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『愛を捧げる』

無償の愛を捧ぐのは、

いつだって子供の方だった。


 


とある親子の話をしよう。


 


その子は、

昔から“いい子”だった。


親に嫌われないように笑う


怒らせないように空気を読む


褒めてもらえる言葉を探す


欲しいものより、

喜ばれる答えを選ぶ


 


ただ、

愛されたかった。


 


母親はよく言っていた。


「あなたのためを思っている」


「こんなにしてあげたのに」


「親なんだから当たり前でしょう」


 


愛は、

いつから取引になったのだろう。


 


子供は親を選べない。


だからこそ、

壊れてもなお、愛そうとする。


 


愛せなくなったのではない。


愛したまま、

壊れてしまったのだ。


 


母親の顔色を窺うのが、

その子は上手かった。


怒られそうな言葉を避け


空気を読み


褒められる答えを選ぶ


 


「この子は本当に手がかからない」


母親は嬉しそうに笑っていた。


 


だが違う。


その子は、

手がかからないように生きていただけだった。


 


学校で嫌なことがあっても笑った。


本当は嫌だった習い事も続けた。


行きたかった学校ではなく、

母親が安心する進路を選んだ。


 


褒められるたびに嬉しかった。


嬉しかったからこそ、

期待に応え続けた。


 


母親に愛されたかった。


ただ、それだけだった。


 


だから。


苦しくても、

嫌いになれなかった。


否定できなかった。


 


母親は、

理想通りに育っていく我が子を見て、

自分は子育てに成功したのだと思っていた。


 


その子が、

一度も“自分で選んでいない”ことにも気づかずに。


 


友達も。


進路も。


好きなものも。


生き方も。


 


そして。


親すらも、

選べずに。

この作品のタイトル、

最初は『愛を捧ぐ』でした。


ですが、

“捧ぐ”という言葉にどこか主体性を感じ、

最終的に『愛を捧げる』にしました。


“捧げる”には、

そうせざるを得ない、

そんな意味も含まれている気がしたからです。


皆様は、

この二つの言葉にどんな違いを感じますか?

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