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余命一年の悪役令嬢は、愛する人に嫌われるために画策します  作者: 衛星 奏志


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12/12

悪役令嬢、愛を掴む。

オフィーリア視点

 数度まばたきをする。


 ──夢?


 何も変わらない景色。


「フィー」


 呼ばれて振り向く。リンドールが覗き込んでいた。


「リド様?」

「うん」

「ど……して、ここに?」

「フィーに会いたくて」

「来てはダメなのに」

「どうして?」

「私はもう……」


 そこからは言葉にならなかった。


 次から次に涙が溢れる。


 会いたかったけれど、会えなかった人。


 そばに居られなかった、大切で大好きな人。


「フィー、見て」


 見せつけるように身につけた大切なあの指輪にキスをする。


 しっかりと、握られたその手は──


「会えない理由なんてもうないんだよ」


 無意識に、ぎゅっとリンドールの手を握り締める。


 温かいその手を。


 優しく触れる唇を。


 自由に動かせる指先を。


 リンドールを感じることのできるその全てを。


 感情が涙と共に溢れる。


「リド様」

「うん」

「リド様」

「うん。……フィー、愛してる」


 強く強く抱きしめるその腕を、安心できるその場所を求めていた。


「リド様、会いたかった。……大好き」


 泣き止むまで、リンドールは抱きしめていてくれた。




 リンドールの王位放棄を知らされたのは全てが終わった後だった。


 リンドールは王位継承権を放棄。臣下となった。


 西の辺境伯家に起きた継承問題。嫡男だった長男は病気療養中、医師である次男カールは配下の男爵令嬢に婿入りが決まっていた。

 嫡男に子供がいるが、まだ小さい。その子が大きくなるまで、辺境伯の地位をリンドールが一時預かりとすること。


 そして──


 屋敷の中からしか見られなかった海辺にリンドールと共に立っていた。


 はしたなくも二人とも裸足で打ち寄せる波の冷たさを感じていた。


 海も、砂浜もキラキラと輝いている。


「フィー」


 優しい声に振り返ると、リンドールが片膝をついていた。


「オフィーリア、君は私の唯一。二度と失いたくない。君とずっと共に生きていきたい」


 差し出したのは、リンドールの瞳の色の宝石の指輪。宝石の周囲に寄り添う石が花弁のように見える。


「王太子としてではなく、ただのリドとして君のそばに居させて欲しい」


 きっと、リンドールには王になる輝かしい未来があった。


 王になる為にこれまでやってきた努力や苦労を一番近くで見てきた。


 リンドールが王になることを誰よりも疑わなかったのはオフィーリアだ。


 オフィーリアの未来は一度閉ざされた。


 でも、それを繋いだのは他の誰でもなく目の前でこちらを見上げるリンドールだ。


 後悔がないわけではない。


 拙い画策。


 追いかけて、救いあげてくれた愛する人。


 リンドールが共に生きることを望んでくれるのなら。


 ……いや、オフィーリアも何よりも望む。


「はい。私も命果つその時まで、貴方のそばにおります」


 もう二度とリンドールの手を離さない。そう心に誓った。



 西の辺境の教会で、行われた小さな結婚式。


 介添人として立つのは、恩人である辺境の男爵夫婦。


 教会の鐘が鳴り響く中、新しい領主夫婦は辺境の人々に祝福された。


 街道を走る馬車の上、オフィーリアを見つめるリンドールに笑顔を返す。


「フィー、愛してるよ」

「私も、リドを愛しています」


 触れた唇に、大きな拍手が起こる。


『あいはかつのー!』

『しゅくふくするのー!』


 ワァと歓声が上がる。


 一緒に見上げた空からは、どこからかたくさんの花びらが降り注いでいた。

完結しました。

お楽しみいただけましたでしょうか。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。


ちなみにオフィーリアの侯爵家ですが、爵位を一つ落とし伯爵に。オフィーリアへの接見も一生禁止となります。

同居家族の目に見える不調にも気付かない無能と判断され、社交の場に居場所も無くなります。

何よりも、リンドールの怒りが凄まじいのでね。


さて、また次回お会いできればと思っております。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
これこそが真実の愛ですね。 素晴らしい作品でした。思わず、涙がポロリ。
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