表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第二章 女神の力をこっそり使いつつ乙女ゲームを支えるつもりが、ヒロインがバッドエンドまっしぐらなのですが

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/143

80 皆への告白2


「ううん。私も守護者は一人だけって決めていたから、気にしないで!」

「えっ……?」


 彼女の笑顔に対して、顔をこわばらせたのはモニカ一人だけではなかった。

 リアナとブラウリオ以外の全員が、表情を歪めて二人を見つめた。

 その理由がわからない様子のリアナは、こてりと首をかしげる。


「どうしたの皆?」

「リアナちゃん……。それは過去に前例がありませんわ」


 これはゲームの設定という意味ではない。この国の歴史をさかのぼっても、過去に聖女の守護者が一人しかいなかったことなど、一度もない。

 神殿で聖女の歴史を学んでいるはずのリアナなら、当然のように知っていることだ。


 モニカの言葉に対してリアナは、「えっ。でも……」と困惑するような様子でブラウリオを見た。


「俺は、四人分を補えるだけの力を手に入れるつもりだ。だからこの件に関しては口出ししないでくれないか」


(そんなこと、ゲームでは無理だったわ……)


 ルカしか攻略したくなかったモニカも、同じ考えを持ったことがある。けれど、いくらルカの能力を上げようが、上限を無視して好感度と信頼度を上げ続けようが、隠しルートのようなものは存在しなかった。


「そんなの……実際に無理だったらどう責任を取るおつもりですか!」


 噛みつくような剣幕で声を上げたミランダに続いて、ロベルトもブラウリオを睨みつけた。


「そうです殿下。仮に強い力を手に入れられたとしても、必要な属性が三つも欠けていては、結界が不安定になるはずです」


 ゲーム内のモニカが失敗し続けていたのも、それが理由だ。人間側に属性を持つ者がいるように、魔獣にも属性がある。そして、属性には相性があり、火は水に弱く、水は土に弱いし、土は風に弱く、風は火に弱い。

 属性がこのような関係であるため、全ての属性が揃った結界でなければ、完全に魔獣の侵入を防ぐことは不可能だ。


 そして普通の人間は、一つの属性しか持ち合わせておらず、精霊も一体としか契約できない。

 それこそ、モニカのように特殊な存在でなければ、守護者を一人だけにするのは無理な話だ。


「俺は、リアナが他の男と親しくするくらいなら、結界なんて必要ない! 魔獣が湧き出れば、倒せばいいだけだろ!」


 ブラウリオとて、具体的な策があるわけではないようだ。リアナを独占していたい欲のせいで、このような事態を招いている。


(殿下によるヤンデレバッドエンドルートは、完全に回避されていたわけではなかったんだわ……)


 モニカはやっと、そのことに気がついた。

 一か月前は、カリストの説得によってブラウリオは正常に戻ったかに見えたが、根底にあるリアナへの独占欲が抑えられたわけではなかった。


 リアナが守護者攻略をおろそかにしている理由について、もっと深く考えるべきだった。


「つくづく王太子としての資質に欠けておられますわね!」


 ミランダがテーブル越しにブラウリオに掴みかかろうとしたが、それを遮るようにリアナがブラウリオに抱きついた。


「皆、ブラウリオを責めないで! 私だって、他の男性と親密な関係を築かなければいけないなんて嫌よ! ブラウリオが悲しむことはしたくないの!」

「親密とは、あくまで聖女と守護者としての務め上のことですわ! そこに恋愛感情まであるとお思いですの?」

「私はそんなこと思っていない! けれど、周りの目は違うでしょう? ミランダとビアンカだって、私と婚約者が親しくなるのが嫌で反対したくせに!」


 リアナがぶちまけた本音が、聖女と守護者に関する問題の全てだ。

 皆、聖女には「役目を果たせ」と強要するが、自分たちの生活は壊されたくない。自分たちには被害の及ばないところで、聖女の役目を果たしてほしいと思っている。


 ミランダは返す言葉がない様子で怒りで震えており、ビアンカは罪悪感からかうつむいた。


「皆様、どうか落ち着いてください」


 このままでは、せっかく将来のために築いた関係まで崩れてしまいそうだ。


「婚約者がいないモニカちゃんにはわからないよ! 口を挟まないで!」


 しかしリアナは、モニカに対しても怒りを見せた。

 いつもは全身で「モニカちゃん大好き」を表現するようなリアナに、怒鳴られ、部外者扱いされるとは思いもせず。モニカは驚いて、言葉に詰まった。


 それを見たルカが、テーブル越しにリアナの腕を引っ張り上げた。


「リアナてめー! 言っていいことと悪いことがあんだろ!」


 そのままリアナを殴りそうなルカの動作を見て、モニカは悲鳴にも似た声で「やめてルカ様!」と叫んだ。


(どうしてこんなことになっちゃうの……)


