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第四十二話「砂被り姫の後始末」中編



 カ氏族集落の広場では、カ・イリの予定にない歓迎会が広げられていた。


《器が二つ余ってる……あんたら、イルとロゼちゃんはどこ?》

《あの二人なら、始まって早々にどっか行っちまいましたが?》

《まぁ若い二人なんですし、ほっときゃいいじゃないですか、族長》


 部族の者たちの言葉に、カ・イリは頭をかく。確かに若い二人の邪魔をしたくはない。だが二人だけで行動させるのは心配になる。

 行先もわかる。二人が歓迎会をほっぽり出してまですることはデートではない。調査だ。


《ま、遺跡にオーディムはいないし、あとで見に行こうっと》


 せっかく息子と娘のように可愛い少女と会える機会が増えたのだ。しばらく子離れできない母親でいたいと思うカ・イリであった。


   ***


 地下遺跡は、それなりに深く進んだ場所にあった。

 階層がいくつあるかは全体を調査してみないことにはわからないが、見たところ古代迷宮(ラビリンス)化はしていない。本当にただ古いだけの遺跡のようだ。


「そこは事前情報通りだね。邪魔するものがいないだけでありがたい」

「現在の探索完了範囲は、第一階層部分のみ。第二階層への入り口は、出入り口付近にあると言うことですが……塞がってますね?」

「土で埋まっているわけじゃない。扉だな。君の地下倉庫説に近づいたね」

「開けてみましょう。もしかしたら、氷室みたいになっているかもしれません」


 二人はしばらく扉を調べるが、仕掛け扉ではないらしい。ゆっくりと隙間に棒を差し込み、梃子の原理で隙間を作る。開かれた扉の先には、地下へ続く急な階段があった。


「なるほど、開けるだけなら何とかなるけど、この真っ暗さ、躊躇するね」

「ゆっくり行きましょう。足を踏み外さないように」


 ランプを用意し、暗い第二階層を照らす。まともな準備ができていない以上、深入りはしない。入り口付近を見て回ったら退散だ。

 カイロが先に降り始め、ロゼッタが見守る。


「オーディムの姿は見えない。内部も閉じていたおかげで埃や土埃っぽさは感じないな。でも、旧帝都ほどきれいじゃない」

「やっぱり、あの綺麗さはオーディムがいてくれて――きゃっ!」


 突然、ロゼッタは背後に衝撃を感じる。固いブーツの底で蹴られる痛みに、体が前に押し出された。空中に投げ出された体は掴むものもなく、階段の先、第二階層へ落ちていく。


「ロゼッタ!」


 叩きつけられそうだった体を、硬い腕が受け止める。カイロの腕だ。鋭く待ち構えていた階段の角は、だが彼女の体に当たることなく通り過ぎる。


「カイロさん、大丈夫ですか? カイロさん!」

「うん。とっても痛いけど……折れたりはしてないから、ご心配なく……けど、どうしたん、だ……」


 痛みに震える体を起こすカイロは、階段の上を見る。

 ロゼッタも睨むように見た先に、覚えのある顔があった。


「あなたは……!」


 邪悪な笑みを浮かべた男が、そこにいた。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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