Ⅳ:カリナの進軍と地獄の道
【三日目は3エピソードを10分おきに公開いたします】
だが――、
そこから先はまさに〝地獄〟だった。
人間ではなく、魔族が支配する領域。
全ての物理事情が魔族に有利に働くように形作られてる。
まさに人間を排除する大地。
カリナたちはその恐るべき大地をひたすら、目的地に向けて歩き続ける。
本来魔界に住むはずの恐るべき獣が現れたこともある。
「報告! 魔獣出現!」
「全員迎撃体制! 弓兵、銃火兵を中心に遠距離で牽制しなさい!」
「はっ!」
カリナは即座に判断を下し魔獣を葬る。
魔王軍の派遣師団が待ち構えていたこともある。
「敵発見! 魔王軍隷下の魔族兵士の一団です!」
「攻撃陣形編成! 白兵歩兵、重装歩兵を中心に鋒矢陣形に移行! 弓兵及び銃火兵、魔導師兵は、後方からの支援準備!」
「了解!」
攻撃陣形を巧みに操り、敵からの攻撃に耐え、その直後に敵の陣形を崩し、これをしぶとく次々に撃破して行った。
さらには地形を利用したトラップが仕組まれていたこともある。
「地形崩落発生しました! 大地の岩盤に、重力制御魔法を感知!」
「魔導士兵に結界を生成しろと伝えなさい!」
地面崩落を魔法の力で食い止めた状態で静止させ、敵兵が通過した際に魔法を解除することで甚大な被害を引き起こす地形トラップだった。
これらをアルカナヴァンガード全体の連携力と、カリナの巧みな指揮能力で、次々に降りかかる問題を、くじけることなく次々に突破していったのである。
途中、野営を行うが火を炊くことは敵からの発見を誘発する恐れがあるため焚き火すらない過酷な野営となった。
毛布代わりのマントを羽織りながら木陰に寄り添い体を寄せ合って眠りにつく。
カリナが休みに着く時はエルリックが、そのマントを広げて中に入れて温めてやっていた。
「大丈夫か? カリナ」
「エルリック――」
エルリックは、カリナが10歳の時に、ネルガルの軍事国家から救い出された時、以来の付き合いになる。年齢が20歳以上離れているため、親子のような雰囲気になることがある。
「うん、これくらい平気。私がしおれていたらみんながまとまれなくなるから」
「分かった。なら無理はするなよ?」
「うん、ありがとうエルリック」
そう言いながらエルリックの胸に体を預けて、カリナは眠りに落ちていく。
そして、朝日が昇る前の薄明かりの森の中を全員で再び歩き始める。
カリナたち、アルカナヴァンガードは、着実に目標地点に向けて進んで行ったのである。
§
他の部隊との相互間連絡は魔導による通信魔法を用いておこなう。
アルカナヴァンガードにも魔導通信兵が複数待機している。それらのうちの1人がカリナたちの所へとやってくる。
「魔法剣士騎士団団長にご報告いたします」
「報告、拝聴します」
「はっ、各部隊、所定の3系統のルートに従いプトラード広原を離れ、シャドウクレスト山脈領域内各地へ順調に進軍を続けております」
カリナとともにエルリックやソフィアをミリアも耳を傾けていた。
「ブラッドレイブン要塞攻略には、ルミナリア王国騎士団と獣人系戦闘団が中心となり、その前哨として、ナイトフォール砦にアクアリス国防海軍海兵部隊とグローム戦闘兵団が向かっております」
カリナがうなずく。
「ブラッドレイブンは魔王軍最大の前哨基地です。ここの壊滅は魔王軍殲滅に最も重要です。戦果を期待すると伝えなさい」
「はっ! 続いて、ダークスウォンプ駐屯地基地ですが、グレインリーフ王国国防兵軍とエルフ部族連合戦闘団が中心となります。それと並行してデスウィンド塔攻略にモントクラウド山岳連邦軍とドワーフ戦闘工作団が魔導砲台破壊を目的として順調に接近を続けております」
「ダークスウォンプに配備されている兵を足止めするのは、作戦成功の必要条件、作戦の成功を祈念すると伝えなさい!」
「はっ!」
「では以後、変化があり次第、適時報告願います」
「了解いたしました」
通信兵が離れていく。だが、入れ替わりに別な通信兵がやってくる。その表情は険しく、そこからケラブノスは何かを察したようだ。





