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少女の蛹  作者: カラクリカラクリ
12/30

金の皿

「お嬢さん」


肌を震わせるように響いた花火の音に、身を竦めた私を支えたのは男の手。

気付けばそこは、闇に落ちる前に見たカラフルな町の屋敷前だった。


「わ、私」

「いやぁね。どうしたの? 早くお入りなさいな」


けらけらと笑う女の向こうで開いた屋敷の扉が、まるで大きな口を開けて贄を待つ何かのようで、私は思わず口を押さえる。

一瞬荒れ果てた町の中に聳える、あの黒々とした塔が屋敷と重なって、私は気づいた事実に戦いた。

あれは、此処だ。

過去なのか、未来なのか。

それとも平行世界なのかは解らないが、あれは確かに此処だった。


「おかえりなさいませ、奥様」


真っ白なエプロンで手を拭きながら、屋敷の中から老婆が顔を見せる。


「料理の準備は完璧かしら? お客様よ」

「それはよろしゅうございますね。早速、お客様用の金の皿に豚を一匹載せましょう」

「それが良いわね。まるまる太ったやつを頼むわ」


女の上に、老婆の上に、後から後から薔薇が降って、見る間に二人は真っ赤に染まった。


「や」

「お嬢さん?」


身体の震えが止まらない。

訝しげな男の腕に縋り付いて、私は目を閉じて首を振る。

此処は駄目だ。

此処は嫌だ。


「嫌。此処、嫌、助けて」



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