『心理学者の悪用と応用』
※注意
これは、
人間の想像力を補強するための簡単な実験である。
ぜひ、
協力してみてほしい。
実験内容は単純だ。
文章によって、
人間がどこまで鮮明に情景を想像できるのか。
そして。
想像したものが、
どこまで現実認識へ影響を与えるのかを観察する。
安心してほしい。
危険性はない。
ただし。
読了後、
一時的に周囲への意識が強くなる可能性がある。
だが、
それは正常な反応だ。
人は、
見たものをそのまま認識しているわけではない。
視界に入った情報は。
脳が理解する前に、
感情によって別のものへ濾過される。
不安。
恐怖。
嫌悪。
つまり人間は。
“そこにあるもの”ではなく。
“そう見えてしまったもの”を認識している。
では。
実験を始めよう。
今から、
呼吸を意識してほしい。
吸って。
吐く。
吸って。
吐く。
普段、
人間はこれを無意識で行っている。
だが。
一度意識した瞬間。
“自分でやらなければいけない”
ような感覚になる。
浅くなる。
苦しく感じる。
タイミングが気になり始める。
不思議だと思わないだろうか。
生きるために、
最も重要な行為なのに。
人間は普段、
それをほとんど意識していない。
本来。
死なないためには。
意識していた方が、
健全なはずなのに。
つまり。
人間は。
“意識し続けること”に、
向いていない。
では次だ。
部屋の隅を見てほしい。
カーテンの隙間。
半分だけ開いた扉。
暗闇。
視界の端。
人は、
“何かが隠れられそうな場所”を認識すると。
そこに“何かいるかもしれない”
と想像してしまう。
もちろん。
実際に存在するわけではない。
だが。
脳は一度想像したものを、
簡単には切り離せない。
例えば。
夜。
電気を消した部屋。
黒くなったスマホ画面。
その反射。
あるいは。
今。
あなたの視界の端にある、
少し暗い場所。
……何を想像しただろうか。
人影。
視線。
こちらを見ている“誰か”。
安心してほしい。
正常な反応だ。
さて。
実験は終了である。
呼吸を意識したあと。
あなたは、
周囲への意識が少し強くなった。
部屋の隅。
カーテンの隙間。
暗闇。
視界の端。
そして。
“何かいるかもしれない”
という想像。
人間は。
一つの違和感を認識すると。
次の違和感を探し始める。
つまり今。
あなたの不安は。
あなた自身の想像力によって、
補強されたのである。




