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第10話 方針

モカ……ね。自分で決めたとはいえ、なんだか変な気分だ。

いままでの人生では男の名前で呼ばれていた人間が、これからは女の名前で呼ばれることになるなんてな。


「モカ?あんちゃんそういう可愛い名前が好きなのか?まるで魔法の飲み物みたいな名前だな」


「……あんまりそう言った発言は好かないな。……ちなみにこの世界にもそういう飲み物があるのか?」


まさかと思い一応聞いてみる。が


「ん?どうした?なんか言ったか?」


当の本人は話を聞いていない。

まぁいい。


「いや、なんでもない」


「そうか、まぁいい名前じゃないか?じゃあモカよ、またな」


爺さんは俺をモカと呼んで笑顔で送り出してくれた。その笑顔を見ていると何故か身震いがするのはやっぱり気の所為なんだろうか。


……ひとまず考えないことにしよう。


「さて……」


当初の目的通り傷は治った。

街を見て回りたいのはやまやまなんだけど


「まずは宿屋だな」


女になったこと、金策事情、魔導具の細かい検証、諸々の問題や内容をまず整理したい。

その為に安心して落ち着ける場所はやはり【カラオケボックス】になるが、街中で【カラオケボックス】を使って万が一騒ぎになったりしてもマズい。ので、まずは宿屋を借りて個室内でスキルを使う。それが先決だ。


しかし……


「手持ち、だいぶ心許なくなったな」


高値の魔導具を買ったせいで懐が非常に寂しくなっているんだよなぁ。

金貨200枚から一転して残り40枚だ。この世界的にはコレでもまだまだ大金らしいけど、ベネットさんの時のように都合よく金が転がり込んでくるとは限らない。なるべく節約していきたいところだが……


「ま、今はあーだこーだ考えてもしょうがないか」


まずは宿だ宿。安くて静かな宿屋を探すか。

この世界にネットがあれば即座に宿情報を得られるのにな。

なんてことを考えていると不意に腹が鳴る。


「先に飯にするか」


腹が減っては何とやらだ。

俺は手頃な飯屋を探して歩き出した。

この世界の食文化とかは知らないけど美味いモンは食べたいしな。



近くにあった食堂で簡単な飯を終えた俺は、宿を探して街を歩く。

うん、なかなか美味かった。黒いパンに野菜のスープに獣肉っぽいステーキ。文字が分からないからおすすめを適当に頼んだが悪くない味だった。肉や野菜本来の旨みというか……調味料をあんまり使っていない感じの味付け。素材本来の味ってやつか?


「ちょっと薄味だったけどな」


お値段は銅貨6枚。んー……日本だと600円くらいになるのか?あの値段でこの味なら、今度はもう少し高めの店でもいいかもな。

あれだけ優しい味付けの料理を食べたら胡椒たっぷりの野菜炒めとかも食いたくなるしな。


陽もだいぶ落ちてきた……が、まだまだ人の往来は多い。これだけデカイ街だからな。夜も賑わってくるだろ。

道行く人たちを眺めながら街中を歩いていくと、小さな看板が目に入る。

そこにはベッドのような感じの絵柄と相変わらず読めない文字が刻まれていた。


「お、ここ宿か?」


看板から視線を上げると、こじんまりとした如何にもな建物が目に入る。店の名前は分からないが、外観はわりと綺麗で悪くなさそうな印象を受ける。


「いらっしゃい、泊まりかい?」


入り口を開けて店に入ると恰幅の良い中年のおばちゃんらしき人物が出迎えてくれた。どうやら彼女が店主らしい。


「あぁ、部屋は空いてるか?」


「えぇ。1泊銀貨1枚よ」


銀貨1枚か。相場が分からないがボラれてる感じはしないな。日本円なら約1000円だ。コロンブスもびっくりの金額だろう。


先払いで支払いを済ませ指定された部屋へ。

部屋中はシンプルな作りの質素な部屋で、ベッドと机、クローゼットがあるくらい。窓は小さなものが1つ。古い子供部屋って印象を受けるが……寝るだけって考えたら、まぁ上等な金額設定だろう。