 皆それぞれ思惑を秘めつつも、昨日までは上手く関係を築いてこられたのに。

 けれど、人が変わるほど必死なリアナの気持ちは、モニカは痛いほどよくわかる。

『守護者は一人だけがいい』その気持ちは、モニカも同じだったから。


 ゲームをしていただけのモニカは、上手くいかなくてもやり直せばよかったが、一度きりの人生を歩んでいるリアナは必死になるしかない。


「……私は、皆のことが大好きなんです。だから言い争いは止めてください……」

「モニカ嬢の言うとおりです。僕たちのこの関係を、言い争いで傷つけたくはありません」


 モニカの向かい側で、ロベルトがわずかに笑みを浮かべた。冷静で合理的だが、友情を大切にしたい彼は、一番にこの場の正常化を図ってくれた。

 ロベルトが冷静な態度でそう声掛けしたおかげで、この場の熱は一気に下がっていく。


(ロベルト様がいてくれて良かったわ……)


 やはりどのような時も、このメンバーの収集をつけられるのは彼しかいない。


「……ですが、どうなさるおつもりですの? もう少し具体的な計画を提示していただかなければ、私たちだけではなく国民が納得しませんわ」


 ミランダは感情的に振舞った自分を恥じている様子で、扇子で口元を隠しながらブラウリオを見た。


「……聖女を守るのは一人だけでいいんだ」


 けれどブラウリオは、ミランダに応えているというよりも、自分に言い聞かせているようにぶつぶつと呟くだけだった。

 皆に自分の考えを全否定されつつも、まだそれを肯定しようとしているような。


(もしかして殿下は、かつての勇者みたいになりたいのかしら)


 モニカはふと、そのような考えが浮かんだ。ブラウリオの地位ならば、正確な歴史を知っていてもおかしくはない。歴史書からは消された、女神と勇者の話を。

 勇者の子孫であるカリストを敬愛しているのも、憧れによるものなのかもしれない。


 かつての勇者は人間でただ一人、女神を守り抜いた者だった。

 けれどそれは、女神が四属性の精霊と直接契約できたから可能であったこと。守護者なしでは精霊の力を使えない聖女とは、状況が違う。


「僕たちはお二人を支えると宣言したようなものですから、お二人が破滅しないためにも対策を練る必要がありますね」

「この国の未来が暗すぎて嫌になりますわ。モニカ嬢の願いでなければ絶対にこのようなことは――」


 ブラウリオとミランダがそう述べたことで、話し合う雰囲気が整った。


(皆……)


 モニカはほっとしながら、それぞれ考え始める皆を見つめた。

 ただ責務を押し付けるだけの関係ではない。一緒に考えるための信頼は養われている。

 本音で言い争っても、その部分は崩れていなくて良かった。


 そう安堵しつつ、モニカもある考えが閃いた。それを確かめるために、心の中でルーに呼びかける。


『ルー。教えてほしいことがあるの』

『な~に~?』

『私は属性に関係なく、複数の精霊と契約できるのよね?』

『そーだよ! モニカは女神様だから』

『それなら、私が聖女の守護者になれないかしら?』


 聖女の守護者になれる者の条件は『精霊と契約した者』これだけだ。女神が守護者になれないとは書かれていない。そもそも、想定すらされていないだろうが。

 要は、聖女へ精霊の力を分け与えられる者なら、誰でも良いはず。


『できるけどぉ~……。それって、逆じゃない? 仕えるべきは聖女のほうだよ』


 モニカにしか見えていないであろうルーは、納得いかない様子でモニカの目の前でクルクルと回り出した。


『私が女神だと打ち明けると、ゲームが総崩れになりそうで怖いもの』

『モニカはもともとゲームに存在しているよ?』

『それって、モブキャラとしてよね……』

『モブこそ最強!』


 ルーは力いっぱいに両手を上に突き出した。


(まさかルーはモブ推しなのかしら……)


 最初に出会った四人の精霊の中で、ルーだけが強引にモニカと契約状態になった。それだけ熱意があったことになる。


『……もし私がリアナちゃんの守護者になるとしたら、ルーも手伝ってくれる?』

『モニカがそうしたいならいいけどぉ~?』


 納得していない様子ながらも、頼られて悪い気はしていないようだ。口を尖らせつつも、軽快に揺れている様子が可愛い。


『ありがとうルー! あのっ、それから、私がリアナちゃんの守護者になってしまったら、先生を私の守護者にすることはできないのかしら……?』


 ここだけはしっかりと確認しておかなければいけない。国の平和も大切だが、モニカも自分の人生は諦めたくない。

 カリストとずっと一緒にいる手段はほかにも無くはないが、彼が守護者になることを望んでいるので、それを叶えたい。

 もしもどちらか一方しか選べないとなれば、リアナには悪いが他の方法を探すしかない。それほどモニカにとっては、カリストは大切な存在だ。


 祈るような気持ちでルーを見つめると、彼は任せろと言わんばかりの表情でモニカに向けて、小さな親指を突き上げた。


『モニカは女神様だよ。なんでもオッケーに決まってるよ!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

gf76jcqof7u814ab9i3wsa06n_8ux_tv_166_st7a.jpg

◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