第14話 経営資源としての『カネ』
ある日の美琴の部屋にて…
「………ふぅ。今月もどうにかギリギリで踏みとどまったわね…」
「どうしたの?お姉」
自分の机に向かって座っているお姉を肩越しから覗き見ると、机上には『家計簿』と書かれた帳面が置かれている。
「お姉。家計簿つけているの?会社勤めのキャリアウーマンなのに…」
「主婦じゃなくても、自分自身のお金の流れを把握するためには、家計簿をつけるのが一番なのよ。で、今月もどうにかギリギリ赤字にはならなかったという訳よ」
“バサッ”
そういうとお姉は家計簿の今月のページを開き、一番下の「翌月繰越高」を指さす。
「ギリギリ…って、5万円も余っているじゃん!!」
「5万円もって………実家住まいで5万円位の剰余金が出るのは、当たり前でしょう!」
「まぁ、確かにそうか。家賃や食費、水道光熱費とかって、パパやママが出しているんだもんね…」
「私も、パパに毎月の給料から少しは出しているわよ。もう社会人なんだから。それでも、5万円しか余らないって、もしこれが一人暮らしなんかしていたら、1円も余っていないってことになるでしょ!?」
「確かに…」
「それに、仮に毎月5万円を繰り越せたとして、1年では60万円、10年で600万円、仮に私が定年の65歳まで、今と同条件で会社で働いたとして、貯蓄に回せるのは2,400万円位にしかならないわ。中古で2,000万円位の自宅を購入できたとしても、残るのは400万円。定年後にゆとりある生活ができると言われている老後資金の3,000万円には程遠いわね…」
「お姉の話を聞いていたら、この前の経営学の講義を思い出したよ………」
「企業にとっても、お金って大事だからね」
「うん。私たち人の場合は、いくらお金を繰り越せているか、いくら貯蓄に回せているかで判断できるから簡単だけど、企業の場合は 勘定合って銭足らず の場合があるから、注意が必要だってね」
「利益が出ている会社に、必ずしもお金が大量にあるとは限らない、という話ね。うちの会社の経理に配属された同僚も、毎月『資金繰り表』とにらめっこしているって言ってたわよ」
「 収入 と 支出 に分けて科目別に分類した表のことだね。簿記でいう『キャッシュフロー計算書』みたいなものだったっけ?」
「キャッシュフロー計算書よりも読みやすい書類だと思うわ。現金売上や売掛金の回収といった『経常収入』から、現金仕入や買掛金、人件費支払といった『経常支出』をマイナスし、借入金や手形割引、返済や貸付金といった財務収支をプラスマイナスして、翌月に繰り越す資金残高を割り出す表ね」
「確かに、簿記で勉強するキャッシュフロー計算書よりも分かりやすいかも知れないね」
「本来の営業から得られる経常収支で、借入金の返済が可能かどうかや、資金残高に余裕があるかを確認できるから、経理の人間がにらめっこするのも頷けるわね」
「勘定合って銭足らずの状態が発生するのは、信用取引が多かったり、商品の在庫を多く抱えている場合に発生するんだったよね?」
「それ以外にも、借入金の返済があったり、備品や建物といった固定資産 (設備投資)を多く所有している場合にも発生するわ」
「確かに、備品や建物って、資産価値は確かにあるけど、毎年減価償却って費用が発生したり、すぐに売却して資金化できなかったりして、会社のキャッシュフロー的には鈍化する要因になるんだったよね」
「ええ。うちの電鉄会社の場合は、駅ビルって建物を所有して、テナントとして多くの店と契約して貸し出しているけど、以前に比べて借りたいって顧客が増えているって、この前会社の偉い人が言っていたわ」
「建物を自社所有して毎年減価償却費を計上しつつ資金化の難しい固定資産を所有した方がいいのか、家賃を支払ってテナントを借りて、好条件の場所で営業をした方が得なのか…」
「それは業種・業態・企業規模によってまちまちなんだろうけど、企業が所有するモノを減らして資金化し、貸借対照表から外すというオフバランス化の観点から考えると、テナントを借りた方が良いという結果になるのかも知れないわね」
「いずれにしても、私たちの生活にしても、企業活動にしても、家計簿だったり資金繰り表だったりで、損益だけじゃなく、 資金の流れ(キャッシュフロー) をチェックすることが重要って訳だね」
「そういうこと………ところで、美琴はしっかり貯蓄できているの?」
「まぁ。毎月2万円位は…かな。でも、お姉の話を聞いて、もう少し貯蓄に回す金額を増やそうかなぁ、って思ったよ」
「大学の講義や先輩とのこともあるんだから、節約し過ぎたり、バイトを過度に増やしたり、無理はしない程度に、ね」
「は~い!」
第15話 に続く
☆検定問題にチャレンジ!!☆
次の、企業の資金繰り表の内容について説明した1~4のうち、正しいものを1つ選びなさい。(剣世炸作成 オリジナル問題)
1.現金売上や売掛金回収、受取手形入金などの項目は『経常収入』に分類される。
2.借入金返済や貸付金、定期性預金預入などの項目は『経常支出』に分類される。
3.現金仕入や買掛金支払、人件費支払などの項目は『財務支出』に分類される。
4.借入金入金や手形割引、定期性預金取崩などの項目は『特別収入』に分類される。
正しい選択肢は…
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1.現金売上や売掛金回収、受取手形入金などの項目は『経常収入』に分類される。
☆ 解 説 ☆
企業で作成される資金繰り表では、2は『財務支出』、3は『経常支出』、4は『財務収入』に該当するため不適当となり、正しいのは1ということになります。




