第二十一話「砂被り姫の好敵手?」中編
その時、突然扉は開かれた。
「カイロォ! このイスマリヤちゃんが遊びに来ってあげたわよっ!」
バーン! とでも音がして背後に爆発でも置きそうな勢いで、骨董品店の扉が開かれる。
危うく扉が吹き飛ぶのではないかと思ったが、入り口に立つのは一人の少女。ロゼッタより背の低い彼女に、それほどの力はないだろう。
「ちょっといるのなら返事しなさいよ。わざわざあんたの幼馴染が帰郷ついでにこうしてお菓子片手に売れないお店に足を運んで――」
勝手知ったる人物なのか。返事をしないカイロにかまわず店の中に入りカウンターへ向かってくる。
黒く長い髪を振り、帝都で今流行のブランド服に身を包んだその少女は、とある名家の娘だ。貴族というわけではなく、海運業で名を馳せた一族であり、現在も帝国の流通の一角を担う。
マドレーヌを通じた昔馴染みであり、頻繁とは言い難いが、店に訪れる。
「やぁ、マリヤ。大体半年ぶりかな?」
「ようこそ、『ル・ビュー』へ……お知り合いでした?」
「うん。昔馴染み。彼女はイスマリヤ・イェファソン。それなりの常連だよ」
「そうなんですね。初めましてイスマリヤさん。私はロゼッタ・カエルムと言いまして、今はカイロさんのお店で……イスマリヤさん?」
そこで、二人はイスマリヤがピクリとも動いていないことに気づく。
もともと大きい両目はカッと見開いたことでより大きく見え、空いた口は塞がらない。不思議そうに顔を見合わせたカイロとロゼッタに対して、数秒後、ようやく動き出した。
「誰よその女ァーーっ!」
突然発した大声に耳を塞ぎながら、カイロは応える。
「誰と言われても……君はまだ会ったことなかったか、彼女はロゼッタさん。僕の助手」
「よろしくお願いしますね、イスマリヤさん。ロゼッタと申します」
イスマリヤが何に対してこれほど感情的な反応を示しているのか、二人には理解できていない。
カイロは昔馴染みと親しすぎるゆえに。そして、つい先ほど自分の気分に決着をつけてしまったから。
ロゼッタは自分がカイロにとってどういう存在なのか自覚がないため。
――カイロが盗られちゃった。
などとイスマリヤが考えているとは、二人ともつゆほど考えてはいなかった。
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