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モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第三章 モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!

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98 モニカの婚約者9


 カリストの短い返事を、どう受け取れば良いのか。


「あの……先生」

「なんだ? まだ食べ足りないのか?」

「違いますっ。今の……」


 カリストの気持ちを聞けるチャンスは逃したくない。そんな思いで言いかけたが、カリストはそれを遮るように微笑んだ。


「よければ今夜、我が家のディナーにモニカを招待しても良いか?」

「先生のおうちですか?」

「前にお願いしただろ。いつか乳母に会ってほしいと」


 そう言われてモニカは、あっ。と思い出した。

 あれは確か、リアナのお見舞いへ行った日。お世話になってばかりなのでお礼をしたいと申し出たモニカに、乳母に会ってほしいとカリストが願った。

 あの時は、女子学生を家へ招くことに拒否感を抱いていたカリストだったが、やっとそのチャンスがやってきたようだ。


「はいっ。ぜひ、お伺いしたいです」

「感謝する。――さて、今回の成果を確認しようか」


 すぐさま話題を変えられ。モニカははぐらかされたような気分になる。

 それとも、イサークの求婚を拒否する意味で言っただけなのか。

 それを過剰に反応してしまったので、カリストは困っているのかもしれない。


 モニカは複雑な気分を抱えながら、ルーに声をかけた。


『ルー。話は聞き出せたみたい?』


 ピアスに触れながら尋ねると、ピアスがふわっと光り、それからルーがその場にぽんっと飛び出してきた。


「もっちろ~ん」


 作戦はうまくいったようだ。ほっとしながらモニカはカリストを笑みを浮かべ合った。

 しかし、ルーから聞かされた内容は、思いもよらぬものだった。




 ――イサークの精霊から得た話は、モニカたちが一年生の時のことだった。


 定期試験の結果が出たあと。ルカたちが遊びに行く計画を立てていたとミランダから聞かされたイサークは、ルカが聖女の守護者候補かもしれないと気づいた。

 それを邪魔すべくイサークは部下を連れて、密かにハイキングの尾行をおこなったのだとか。


 あの時点で、ルカはまだ精霊と契約していなかった。その状況でもしも、魔獣が現れたら。

 いくら剣術に長けていたとしても、精霊の力が無ければ魔獣は倒せない。

 窮地に追い込まれたところで、イサークが現れ颯爽と魔獣を倒したら。

 聖女はルカに失望し、イサークへ目を向けるかもしれない。


 そんな浅はかな期待を抱きながらイサークは、『未来の副団長』というポジションを餌に部下をそそのかし、魔獣を召喚させた。

 部下は部下で、自分ならば完璧に精霊を従わせることができると考えていたようだ。


 しかし部下の精霊はそうではなかった。無理やり魔獣を召喚させられたことに激怒し、部下を火だるまにした。

 それでも怒りが収まらなかった部下の精霊は、イサークにまで攻撃を仕掛けてきた。

 心臓にある傷は、その時にできたものだという。


「そんな、ひどい……」


 聖木の森にいる精霊は人間の味方で、この地に魔獣が溢れないよう、長年に渡り協力してきた種族だ。

 その精霊に、魔獣を召喚させるなどという非道は到底、許されるものではない。

 しかも、それをそそのかしたのはイサークで、人が一人亡くなったというのに平気な顔をして、未だにルカを陥れようと画策している。


「先生……。きっと私が求婚を断れたとしても、リアマ卿を止められません。彼はまた違う方法でルカ様を狙うはずです!」


 ストーリーを変えて事件を回避しても、イサークは新たな策略を練るだけ。

 ルカは、イサークによって人生のどん底に突き落とされなければ、報われないキャラなのだろうか。

 そう考えるだけでモニカは、身体が震えてくる。


 その震えを押さえるように、カリストがモニカを抱きしめた。


「心配するな。これだけの情報があれば、物的証拠も見つかるはずだ。必ずイサーク・リアマを、モニカやルカ・フエゴから引き離すと約束する」


 カリストは、モニカのお願いごとは必ず実行してくれる人だ。だからこそ、その言葉にとてつもなく安心感を覚える。

 一瞬前の不安と震えが嘘のように、モニカから消え去った。






 そのあと真っ直ぐに、カリストが身を寄せているビエント男爵邸へと、モニカは足を運んだ。


「まあまあ! あなたがモニカ・レナセール嬢ですね。ようこそビエント家へ。カリスト坊ちゃまの乳母を務めております、ソフィア・ビエントと申します」


 嬉しそうに玄関で出迎えてくれたのは、ビエント男爵夫人。髪の生え際に白髪が少し見える中年の女性で、事情を抱えたカリストを引き取っただけのことはあり、包容力に溢れた雰囲気の人だ。

 乳母であることを明かしたということは、モニカがカリストの事情を知っていることを彼は乳母にも話したようだ。


「初めまして。お会いできて光栄です、ビエント男爵夫人。レナセール伯爵家の娘、モニカ・レナセールと申します。先生にはいつもお世話になっております」

「ふふ。お世話になっておるのは、カリスト坊ちゃまのほうかもしれませんよ。レナセール嬢と出会われてからの坊ちゃまは、随分と楽しそうですから」


 割と最近までは、モニカが一方的にお世話になっているかと思っていたが、そうではなかったのだろうか。

 カリストへと視線を向けると、彼は困ったように小さく咳払いした。


「ソフィア。そういう話はモニカに負担をかけるから、控えてくれないか」


 こういう場面になると、途端に自信が無さそうになるカリストがちょっと可愛い。


「私は負担ではないですよ。先生が私のことを、夫人に話してくださったことが嬉しいです」


 そんな二人のやりとを見たソフィアは、微笑んだ。

 カリストが呪われていると知っても、態度を変えることなく接する人は貴重だ。

 しかも二人の間には、教師と学生の域を超えた親密さを感じる。


「レナセール嬢とは仲良くなれそうですわ」

「私も夫人には、先生のお話をたくさんお聞きしたいです」

「モニカ。もしかして……」


 なんとも言えない表情になるカリストへ、モニカはにこりとうなずく。

 やはり、攻略対象の幼少期は知りたいではないか。それがカリストなら、なおさらだ。


 カリストは少し照れたような表情で、ソフィアに視線を向ける。


「ソフィアのスケッチブックを、モニカに見せてやってくれないか」

「まあ! 坊ちゃまが自ら、あれをお見せになりたいなんて。今すぐにお持ちしますわね」


(スケッチブック?)


 なんだろうと首をひねったモニカへ、カリストは応接室へと案内しながら呟いた。


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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