「ふぅー……」


初めて来たホテルのお約束、ベッドにダイブし倒れ込む。硬い!鉄製のベッドかと思うくらいに硬い!現代のフカフカ布団やマットレスみたいな快適な寝具とまでは流石に期待してなかったけど硬すぎる。


まー……中世並の暮らしならこんなもんか。


「ちょっとガッカリだなぁ。ま、俺にはコレがあるから別にいいんだけど」


部屋の外に誰も居ないことを確認してから【カラオケボックス】のスキルを使ってドアを出現させ、部屋に入る。

相変わらずの異質な力にまだちょっとビビる。


「けどやっぱこの空間が一番落ち着くなぁ」


防音、完全個室、有料だが飲み物や軽食は注文1つですぐに届く、完全な俺だけのプライベートルーム。

何より、誰にも干渉されないってだけで最高の空間だ。部屋を出てからまだ1日も経っていないのに妙に懐かしい感じがする。中世の街並みに触れていたからか、テレビや機械類を見るだけでも安心する。


さてと……戻って来たはいいが、まずは何から始めようか。

久しぶりに現代のテクノロジーで時間を確認するとまだ夜の8時前。ずっとカラオケ内にいたいが、『認識阻害』のことや金のことを考えるとずっとここにこもっている訳にもいかない。


「うし、ひとまずは情報の整理からだな」


まずは女になっちまったこと。これに関しては爺さんも調べてくれるみたいだが、戻れるまでの服とかもどうにかしないとなぁ。いま着ている服はそのまま男物のままだし。


これが以外と気になるもんで、男物の服を着ているせいか、とんでもないことになっている。ブラジャーもないから服の隙間から膨らみがチラチラ目立ってるし、その胸は痛いのなんの。

なんか股間もムズムズするし、服もズボンも全部サイズが合ってないからか歩きずらい。


なんというかこう……男だったからあたりまえっちゃあたりまえなんだけど、どうも女の身体というのがしっくりこない。馴染めないと言うか慣れない感じがある。


女体化に関しては、まず今の自分の身体にあった服を入手する。魔法の効果で見た目的には男を偽装できても俺自身が不快なんじゃ意味が無い。服は流石にカラオケボックスじゃ頼めないし、明日街で探すか。

男に戻れるかに関しては完全に爺さん頼みになるが仕方ない。期待はしておこう。


「次は……金か」


そう、ぶっちゃけ女体化より大事なこと。金だ。

これに関しては色々考えなきゃいけない。

スキルを使うにしろ、あの世界で生きるにしろ重要なのは金だ。それはどこの世界でも変わらない。

とりあえず現在の所持金貨は40枚。40万って考えたらそれなりに大金だ。


……が、どう稼いでいくのかが問題だ。この世界での上手い稼ぎ方、物の値段の基準、その辺をもっと詳しく知らないといけない。


幸いベネットという商人に出会えたおかげで銀製品が高く売れるということは理解できた。けどあんなものはただのラッキーだ。


次またあんな商人に出会ったとしても買い取ってもらえるかはわからないし、下手したらもっと安値で買い叩かれるかもしれない。

それにもしかしたら、ベネットが特別だっただけで、街で普通に売れるかもまだわからないのだ。


確かめるには……直接街の露店に売りに行ってみるのが一番手っ取り早いけど……。

捕まったりしないよな?ベネットの話によれば、この世界での銀製品はまだ一部の金持ちにしか出回ってないらしいからな。


ひとまず売れる可能性はあるがリスクが高いってとこだな。まぁでも一応1000個くらいは注文しておこうか。


なに、どうせタダだ。あって困るもんじゃ無し。それに今は『マジックバッグ』があるから持ち運びにも困らないしな。


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