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第三十一話「砂被り姫の氏族会議②」後編



 ロゼッタたち一行は、半日をかけて三階層分を下った。

 その間、もともとは地下墳墓から成立したこの古代迷宮(ラビリンス)について、考古学者二人は隠しきれない好奇心を露わにしていた。


「カ氏族の共同墓地は、確か地上にありましたよね。でもダ氏族ではこうして地下に集められている。この違いは、何だと思います?」

「ダ氏族の土地が、もともと平野が少ないからってのはあると思う。僕らの土地はカエルムとの境目の森と、森の中の空き地があって、そこに集落があるけど」

「確かに、ダ氏族の集落は山の中腹でしたものね。《ラ氏族は平野部に集落があるんでしたよね?》」

《え、ああ、平野というより、盆地だがね?》

《お墓は地上ですよね》

《そりゃ、そうだが?》


 急に話を振られたラ・オウは困惑しながら返答をする。


「じゃあやっぱり、カイロさんの推察通りかもしれません。……食物が土の下で育つ以上、食料の獲得と先祖崇拝が結びついて、今のこの地下墳墓が出来上がったのかも?」

「少し飛躍しすぎな気もするけれど、まったくあり得ないとは言えないだろうね」

「途中の壁画にあった農作風景も、この説の裏付けになるかもしれません」


 当初の目的を忘れているわけではない。こうして細かく調べることで見落としをなくそうとしているのだ。余談や雑談が増えてしまっているが、二人ともきちんと『翼ある太陽』の存在を探している。

 尤も、そんな彼女らの姿に族長たちは首を傾げていた。


《最近の若者言葉とやらはよくわからんな、ダ・ニディ》

《いや、ほとんど帝国語だからよ、あれ。まぁ、俺もよくわからんが》


 メイベルの子らには伝わらない言葉で興奮する二人の姿は、何とも奇怪に見える。

 そもそも、三階層まで降りてくるのに半日もかかったのは、こうして二人が立ち止まることが多かったからだ。


《ダ氏族長、ここにあるのは歴代の氏族長を称える詠です。ご存じですか?》

《え、あ……いや、俺はちょっと詠は得意じゃないなぁ……》

「伝承を詠にするのは各地にみられる風習だ。墓地に刻んでいるの、慰霊目的か?」

「内容を全部解読しないと結論は出せませんけど、碑文と同じ感覚かもしれません」


 時折こうして族長たちに話を振っては、帝国語での議論へ戻る。

 いったい自分たちは何を見せつけられているのだろうと首を傾げるダ・ニディとラ・オウ。

 一方でカイロの母でありカ・イリは、どこか達観したような表情で二人を見ていた。


《母親的に、あれが息子の彼女でいいのか?》

《いいも悪いも、イルが見初めたのなら、私に口出しする権限はないさ》


 小声でそんな会話がされているとは露知らぬロゼッタたちは、とある壁の前で立ち止まった。


「我らの太陽。翼を広げて冥府より戻られたし。畑と森を照らし、花大輪を開かん」

「それだね。でも、肝心なところは落ちているか」

「大丈夫です。ここもカ氏族と同じ信仰を持っているのなら、あるはずです!」


 さらに奥、最下層へと足を踏み入れなければならない。

 そのことを母と族長二人へ伝えたカイロに、ロゼッタは肯いた。

 次の階層が、最後の勝負だ。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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