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第12話 初めてのボス戦

ついに、この時が来た。


ひかりん:やっとここまで来たね。


「はい……ひかりんさんのおかげで、ここまで来ることができました」


僕は今、第10層のボス部屋の前に立っていた。

目の前には、これまでの通路とは明らかに違う大きな扉がある。石造りの両開きで、表面には何かの紋様が刻まれていた。


その異質さに気を取られながらも、同時に胸の奥が高鳴っていた。ここまで来たんだ、という実感が湧いてくる。


ひかりん:ここのボスはハイゴブリン。通常のゴブリンとは比べものにならないぐらい大きくて、力も強い。そして棍棒で攻撃を仕掛けてくる。

ひかりん:それでね、ここからは私、アドバイスしないから。


「……え?」


ひかりん:ここまでの九層分、いろんなモンスターと戦ってきたでしょ。きっと君には、これまでの戦いで得た力がある。だから大丈夫!君ならきっと勝てる!だって私が育てたんだもの!


胸の奥がぎゅっと締まった。

嬉しいのか、不安なのか、自分でもよくわからない。でも、ひかりんさんがそう言うなら、それは僕がもうここを越えられるだけの力を持っているということだ。そう信じたい。


「はい、わかりました!」


深く息を吸った。腰の長剣の柄に手をかけて、もう片方の手で短剣の位置を確認する。


「じゃあ、行ってきます!」


両手で扉を押した。石と石が擦れる重い音とともに、扉がゆっくりと開いていく。

中は広かった。


天井が高く、壁の松明が円形の空間をぼんやりと照らしている。闘技場のような造りだった。そして、その中央に——いた。


三メートルはある巨体がそこに立っていた。


これまで戦ってきたゴブリンとは、何もかもが違った。筋肉の付き方、体の厚み、そして手に握られた巨大な棍棒。丸太をそのまま削り出したような、人間の胴体ほどもある武器だった。

僕が扉をくぐった瞬間、そいつがこちらを向いた。


小さな目が僕を捉える。

次の瞬間、ハイゴブリンが口を大きく開けて雄叫びを上げ空間が震える。腹の底まで響くような咆哮に、足が一瞬止まる


だけど、止まっている場合じゃない。

僕は長剣を抜いて構えた。


相手との距離はおよそ十五メートル。まずは動きを見る。

初見の相手にはまず観察、攻撃パターンを一つでも見てから仕掛ける。


そう思った直後だった。

ハイゴブリンが棍棒を脇に抱え、前傾姿勢になった。地面を蹴る。その巨体が信じられない速度でこちらに突っ込んできた。


それはシンプルなタックルだった。

僕はそれを見て右側へ走る。ハイゴブリンの体が僕のすぐ左を通過した後の硬直を狙って攻撃に移る。


——はずだった。


想定外だったのは近づいてくるたびに風圧が膨れ上がったこと。直撃はしていないのに、足が地面から浮きそうになり体勢が保てない。

踏ん張ろうとしたが、風圧で体が流された時点で、もう剣を振れる姿勢じゃなかった。


ハイゴブリンは壁際で止まり、こちらを振り返る。棍棒を片手で軽く持ち上げて、今度は正面から振りかぶった。

縦振り。棍棒が上から叩きつけられる。

僕は左に転がって回避した。


棍棒が床に激突し、石の破片が飛び散る。あの一撃をまともに受けたら終わりだ。

立ち上がりながら距離を取る。ハイゴブリンは棍棒を床から引き抜き、すぐに横薙ぎを放ってくる。しゃがんで避けて、棍棒が頭の上を通り過ぎた。


パターンは見えてきた。タックル、縦振り、横薙ぎ。どれも一撃の威力が凄まじいけど、動作が大きい分、振った後に必ず隙がある。

横薙ぎの直後、棍棒が右に流れた。左半身ががら空きになる。


今だ。


僕は踏み込んだ。長剣を左脇腹に向けて突く。刃が分厚い皮膚に食い込んだ。浅い。だけど確かに届いた。ハイゴブリンが怒りの声を上げて、空いた左手で僕を払おうとする。剣を引き抜いて後ろに跳ぶ。


やれる。一撃ずつ刻んでいけば、倒せる。

そこからは、繰り返しだった。


ハイゴブリンが振る。僕が避ける。隙を見つけて斬る。離れる。同じことの繰り返しだけど、一回ごとに傷が増えていく。ハイゴブリンの動きが少しずつ鈍くなっているのがわかった。


いける。このまま——


その時だった。

横薙ぎが来る。右に走って避ける——その先に、短剣を構えたゴブリンがいた


いつのまに!?


避けられない!ゴブリンを避ければ棍棒の軌道に戻る。棍棒を避ければゴブリンに突っ込んでしまう。

一瞬の判断で、僕は長剣を正面に構えた。棍棒を受けるしかない。

衝撃が来た。


「がはっ!」


腕から肩、肩から背骨、背骨から足へ。全身を貫くような力が僕の体を叩き潰した。両足が地面から離れ、体が斜め下に叩きつけられる。背中から床に激突した。息が全部飛んだ。


視界が白くなる。口の中に鉄の味が広がった。

剣は——手にある。握っている。離していない。

這うようにして体を起こす。距離を取らなきゃ。今のもう一発を受けたら、次は立てない。


壁際まで転がるようにして後退した。長剣を杖代わりにして、なんとか立ち上がる。

顔を上げた。


ハイゴブリンがこちらを見ている。その手前に——ゴブリンが三体、横に並んでいた。鉄の短剣を握り、こちらを囲むように広がり始めている。


さっきの一体だけじゃなかった。いつの間に呼んだんだ。

前にゴブリン三体。その奥にハイゴブリン。

背中は壁。逃げ場はない。


——どうする。

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