりました。」
少女はコホンと咳払いをすると、モニターにチャート表を映した。
「OK。では、まず最初にすることを教えますデス。問題デス。ここで生きていくのに必要なものは次の内どれデス?1.食料。2.水。3.服。10秒以内に答るデス。」
モニターにカウントダウンを表示したと思ったら、すごい勢いで減っていく。
「え、え、え~と、2番?」
返事をすると、すぐにモニターに大きな×印が表示される。
「ブッブ~正解は全部デス。ということで、1~3番を手に入れる方法を伝えます。頭にインプットしてくださいデス。」
少女は小さい指を三つ立てて、モニターを示してくる。
「1、食料は後ろにある緑の扉の部屋に入ると手に入りますデス。2、水は後ろの青の扉の部屋に入ると手に入りますデス。3、服は1と2を手に入れたら私がプレゼントします。わかりましたデスか?わかりましたデスよね?」
表示されたモニターには3つの指示が書かれている。
「わかりました。」
―まだよくわかっていないので、しばらくは従うことにしよう。
「では取ってきましょう!それまでは私は省エネモードにいますデス。」
柱は言い終えると電源が消えたように静かになった。
言われた通り、緑の扉の部屋に入った。
中には透明なケースに様々な食べ物が入ったものが陳列してあった。
肉、魚、野菜、果物と様々な物があった。
試しに林檎の入ったケースに触ると、ケースの蓋が開いて林檎を取り出すことができた。
空になったケースはそのまま床に埋まり、なくなってしまった。
林檎を一かじりすると、甘酸っぱい味が口の中に広がった。
―うまい、うまい、うまい。
気づいたら芯だけになっていた。
―芯はどうしよう?と辺りを見ているとゴミはこちらへと書いた箱があった。
中を覗き込むと何もない闇があった。ポイと芯を投げ入れるとオーン!という叫び声が聞こえた。
驚いてその部屋を後にした。
次に隣にあった青の部屋に入った。
水、ジュースのような物に、酒、ワインやウイスキーのような物があった。水らしき瓶を取って飲んでみた。
ゴクッ。水であった。
空になった瓶をどうしようかと周りを見るとやはりさっきと同じ、ゴミはこちらへと書いた箱があった。
瓶を入れるとオーン!という叫び声が聞こえたので、部屋を急いで出ていった。
1,2が終わったので柱に戻って、赤いボタンを押した。
スピーカーに電源が入ったようだ。
「Helloあなた。1、2できましたデスね。では次は服デスね。柱の下に取り出し口あるからのぞいてみてデス。」
取り出し口のようなところがあり、そこを開けると白い服が入っていた。
言われた通り、その服に着替えた。
「OK、いい感じ。じゃあ、次の話デスね。まず今どうなっているか知っているデスか?」
「わからん」
「では、どうなっているのかこれを見てデス。」
するとモニターに映像が映った。
街中にゾンビが徘徊する様子が映し出される。
ゾンビの姿は見るに堪えない状態であった。内臓が飛び出たものまでいる。
「見たね。これが今の世界。あなたはこの世界で唯一生き残った人間なのです。さあ、頑張って生き残ろう」
エイエイオーと少女はモニターの中で拳を振り上げている。
「だ~か~ら~もう人間は絶滅したのデス。だから生き残ろうねって話デス!」
―は~ははは。乾いた笑いしか出てこない。でも、きっとこれが現実。
あなたは生き残れるのか。そして幸せに生きれるのか。
◇ ◇ ◇
一日が経った。
食べるもの、飲むものにはしばらく困らない。
あの柱のAIは変な人格はあるものの、質問にはしっかり答えてくれる。
施設の中も誰もいないっていう部分を除けば、寒くも暑くもなく快適な状態だ。
―あとはこの世界をどう生きるかだ…。
柱のAIに話しかけようと近づくと自動的に電源が入るようになった。
昨日まではボタンを押さないと動かなかったのに何故か自動化されている。
「オペ子、ちょっと思ったんだが、生き残るだけならここにずっと居ればよくない?」
外はゾンビだらけ。安全なところにいるべきだと思った。
「Helloあなた……ピーピーガーガー、ここにサバイバル不適合者がいます。今すぐこの施設を爆破いたしますがよろしいデスか?」
オペ子がドクロマークのスイッチを取り出す。
「お、おい。ちょっと待ってくれ。頑張るから!」
僕は慌ててやる気を見せた。
