第61話 レイ・セルドは危険だ
共和国軍 上層戦略会議室。
実験終了から数時間後。
モニターには波形が映し出されている。
共有時、実効受容量50%。
安定。
崩壊なし。
沈黙。
最初に口を開いたのは軍務長官だった。
「結論から言おう」
「レイ・セルドは“危険”だ」
部屋が静まる。
「単独50%耐性」
「共有での受容量拡張」
「精神崩壊未確認」
別の幹部が言う。
「帝国がこれを運用していた場合」
「極めて脅威だ」
一拍。
「だが」
「我々の管理下にある」
視線がユユへ向く。
ユユは背筋を伸ばしている。
「技術的見解を」
求められる。
ユユは端末を開く。
「本実験において、レイ・セルドは暴走傾向を示していません」
「精神干渉は限定的」
「共鳴時、単独振幅の緩和を確認」
静かな声。
「彼は“爆弾”ではありません」
「条件下で安定運用可能」
軍務長官が問う。
「条件とは」
ユユは迷わない。
「共有接続者の存在」
「単独では不安定域へ接近する可能性あり」
「共有時、安定化」
フィーナは何も言わない。
上層部の一人が呟く。
「つまり」
「彼は単独では危険だが」
「組み合わせ次第で制御可能」
ユユは頷く。
「はい」
沈黙。
「利用価値は高い」
別の幹部が言う。
「帝国技術の解析にも有効」
「LNS拡張理論の中核となる」
だが。
軍務長官の声は冷たい。
「監視は必須」
「暴走時は即時処分」
言葉ははっきりしている。
処分。
フィーナの指がわずかに強張る。
だが口は開かない。
軍務長官が最終決定を下す。
「レイ・セルドの危険性評価を更新する」
「カテゴリー:特A」
「排除対象から研究管理対象へ変更」
空気が変わる。
処分ではない。
利用。
「共有実験は継続」
「段階的接続値上昇試験を実施」
「60%域の安定性確認を目的とする」
そして。
最後の決定。
「レイ・セルドの管理責任者を定める」
視線が再びユユへ。
「ユユ・レナート技術士」
「貴官に管理権限を付与する」
部屋が静まる。
「拘束は緩和」
「行動は限定」
「全実験は貴官の監督下で行うこと」
ユユは一瞬だけ息を吸う。
そして。
「了解しました」
冷静に。
軍務長官が締める。
「レイ・セルドは共和国の資産だ」
「兵器ではない」
「だが、管理対象であることを忘れるな」
会議は終了する。
フィーナは立ち上がる。
何も言わない。
だが、ほんのわずかに肩の力が抜ける。
一方、ユユは静かに端末を閉じる。
これで。
彼は処分されない。
だが。
守られたわけでもない。
研究対象。
管理対象。
レイ・セルド。
共和国の手の中に置かれた。




