表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/100

第四十話「砂被り姫の入城」後編



 ズン、ズン、とクマが帝都の大通りを闊歩する。

 ずらりと並んだ兵士たちは、目の前を通り過ぎる異郷の戦士たちを、冷や汗を垂らしながら見守っていた。

 いつ、この戦士たちが気分を変えて襲い掛かってくるかもしれない――。


「心配性なんですよね。普段帝都に他の国の軍隊がいることはありませんし、武装した集団がいることだって、早々ありません」


 集団の最後尾、メイベリアンたちを見守るようにウマを歩かせるロゼッタは、轡を並べるカイロにそう告げた。


「傭兵とか古代迷宮(ラビリンス)の探索者とかは、帝都に寄る理由はないからね」

「開拓先がない場所に、開拓者は必要ないですから」


 帝都近辺はすでに開拓がほぼほぼ完了し、帝都周辺に存在する古代迷宮(ラビリンス)は発掘しきっている。ただ東西の中継点であり大規模な食糧生産地の中心にある。

 帝国を維持し発展させていくにはよい場所だが、開拓者にはあまり魅力のない場所だ。


「だから少し帝都の兵は緩んでいるんです。ちょうどいい機会ですから、気を引き締めてもらいましょう」

「にこやかに自分たちの首都を危険に晒すなぁ……」


 とはいっても、今回帝都に来たのは和平の使者だ。武器こそ装着したままだが、こうして完全武装状態で歩いているのも、お互いに敵対するつもりはないと言うことの証明だ。

 帝国西側諸国も、東側と連携して帝国を強襲するなどということは考えないだろう。

 それを最初に提唱したのが、北メイベリアンだとは、知らぬ方がいい。


「城に着けば、あとは陛下たちの仕事だ。通訳の仕事は、まだ残っているけど」

「そういえば、シャルル閣下も今回の式典には参加されるそうですね」

「あの人も東に行ったり西に行ったり大変だな……出迎えまで担当されて」


 城門の前に立つ、金髪の美丈夫に気づいた。

 以前会った時とは違い、完全武装の兵士を率いるその姿は、まさしく天下の大将軍。

 城門の前に辿り着いたカ・イリは、自らクマの上から降りてシャルルの前に立つ。


「私は帝国西方統括元帥、シャルル・メルウィングである。城門の前に立ちし東方の隣人よ。名を名乗られたし」

「我が名はカ・イリ。西メイベリアンカ氏族を束ねるクマの戦士(ベルセルク)である」

「よくぞ参られたカ・イリ殿! 皇帝陛下より貴公の来訪を心より歓迎するとのこと。獣たちとともに、中へ参られよ!」


 シャルルの言葉に従い、カ・イリたちが入城する。本来ならウマに乗って入城することすら稀な場所に、クマやイノシシが入っていく。兵士たちは怪訝な目で見ているが、シャルルが率いている以上文句も言えない。

 メイベリアンのために中庭が解放され、獣たちはそこで日光の下過ごしている。

 調印式も結局のところ出席するのはカ・イリを含めた数名だけだ。残ったほとんどの戦士たちは、それが終わるまでここで過ごすことになる。


「あとは、母さんたちの仕事だ」


 この日、メイベリアンと帝国の間に和平協定が結ばれた。

 それは森と川に阻まれていた東方貿易の開始の合図であり、新たな文化・文明の発展の兆しである。





少しでも気に入っていただけたら幸いです。




評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