「Yes、そうデスよね。ま~さ~か~、ニート生活なんて考えていないデスよね?」
オペ子はスイッチをポイっと捨てる。
「わかったよ。でどうすればいいんだ?」
僕の問いを聞くと、オペ子は牛乳瓶の底のような眼鏡をかけて説明を始めた。
「そうデスね。まずはこの家の使い方をマスターしていくところから始めるのがよいデス。」
モニターに黒板を用意して説明を書き始めた。
「しばらくの食料事情については一日で理解できたでしょう。次のステップはこの家ができることについて知りましょう。ステップ1、武器庫の使い方デ~ス。」
オペ子は武器でゾンビを倒す絵を黒板に書いた。
「武器庫?」
「そうデ~ス。大型モニターを見るのデス。」
モニターにゾンビの模式図が映し出された。
「ゾンビは基本的に生き物しか襲わないデス。つまりあなたが外に出たら即攻撃を受けるデス。つまりやられる前にやれ的なノリが必要なのデス。」
―ムリじゃん……まあいいか。
「でどうやって倒すんだ?」
「モニターを見るデス。ゾンビの上半身の色が変わっているところが弱点デス。頭は一撃デス。上半身は2~3発程度デスかね。下半身はほぼノーダメージで~す。」
オペ子の描く絵がファンシーすぎて頭に入ってこないこと以外は理解できた。
「つまり、頭の方狙って攻撃すればいいってことだな。」
「そうデスね。ただし問題があるデス。ここの家にあるのは銃しかないデス。」
―銃?
聞きなれない言葉に首を傾げる。
「あ~記憶ないでしたね。オペ子理解デス。論より醤油って言いますもんね。では武器庫にご案内で~す。武器庫は私の後ろにある赤色の扉デス。」
折角だから僕はこの赤い扉に入る。
中に入ると、黒い金属製の筒と金属色の木の実のようなものがある。
とりあえず、両方ともを抱えてオペ子の所まで戻った。
「銃ってこれのことか?」
持ってきた物を差し出す。
「お~正解デス。使い方をモニターに映すデスから、見るのデス。」
モニターに銃と弾が表示され、弾を込めて、撃つ様子が流れた。
「わかったデスか?」
なるほど。この筒が銃で、この木の実みたいなのが弾か。
「わかった。やってみる。」
僕はすばやく弾をリボルバーに込めて、引き金を引いた。
「え?ここで撃つのは!ちょ…」
バーン! ドカン! バキャ!
銃から放たれた弾は、最初に入っていたカプセルに当たり、ガラスが粉々になっている。
「お~、すげ~。見たかオペ子…オペ子さん?」
柱から無数のアームが出てきてアームにはハンマーやナイフが握られており、今にも襲い掛かられそうであった。
「あなたがおバカなのは理解デス。オペ子理解。でも次は勝手にやらないこと。家で弓も拳銃も打たないこと。警告。Do you understand?」
振り下ろされたハンマーは頭上ギリギリに、ナイフは髪を掠めていた。
「あ、あ、あ、わかりました。」
「わかればいいのデス。続きデスね。モニター見るのデス。」
モニターには銃を使うときの注意事項が映された。
「銃はゾンビを倒しやすいデス。でも弾はこの家にあるだけデス。なくなったら終わりデス。なので外で銃に代わる物を探します。理解しましたか?」
「わかったけど、何を探せばいいんだ。」
オペ子は少しだけ考える素振りをする。
「……そうデスね。まあゾンビを倒せればいいので、叩けるような木がいいですかね。」
「じゃあ、簡単だ。木を手に入れるぞ!で、木ってなんだ?」
オペ子は飽きれた顔で、モニターに木の棒でゾンビを叩き割るような絵を映す。
「どこにでもあるデスから好きな形を持ってくるといいと思うデス。」
「よ~し、木を取りに行くぞ!」
僕は銃を抱えると、外へ行こうと立ち上がる。
「待つのデス。最後まで話は聞くデス。」
ロボットアームに背中を掴まれる。
「家を出る前に覚えておくことデス。家に戻るときは家の外にある赤いボタンを押すデス。」
「よしわかった!ん?戻るとき?出るときは?」
オペ子がニヤっと笑う。
「そんなの決まっているデス。私が自動的に出すデス!」
そういうとロボットアームが出てきて、僕の体を掴むと壁が開き、ゴミはこちらと書かれた箱が出てきた。
―あ、あれは食糧庫にあった。
そう思う間もなく、アームから投げ飛ばされて箱の中に落ちていった。
かくして、あなたは外に出ることになった。
あなたは生き残れるのだろうか?
次回に続く。




