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Free City  作者: 七賀ごふん
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48/82

#6



「兄想いの……良い弟さんですね」

ありのまま、感じたままに答える。それを聞いた司は少し誇らしげに頷いた。

「文人は俺よりずっと出来がいいよ。この街に来るとき、俺一人じゃ心配だからって一緒についてきたんだ」

兄弟仲は確かに良いようだ。けど、今は他に訊きたいことがある。文人のことも引っかかったが、できるだけ窓際に寄って外を覗いた。

「司さん」

見渡す限りの闇。

ここも自分の家と同じだ。一筋の光も見えない。

「弟さんからちょっと聞いたんですけど……司さん、誰かに付きまとわれてたんですか?」

「あぁ……そんなことも言ってた? かるーくだよ。今はすっかりなくなったから大丈夫」

「エンジニアだって……知り合いですか?」

「うん。知り合いだね」


「東川って人じゃないですか? 東川、稔」


カーテンを開けて振り返る。司は驚いた顔でこちらを見ていた。


「そう……、彼だよ。……どうして知ってるの?」


あぁ……。

嫌になって上を見上げる。

窓が開いていたら、このまま後ろに倒れて下に落ちることができたのに。飛び降りる絶好のタイミングだっただろうに、残念だ。

ようやく手に入れた真相は、予想していた中で最も最悪なものだった。司は稔と付き合ってなどいない。むしろ稔から一方的に好意を寄せられていた、被害者……。


「彼とは仕事で一緒になったことがあってね。親切だったけど、俺が同性愛者だと打ち明けてから困ることがたくさんあったんだ。盗撮されたこともあって……けどある時からパッタリ止んで、俺の前に現れなくなった。由貴君は彼がどうしてるか知ってる?」


「さぁ……俺も今は知りません」

「今は?」

「今も……昔も」


頭が上手く働かない。そのせいか疑問形で返してしまった。

墓穴を掘ったのは間違いない。両サイドに手が伸びる。自分を追い詰めるように佇む彼を見ていた。

「そうか、稔君が……。俺に近付いた理由と関係あるんだね」

視線を外し、唇を噛む。司は淡々と、「黙るならイエスと受け取るね」と話した。それだと黙秘権はなさそうだ。

時計の針が進む度、ナイフの切っ先が喉元に近付く。そんな気がしてる。

「君と稔君はどういう関係なの?」

「どういう関係だと思います?」

「質問に質問で返すのは感心しないな」

こんな時でも、彼は優しく微笑む。だからなのか、つられて笑った。


「元彼、です」




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