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Ⅶ:緊急通報来たる

 中盤の難関地を突破したカリナたち――、

 聖剣の能力を大規模に用いたことでカリナは一時的に消耗していた。だが――

 

「もう、大丈夫です」

「よろしいのですか? 巫女様」


 背負われていたカリナは自ら団員たちの背中から降りた。

 

「えぇ、気力は回復しました。聖剣の力を行使する場合、体力よりも精神的な力の方が大きいので」

「たしかに、顔色も戻られましたね」


 その言葉に、周囲の者たちも安堵しているのが解る。

 そのまま、進軍列の先頭に立つエルリックたちのところへともどればエルリックたちの声が聞こえた。

 

「回復したようだな」とエルリック、

「無理はダメよ? まだ先があるんだから」とソフィア、


 二人は半ば、カリナの保護者のような顔がある。どうしてもこう言う言葉が出てくるのだ。

 カリナは気恥ずかしく思いつつも、嬉しくもあった。

 

「もう、大丈夫です、あとは目的地に向けて進軍するのみです」

「あぁ、そうだな」


 エルリックもカリナの言葉に頷いたのだった。

 すると、斥候兵を兼ねた通信兵の一人が駆け寄ってくる。

 

「ご報告!」

「なんだ?」とエルリックが視線を向ける。

「各地の戦況の報告が入りました」


 その言葉に期待を込めてカリナは告げる。

 

「話してください」

「はっ!」


 通信兵は片膝をついて戦況を述べ始めた。

 

「各ルート戦闘序盤、ブラッドレイブン要塞とダークスウォンプ駐屯地は陥落いたました! 同時にそれぞれの前哨戦地であるナイトフォール砦も陥落とのことです。この他、魔導砲台が確認されるデスウィンド塔は、モントクラウド・ドワーフ連合部隊により現在も熾烈な砲撃戦が行われ、本日夕刻までには攻略を完了する予定とのことです」


 その言葉にカリナが安堵する。

 

「いずれの地も、魔王軍増援の高速騎馬隊は障害にならなかったようですね」

「はっ! 敵増援は未確認とのことです」


 エルリックが言葉を添えた。

 

「ケラブノスとゲオルグがやってくれたようだな」

「はい! 彼らには本当に感謝しか有りません」


 ミリアが通信兵に問う。

 

「その他の攻略対象は?」

「はっ、ブラックリッジ砦、シェードヴェイル塔、グリムフォート要塞――、これまでの陥落地の戦勝を足がかりに、攻略を行うとのことです」


 その言葉にカリナは頷くとある事を命じた。

 

「各部隊に対して、武運長久を祈ると伝えてください」

「はっ! 直ちに!」


 通信兵は返礼をして、即座に走り出していった。

 全体の空気に安堵感が広がる中で異変が起きた。

 

「あら? ケラブノスに渡した魔導呪符の反応だわ?」


 ソフィアがケラブノスに渡したあの硬質クリスタル製の魔導呪符――魔法通信用の対になる物が反応したのだ。

 懐中に入れていたそれをソフィアは取り出すと、表面を触れて通信魔法を起動する。

 

「はい、こちらソフィア」


 ソフィアの問いかけから還ってくる反応を誰もが固唾をのんで見守る。

 

『こ――こち――ら! リザー……マン兵団! アル……ヴァンガード聞こえるか!』


 それは叫ぶような声だった。妨害があるのか音声はとぎれとぎれだ。


「どうしました?」

「強力な魔導妨害が仕掛けられてるわ。魔王軍の連中も必死ね」


 ソフィアは魔導呪符を必死に操作して魔導妨害を回避しようとする。音声が繋がる状態がなんとか維持でき、カリナはソフィアに駆け寄り、その魔導呪符に向けて必死に問いかけた。

 

「こちら、アルカナヴァンガード、カリナ・ウィングスです! どうしました?!」


 その問いかけの先に聞こえてきたのは想わぬ情報だった。

 

『敵高速騎馬……なる後続に〝大型魔獣〟を5個体確――リザードマン兵団……牙狼騎士団で戦力不……支援求む! 繰り返す! 支援求む!』


 非常に緊迫した状況が伝わってきた。

 

「 さらなる後続部隊? しかも魔獣ですって?」


 ソフィアの言葉を聞きながら、カリナは問いかける。

 

「なんですって?! 本当ですか?!」

『高速騎馬……〝おとり〟で――す! アルカ…ナァンガードを引き寄せてダメージを与……が敵の目的です!』


 その言葉だけで迎撃に向かった彼らが置かれた状況がいかに危険なものなのかがよく判った。

 カリナはその場で即座に反応しようとした。だが――

 

――ガッ――


 カリナの肩を掴んで止めたのはエルリックだった。通信に聞こえないようにそっと耳打ちする。

 

「カリナ――英霊召喚は無理だ、援軍派遣を検討しよう」


 さらにはソフィアも魔法通信用の魔導呪符を触れて音声をミュートすると神妙な面持ちでカリナに告げた。


「魔導士部隊により遠隔魔法で支援する方法もあるわ、焦らないでよく考えて」


 二人の真剣な顔にカリナは思わず息を呑んでしまう。

 

「エルリック――、ソフィア」


 そこにエルリックは畳み掛けた。


「カリナ、冷静に考えろ。この先、魔王城まで長い道が続く。我々の目的を見誤るな」


 カリナは思わず食い下がる。だが、ソフィアは冷静であり冷徹だった。


「ここで英霊召喚を行ったら、作戦全体での貴方の生命力のマネジメントが破綻を来す恐れがあるわ」

「しかし!」

「忘れてはダメよ! 私たちの本命は魔王討伐なの! 作戦全体でどれだけの力が必要とされるかわからないのよ!」


 それは事実だった。魔王という討伐の本命がいる以上、万全な状態で魔王のところへと勇者であるカリナが到達することが最大の目的なのだ。

 二人の言葉を耳にして、カリナは音声を止めたままの魔導呪符をじっと見つめていた。


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