第二十八話「砂被り姫の暗中模索」中編
――ダ氏族に会いに行こう。
それだけは決定した。まずは会わなければ話が進まない。
帝国を恨んでいるわけではないなら、交渉の余地はある。
「部族に広まる共通の憎悪は、和平や交流の道を容易くくつがえす。ダ・ニディがそうなる前に、決着を付けないと」
「なら、さっさとカ・イリさんからの宿題を終わらせないと、ですね」
二人の姿は、山の麓にある洞窟にあった。カイロが話していた山の奥深くまで続く浅い遺跡というのは、ここのことだ。ランプで奥を照らしてみるが、光が届かずよく見えない。
護衛を務める兵士が二人ほどいるが、彼らは無言で少し離れている。
「あの、ところで私も一緒でいいんですか? 部族的には、神聖な場所だと思うのですけど」
「母さんは二人で行ってこいって言ったから、いいと思うよ。僕も小さいころ母さんに連れてこられて以来だね」
遺跡の中は空気がひんやりとしていた。オーディムが出たとしても、護衛の二人が請け負うことは事前に確認済み。何も心配することなく、ただ行って帰ってくればいい。
「あの、ここの壁って、もしかして奥までずっと壁画が続いています?」
「……小さい頃は気づけなかったけど、その通りだね。タペストリーで見た覚えのあるものだけど、オリジナルはここだったのか」
「これ、川を超える図と、山を切り開く図ということは、カ氏族の集落形成について語った者ですよね?」
「間違いない。そうか、ちゃんと記録をとっていたんだ」
後ろから咳払いが聞こえてくる。はっとした二人は顔を見合わせ苦笑いを浮かべると、なるべく早足で遺跡の奥へ歩き出す。
「また、ここの調査はいずれきちんとさせてもらいましょう。氏族や村民の皆さんにもご協力いただければ、きっとご先祖様のこととか、もっとよく知れると思いますよ」
「祖霊信仰は薄いものだと思っていたけど、案外そうでもないかもしれないな。……ちょっと、ダ氏族の説得に使えるかもしれないって思えてきた」
途中で発生するオーディムは護衛兵に任せ、二人は遺跡の奥へと進む。
最奥で二人を待っていたのは、初代カ氏族族長だ。
「ミイラ……これは、英雄を祖霊として祭る風習ですか?」
「ああ。僕たちカ氏族の紫の髪は、このご先祖様由来らしい」
持ってきた供え物を並べると、護衛たちが相手にしていたオーディムが引いていく。侵入者ではなく、参拝者と認識されたのだろうか。理由はともかく、これでゆっくりできる。
「メイベリアンの祖先崇拝はあまりしてないけど、偉大な功績を残した者や、立派に戦って死んだ者を山林と一体化した祖霊として崇める風習はあるんだ」
「祖先崇拝……族長に意見できるのが、霊魂だけというのなら……」
何か思いついたのか、ロゼッタは口元を手で押さえながら何かを呟く。
その視線が、ふとミイラの乗った祭壇へ注がれる。
「え? なんで、これが……?」
「ロゼッタさん?」
「カイロさん、祭壇の、下。これ見てください!」
彼女が指差した場所は、祭壇の底部。並んだメイベリアン的装飾を付けた者たちが、両手を掲げて何かを奉じている。
「翼ある、太陽?」
竜こそ巻き付いてはいないが、間違いなく、帝国の国章と同じ、『翼ある太陽』の絵が刻まれていた。
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